刑事事件の容疑者の責任能力を調べるため、精神鑑定が実施されるケースが近年増えている。
しかし鑑定結果が弁護側の見解と食い違う場合、弁護人が医学的に反論するのは難しいとされることから、国立精神・神経医療研究センター病院が「セカンドオピニオン」を提供する取り組みを始めた。
助言を受けて行われた再鑑定で別の疾患と診断され、無罪になった例もある。
精神鑑定には捜査段階で容疑者に行われる「起訴前鑑定」と起訴された被告が対象の「起訴後鑑定」がある。
司法統計によると2023年に鑑定が認められたのは計624件。
裁判員制度が導入された2009年の2倍近くとなり、大半が検察側の求めによる起訴前鑑定だった。
起訴前鑑定の結果と弁護人の主張が異なる例は少なくない。
同病院が2020年11月に始めた「司法精神医学コンサルティング」では、鑑定内容を専門医が分析。
十分な情報収集が行われたかや偏った診断をしていないかなどを検討し、弁護人に伝える。
今年8月末までに約20件の依頼を受けた。助言は客観的内容に限り、裁判の争点判断には踏み込まない。
ある弁護人は、一審で窃盗罪の実刑判決を受けた被告に認知症が疑われたことから、助言制度を活用し独自の鑑定を実施。
被告は二審で認知症の影響が認められて執行猶予判決を言い渡され、更生支援を受けられることになった。
「鑑定資料が不足している」などの助言で起訴後鑑定を請求した別の弁護人は「被告の人権を守る取り組みだ」と歓迎する。
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