梅雨の晴れ間に庭に出て、虚庵夫人とアガパンサスの花を楽しんだ。
ことしの「うつろ庵」には十数本のアガパンサスが、花茎をツンと伸ばして咲き誇っている。ごく淡い水色がうす陽に映えて、花と梅雨空が織りなすコラボレーションに、じじ・ばばは魅入られるばかりであった。
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水色の花はか細き蕊反らせ
アガパンサスは小粋に咲くかも
じじ・ばばが長閑に語らふ其処へ、大きな黒揚羽蝶が飛来して仲間に加わった。アガパンサスの花蜜を吸いに来たようだ。おっとり刀でカメラを取り出したが、その後が大変であった。
黒揚羽は大きな羽根で千変万化に舞いつつ、あっちの花からこっちの花へと、気ままに乱舞する。カメラ片手に蝶を追って、踏み石つたいにサンダル下駄を踏み鳴らし、ヨロメキながら右往左往する虚庵居士をご想像あれ。へっぴり腰のアマチュアカメラマンが黒揚羽に翻弄される様を、虚庵夫人は高みの見物とシャレこんだ。幼女の如く、キャッキャと手を打ち鳴らして楽しんでいるではないか。
蝶は片時も羽根を休めることなく飛び続けているので、カメラのファインダーを覗くいとまもなく、辛うじて捉えられたのがこの写真だ。
「うつろ庵」のじじ・ばばを愉しませてくれた黒揚羽は、アガパンサスの花蜜も、たっぷりと堪能したことであろう、やがて梅の葉陰で羽根を休ませた。
気がつけば、虚庵居士の額も汗ばんでいた。大奮闘の証しであろう。黒揚羽に倣って、暫しの休息が必要のようだ。
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カメラ持つ爺をしり目に みぎ ひだり
黒揚羽蝶は自在に舞ふかな
ゼンマイの口吻伸ばして花蜜を
乱舞の合間に素早く吸うとは
わが庭のアガパンサスよ な散りそ
花蜜もとめて蝶舞ひくれば