星のひとかけ

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どこか棄てきれない…『楽園の世捨て人』トーマス・リュダール

2018-08-11 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
立秋も過ぎ、、 お盆休みに入る週末ですね。。
、、けど、 お盆にもお休みにも縁の無いわが家なのでごく普通の毎日が続いております。

読書記録、、 ほんとうは7月に書いた『奥のほそ道』リチャード・フラナガン著 について書いておきたいのだけれど、、 第二次大戦時の重いテーマの物語。 筆力も、 構成も、 ブッカー賞にふさわしい力作と解りつつも、 私には大きな疑問ばかりが残る作品でした、、 日本軍による戦争犯罪行為、残虐行為を否定も正当化もする気は私は全くないし、 犯罪行為は償わねばならず、 人を虐げて生き長らえる人間ならば罪を背負い 悔やみ 苦しまねばならないと そう思う。。 けれども、 この作品にはあまりに疑問に思う部分が多く、 著者の意図するものは何だろう… 著者はここからどのような文学的視野を(効果を、 展望を、と言ってもよい) 読者に求めているのだろう… と ただただ疑問で、、

そのことを年長者のかたに(先にお読みになっていたし…) メールで問うてみたのだけれど、、 まだまとまった感想を書くには至れない。。 だからまだ書きたくない。。 、、Amazon.com(英語版)の読者レビューなどを見れば、、 なるほどそうだろうな、、と思われる感想が読めるけれども、、 戦争文学の意味を考えた時、 やはり私には疑問が残る。。 誰かに訊いてみたいとも思うし、、 著者の発言とかいずれ読める機会とかあれば、、 だから今はまだ…

 ***

そんなことでずっと頭を悩ませていて何も書けないまま、、 でも ほかにミステリなどとうに読み終えているものが数冊あるので、 ちょっと書いておかないと何を読んだか忘れちゃう。。。



『楽園の世捨て人』 トーマス・リュダール
(ハヤカワポケットミステリ 木村由利子訳、2017年)

北欧ミステリの最高峰「ガラスの鍵」賞 受賞の傑作! と裏表紙にはあります。 内容は… 「母国デンマークを捨て、大西洋に浮かぶカナリア諸島で暮らすタクシー運転手兼ピアノ調律師のエアハート。…」(ハヤカワオンラインより>>

カナリア諸島(The Canary Islands)ですよ、、 楽園の島々、、 その中のフエルテベントゥーラ島が舞台(こんなところらしいです、、ウィキ>>

真夏のビーチでの読書にぴったりでしょう…?(←ほんとか? 笑)

、、でも、 さきほどの内容紹介の一文だけでも 「母国デンマークを捨て?」 「タクシー運転手兼ピアノ調律師??」 なにそれ…、、 このおっさん 年は68歳くらいだったかしら? なぜこのような世捨て人になってカナリア諸島にいるのか、、 なぜピアノの調律が出来るのか、、 だって パソコンも使えないし、 メールも打てない、 携帯も持ってないし、、、 しかも、(ちょっとネタばれだけど) この人 手の指が一本無い。。 何故かわからない、 デンマークにいた時に何かあったらしい、、

わからないこどだらけ。。 でも何故かタクシー運転手なのに ある事件の謎を追おうとする。 それは生後三か月の乳児が遺棄された事件、、。 なぜこの事件が引っ掛かるのか、 そこもよくわからない。。(乳児遺棄が特別に凶悪な事件だとも思えないところが逆に自分のその認識がおかしいのか、とか思ってしまう…)
きっとこのおじさんの過去と何か繋がりが??

… と思って読むのだけれど、、 デンマークのこと、 指のこと、 ピアノのこと、、 それからこのおじさんのよくわからない人脈… 、、 思いつくままにおっさんは行動を開始する、、と また新たな謎や事件が周辺にずるずると…

、、 上下段組みのポケミスで580頁という ひたすら長いミステリなのですが、、 おっさんの謎がわからないばかりに、、 だんだん意地になって読み続け、、 後で考えたら、 このおっさんがパソコンが使えていたら 途中300頁は節約できた、、ということに気づきました(笑) おっさんが魅力的なわけでもなく、、 でも裏に何かがありそうで、、 この島も美しいリゾートの裏面がありそうで、、 
おっさんが愛飲する デンマーク仕込みのカクテル「ルムンバ」 ココアとラムのカクテル? (Wiki>>

そして おっさんがこの島の大富豪に指名されて毎月調律をする高級ピアノ、 ファツィオリ(Wiki>>) この一族がまた謎…

次々に出てくる謎と、この島のどこか怪しい無国籍な熱気と混沌… そういう描き方がきっとうまいのでしょうね、、 おっさんにまんまと巻き込まれてイライラしながらも意地のようにひたすら読み続け、、 結局…… !!


、、 事件は解けた、が おっさんの謎はなにひとつ解けなかった…!!

どうやらこの作品は三部作になるそうで、 デンマークでは2冊までは出版されているそう。。 もし、 このまま翻訳されなかったら、 こんなに長く付き合わされたおっさんの謎が… 

、、 それはあまりにも悔しいので どうかどうか出版・翻訳されますように。。


著者トーマス・リュダール氏のエージェントの紹介ページがありました⤵
http://www.nordinagency.se/clients/fiction/thomas-rydahl/

 ***

アン・クリーヴスさんのペレス警部シリーズ、、 ヘニング・マンケルさんの刑事ヴァランダーシリーズ、、 大御所P・D・ジェイムズ女史による警視ダルグリッシュシリーズ、、 いずれも中年独り者のおじさん達、、 警視ダルグリッシュシリーズはまだ読み始めたばかりなので あと十数冊は楽しめます。。 今年いっぱいは《独り者のおっさん》達が 我が心の愛人、でいてくれます… 笑

、、 スコットランドのシェトランド諸島、 厳寒のスウェーデン、、 ロンドンスコットランドヤード、、と 土地柄や人柄を知る楽しみも、、。 今回のカナリア諸島も、、 大瀧詠一さんの歌のイメージとはまた違った不思議な一面を見せてくれました。。


、、 もうしばらくの よい夏を・・・
 
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