「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

[小正月の木瓜」

2014-01-19 00:46:30 | 和歌

 「木瓜」の花が、小正月に咲いていた。

 子供の頃、信州の田舎に育った虚庵居士だが、小正月は雪と氷に閉ざされていたので、「木瓜」の花を観るなど及びもつかなかったが、小正月の様々な行事が想い出された。毎日を忙しなく暮らす生活からは、その殆どが消え失せてしまったが、古来からの風習が懐かしい。

 正月の床の間に飾られていた「お供え餅」は、鏡開きの日に割って、「小豆粥」に 入れて食べたあの味も忘れられない。



 男の子達にとっては、の家々を回って正月の松飾やしめ縄を集めるのが楽しみだった。集めたお飾りを大きな松の木の枝に吊り下げ、根元に積み上げて一気に燃やす「どんど焼き」の炎は、いまも眼に焼き付いている。

 お書初めの半紙をその炎に投げ込んで、燃えながら舞い上がるのを観て歓声を挙げた。燃えて高く舞い上がれば、お習字は上手になるとの言い伝えを信じて、子供達は次々とお書初めの半紙を投げ入れたものだった。

 信州の田舎ではかって養蚕が盛んだったので、米粉で作った紅白の繭玉を柳の枝先に挿して、正月飾りにしていたが、小正月の「どんど焼き」の火にかざして、焼いて食べたのも懐かしい。寒気に堪えて咲く「木瓜」の花を観つつ、子供の頃の雪と氷の小正月に、思いを馳せる虚庵居士であった。




           指先の痺れる寒さに揉み手する

           木瓜の花咲く小正月かな


           信州の子供の頃の小正月を

           想い出すかな木瓜と語れば


           いと固き鏡餅かな打ち砕き

           小豆の粥の鍋に入れにし


           子等集い松の飾りを集め歩き

           「どんど焼き」をば 一気に燃やしぬ


           紅白の繭玉餅を火にかざし

           顏 火照らせる「どんど焼き」かな


           書初めの半紙を炎に投げ入れて

           燃えつつ高く舞ふを念じぬ


           雪の舞ふ小正月こそ恋いしけれ

           幼き頃を木瓜と偲びぬ