近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

長野夏合宿

2013-08-12 22:30:11 | Weblog
 8月1日から3日にかけて長野県へ合宿に行って来ました。合宿に参加するのは初めてだった上、合宿委員としてまだまだ未熟でしたが、大きな怪我や事故が無く合宿を終えることができてよかったです。これも合宿委員をまとめて下さった今井先輩と、たくさんフォローをしてくれた合宿委員の皆さんのお陰です。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 では3日間を振り返っていきたいと思います。


<8月1日>
 朝8時に新宿駅中央東口改札で集合しました。初めて新宿駅に行く私は電車の乗り継ぎや駅構内で迷うのではないかと不安でいっぱいでしたが、難なく辿り着くことができました。そして特急あずさに乗り1日目の観光地、上諏訪へ向かいました。

 はじめに高島城を訪れました。お城の際まで諏訪湖の水が迫っていたため、湖上にお城が浮いて見えたことから別名浮城と呼ばれていたそうです。写真で見ていたより、実際の高島城は小さく可愛らしかったです。

 お昼は割烹仙岳で頂きました。お弁当は見た目も美しく、味も素晴らしかったです。個人的にはお刺身が美味しかったです。1日目から豪華な食事のスタートが切れました。

 お昼の後は諏訪市美術館へ行きました。藤森青芸の企画展が開催されており、少し疲れてしまった私は一通り鑑賞した後、1番気に入ったトビウオの絵の前に置かれたベンチで休憩をしていました。

 1日目の最後はおやこはくちょう丸に乗って諏訪湖を遊覧しました。八ヶ岳と諏訪湖を取り囲む町並みを眺め、船内は窓から入ってくる風で涼しく快適でした。白鳥の形をした船に乗っているのを忘れるほど優雅な船旅でした。

 2日間お世話になる民宿すわ湖に到着し、お風呂と夕食を済ませた後、諏訪湖で行われる花火大会へ行きました。8月1日から9月8日まで毎日15分間花火が上がるそうです。とても近くで花火が上がっていたので、夜空から降り注ぐようでした。


 読書会では堀辰雄『燃ゆる頬』を扱いました。魚住は周囲から男らしさを偶像化され、それに応じるために仮面を被っていたのですが、三枝と私には仮面を外した少女のような一面を見せます。これは私の少年愛への目覚めを予感させるものだったと考えられます。やがて三枝と私は恋仲になり、旅行へ行きますが、そこで出会った声変わりのしている少女たちが私の愛を変えることになります。それから数年後、同性愛の時期を終えたと思い込んでいた私はサナトリウムで三枝と同じ脊椎カリエスに罹った少年を目撃したことをきっかけに大きな打撃を受けます。それは旧制高校特有の異性がいないために同性を愛していたのではなく、私は本当に同性を愛していたと改めて意識したことを意味していたようです。人間との関係性、特に性愛は単純なものではないと読者に意識させる物語だと岡崎先生からご指摘を頂きました。


<8月2日>
 2日目は松本市街を中心に行動し、まずはじめに松本城を訪れました。石落や狭間が数多く設けられており、戦国時代の鉄砲での戦いを想定して築城された様子が実感できました。

 次に旧開智学校へ行きました。擬洋風建築で内装1つ1つに凝った装飾が施されていて、当時の小学生達は学校で過ごすのが楽しかったのではないかと思います。私もこのような校舎で学んでみたいです。学習意欲が増しそうな気がします。
 お昼は蔵のむこうというお店でざるそばを頂きました。本場の信州そばはとても香り豊かで暑さでバテた体にもするする入っていきました。

 2日目の最後は旧松本高等学校へ行きました。ここは北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』の舞台となった場所で、今回の合宿で最も私が訪れたいと思っていた場所でした。北杜夫の直筆原稿や辻邦生との往復書簡など北杜夫の松高時代と関係のある資料がたくさん展示してありました。本で知っていた場所を実際に訪れることができ、さらに北杜夫の魅力を知ることができました。 

 夕食後も花火が上がっていて、なんと部屋の窓から花火が良く見えました。少し得した気分です。


 部屋から花火を堪能した後は2日目の読書会をしました。森鷗外『蛇』を扱いました。新しい学問との差、そして新旧の価値観の差が話題の中心でした。妻が祟りだと思って発狂したことは、完全なる西洋などは無いという鷗外の皮肉が込められていたようです。また、語り手の変化に鷗外の気持を代弁する要素が含まれていて、東京の専門家に妻を見せたほうがよいと私が勧告するのは鷗外の中央集権的な政治を意図したものだというご指摘を頂きました。


<8月3日>
 合宿最終日は電車で2時間以上かけて小諸へ向かいました。12時過ぎに到着したのでまずはひしやへ行き、おにかけうどんを頂きました。醤油ベースのけんちん汁にうどんが入っていて、家でも真似できそうな味だったので今度挑戦してみようと思います。

 お昼の後は懐古園へ行きました。展望台から眺めた千曲川は雄大で島崎藤村がここで様々な作品を生み出したかと思うと時を超えた感慨深さがありました。

 3日間最後の目的地は小諸高浜虚子記念館でした。高浜虚子は戦時中に小諸に疎開していたそうです。小諸駅周辺でお茶と自由行動をした後、軽井沢から新幹線でお帰りになる岡崎先生とお別れをして、学部生は高速バスで東京へ帰りました。


 合宿前に3日間は長いな、と感じでいたのですが実際はあっという間に過ぎてしまいました。普段の学校ではわからなかった皆さんの新たな一面が垣間見れて親睦が深められたような気がします。また非日常を求めて皆さんと合宿ができたら、と思います。連日40度近い日々が続きますが、体調など崩さないようお気をつけください。


                                                    
2年田中宏実