「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「ガレージの南天」

2010-12-13 22:34:13 | 和歌
 
 「うつろ庵」には南天が三株あるが、ガレージ脇の蘇芳梅の下で、半日陰の南天だけが赤い実を付けている。梅の木陰とガレージの屋根が小鳥たちから守っているのかもしれない。
南の庭の南天は日当たりが良いので見上げる背丈に成長したが、小鳥が啄んだのであろう、赤い実はたった数粒が残っているだけだ。

 かつてブティックのお店に飾ってあった南天の枝を、大きな甕ごと虚庵夫人が頂戴してきたので、「うつろ庵」の庭の片隅に無造作に突き刺したまま放置した。根付くなどとは思いもしなかったので、随分と乱暴なことであったが、在ろうことかいつの間にか根が出て、若葉が成長したのには驚かされた。
逞しくも幸運を呼ぶ気配を感じて、それ以降は大事にして来たが、赤い実を付けて目を愉しませて呉れる南天に、お礼をせねばなるまい。

 もう一株は、「赤い実を鉢に蒔いたら芽吹いたのでお裾分けします」と手紙を添えて、姉が封書で送って来たものだ。十センチ足らずだったが今では五十センチ程の背丈になった。鉢植えのままだが、既に紅葉を愉しませて呉れている。三株の南天は、「うつろ庵」の狭い庭の中でそれぞれに境遇を異にしているが、それぞれがけな気に生きて、色々なことを語りかけてくれる可愛い家族でもある。






              さざ波の緑の葉波に紅は

              珊瑚の珠玉か南天の実は


              紅の南天の実を我妹子(わぎもこ)の

              飾りとやせむおさなご遊びに


              幾とせか経にもけるかなわぎもこと

              南天の枝を庭に挿したは 


              それぞれの思いを語る南天に

              耳傾けて孫子ら偲びぬ