標高1250mの蓼科高原の朝は、爽やかだった。
ロッジの玄関前の広場から、落葉松林の草むらにそのまま足を踏み入れたら、未だ朝露が残っていて靴が濡れた。朝露を踏むなど久しぶりのことで、自然の恵みをたっぷりと頂いた気分であった。
目を上げて落葉松林の梢を見やれば、短い松葉が折り重なって透かし模様をなし、ところどころポッカリと口を開けていて、澄んだ青空が覗いていた。そこから朝陽が足元の草むらに射し込んで、神秘的な世界を醸していた。ゴルフのことなど忘れて、終日、林の中を彷徨い歩いたらどんなに素晴らしいことだろう。詩人になりきって、或いは哲学者になって思索をめぐらし、或いは画人の世界に没頭できるのかもしれない。
クラブハウスで朝食を済ませ、逸る心を鎮めて、ティーショットを放った。
その先のゴルフは、解説すれば言い訳が先になって、見苦しいことになりそうだ。
じい様達の月一ゴルファーのコンペであれば、押して知るべしだ。右や左にショットはブレ、チョロあり、飛距離を誤り、グリーンでは意に反してボールが曲がり、などなど散々なゴルフであった。しかしながら、それらを楽しみに代える術を心得ている面々だから、年2回のコンペを既に22回も重ねてきた。
白樺や落葉松でセパレートされたコースに沿って、蓼科山・八ヶ岳連峰・アルプス連峰などを見渡す、視界360度のパノラマ展望が堪能できる自然環境ではあるが、参加メンバーは殆どが自分のボールを追うのに夢中であったと思われる。
18ホールを休憩なしで続けて回る、スループレーを終えて、昼食を兼ねたパーティーを楽しんだ。虚庵居士はモガキながらも、様々なショットを愉しんだ結果、89のベストグロスで3位だった。
落葉松の林に入りぬ 草むらの
恵みを受けて朝露踏みにし
見上げれば松葉を透かす模様かな
割れ目の空はいと青くして
いや高き梢ゆ漏れ来る朝陽かな
淡く斑な草のしとねに
落葉松の林はまもるや乙女ごの
黄色の小花のひと株いとしと
なにもかもうち捨て忘れて彷徨わむ
落葉松林の草むら踏みしめ