近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

2013 長野合宿

2013-08-10 19:09:30 | Weblog
8月1日(木)から3日(土)までの3日間、長野県で夏期合宿を行いましたので、そのご報告をさせていただきます。
まず、岡崎先生をはじめ、合宿にご参加くださった皆様、合宿委員のみんな、3日間お世話になり、ありがとうございました!


それでは、3日間を振り返ってみたいと思います。
・8月1日(木)
新宿駅に8時に集合し、特急あずさで上諏訪駅へ向かいました。初日の諏訪地方は雨だという予報で、特急の窓外も実際に雨や曇りが続いていたので、あーやっぱり予報通り雨かと残念に思っていました。けれど、気が付くと窓外に見える空が晴れて景色が明るくなってきていて、これはもしや…?と期待しつつ、目的地である上諏訪駅へ到着したのは11時過ぎでした。現地は期待通りに晴れ!夏らしい日差しが降り注いでいました。

最初は高島城へ向かいました。高島城はそれほど大きなお城ではありませんでしたが、天守からはこれから2泊3日の拠点となる諏訪の町と、その日行く予定の諏訪湖が眺められました。のんびりしていて、心の落ち着く景色でした。
昼食を割烹仙岳でいただき、諏訪市美術館で郷土作家の作品を見た後は、高島城から見えた諏訪湖でおやこはくちょう丸という白鳥の形をした遊覧船に乗りました。遊覧船に乗るのは初めてだったのでかなり楽しみにはしていたのですが、一方では、ここ数年で乗り物酔いし易い体質になってしまった疑惑を自身に感じていた私としては、何よりもまず船酔いするかどうかが心配でした。しかし、乗船してからは船酔いなど全く気にならず、船が動いて岸が小さく遠ざかっていくにつれて胸が高鳴りました。また、船尾側から船の通った水面に波がゆったり広がっていく光景は、見ていて大らかな気分になるものでした。そわそわ動き回ってばかりでしたが、ちゃんと大人っぽい楽しみ方もできました。
16時過ぎに民宿すわ湖に到着し、休憩と夕食を済ませた後、諏訪湖で行われたプチ花火大会を見に行きました。あんなに近くで見上げるようにして花火を見たのは初めてでした。

読書会では、堀辰雄「燃ゆる頬」を扱いました。司会は3年の能登さんでした。
私としては、脱皮前の少年時は神々しく美しい存在として精神的に好いていた三枝に、脱皮後の「私」がサナトリウムで見た少年を通して肉体的な性を見出す。そして少年時も無意識ではあったが三枝に肉欲を感じていたことや、三枝との間に確実に一過性の薄い感情ではない濃厚な感情を持っていた自分、少年時の三枝との関係が戻らないことに気付き、「大きな打撃」を受ける。「燃ゆる頬」というタイトルには、当時の「私」と三枝との純粋な恋愛を象徴するような意味があるのではないかと考えていました。
しかし、読書会の中で、脊椎カリエスを触る描写などから少年時から三枝に肉欲的・官能的なものを感じていたのではいないか、「大きな打撃」とは、同性愛から異性愛に修正されたはずの「私」が裸の少年のした動作をよく見ようとしてしまったことから、同性愛の気持ちを実は底に持っていたことに気付いたことによるのではないか、という意見などをいただきました。
他にも、魚住という存在の効果や異性愛に「私」が目覚めていく点、同性に対する描写と女性に対する描写の違いなどについても意見が交わされました。
岡崎先生からは、意識と無意識のレベルのズレが描き込まれている箇所のご指摘や新心理主義についてのお話をいただきました。

・8月2日(金)
この日は、松本を巡りました。最初に行った松本城は見晴らしがよく、天守を吹き抜ける風が涼しく心地よかったです。築城された当時はここまで高い建物はそうそうなかったと思うので、こんなに高い建物を作らせてそこから町を見下ろすというのは、単に私が今感じている景色の美しさや見晴しのよさによる感動とは別に、支配欲や自己顕示欲が満たされてかなりいい気分だったのだろうなと思いました。
旧開智学校では、素敵な雰囲気の校舎の中でゆっくりできました。こういうところで勉強出来たらいいなあと思いました。教室の中だけでなく、廊下や灯りまで装飾が施されている丁寧な造りでした。
蔵の向こうでざるそばをいただいた後に訪れた旧松本高等学校では、北杜夫の記念館や、一部公開されている復元教室などを見学しました。印象に残っているのは、復元寮室です。白壁に筆で直接力強く文字が描かれていました。ものすごい迫力で、ここで暮らしていた人達は日々どういう気分だったのだろうと想像して圧倒されてしまいました。

17時頃宿に到着し休憩後に夕食をいただいたのですが、この日のメニューはなんとすき焼きでした!お肉もたくさんで贅沢な気分を満喫できました!
夕食後は森鴎外「蛇」の読書会を行いました。司会は岩渕さんでした。
新旧の価値観が対照して描かれている点に注目した意見と、最後はあたかも「己」により一件落着したように語られている点に注目した意見が多かったです。

・8月3日(土)
3日目は小諸を廻りました。ひしやで郷土料理おにかけうどんを食べた後、懐古園や小諸高浜虚子記念館を廻りました。
懐古園は樹が多く植えてあり、濃い緑に目が潤されました。開けた展望スペースからは周囲の緑をよく見渡せ、山の風景を満喫できました。
小諸駅周辺でお土産を買った後、新幹線でお帰りになる先生とお別れをして、学部生は高速バスで帰りました。東京に着いたのは21時過ぎでした。


今回の合宿で、また会全体の親交が深められたと思います。皆様、ご協力ありがとうございました。
特に、合宿委員のみんなにこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。試験やレポート提出で忙しい時期にも関わらず、快く合宿委員を引き受け、現地でもよく気付き動いてくれてどうもありがとう。合宿を成功させてくれたこと、深く感謝致します。

次の活動は9月の夏季勉強会です。
では、厳しい暑さが続きますのでご自愛ください。

3年 今井