「うつろ庵」の玄関先の鉢に、二輪の「高砂百合」が咲いた。
この鉢には、虚庵夫人があれこれの草花を植えて楽しんで来たが、高砂百合の初めてのご来訪に、虚庵夫妻は驚きつつ大歓迎であった。
高砂百合は、鱗片状の百合根による多年草だが、この百合独特の子孫繁栄術が備わっているので、広く自生するのが特徴だ。開花後に筒状の実を結び、枯れて筒が割れると中から夥しい種子がこぼれ落ちる。種子にはごく薄い羽が付いているので、風に舞い散り、至る所に自生するのだ。
「うつろ庵」の玄関先の鉢にも、風に舞って種子が着座し、それが自生して高貴な花を咲かせて呉れたものだろう。花の姿は誠に気品に満ちているので、何処のお宅でも自生に任せているのが実情だ。台湾原産の高砂百合は、日本の気候・風土がお気に召して、今や帰化花の代表的な名花である。
二輪の高砂百合は相前後して開花したが、蕊の色の微妙な変化が、姉妹の識別の唯一の拠り所だ。
風に舞い訪ね来たるやこの鉢に
気ままに咲くかな高砂百合はも
高砂の名前は出自の誉れなれ
台湾の花 百合に託すは
図らずも庵の鉢に着座して
高砂百合は見事に咲くかな
あね妹 花咲く僅かな時の差
蕊の花粉の色に留めて