「蘇鉄」の若芽が、命の滾りを見せて、一斉に伸びていた。
一昨年の葉は既に切り取られて、さっぱりと身支度を整え、「いざ出発!」との掛け声が聞こえてくるようだ。40枚ほどの葉が、一斉に天に向かって伸びあがる姿からは、蘇鉄の逞しい生命力が感じられる。
「うつろ庵」の門辺にも、蘇鉄を大鉢に植えて置いてあるが、卵ほどの大きさの脇芽を掻いて来て植えたのは、30年ほど前になる。幹の丈がまだ20センチ程の子供ゆえ、新芽の数は10余枚程度だ。まだ固い新芽は成長の兆しもないので、一斉に伸びるのは来春になるのであろうか。逞しい生命力ではあるが、背丈の成長には決して無理をせず、人間どもに「スローライフを見習え」と訴えているかの様だ。
たまきわる命の滾りを葉に託し
ヘしあい伸び立つ小暑の蘇鉄は
陽を受けて葉先の丸みも背筋をも
伸ばさむとする 蘇鉄の心は?
何事もせき立つこの世の風潮に
蘇鉄は諭すや 「倦まず 弛まず」
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