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「幻滅のたびに甦る期待はすべて、未来論の一章を示唆する。」(Novalis)

I日記

2010年06月09日 | I日記
artscapeのレビュー/プレビューがアップされました。

いま十川幸司『来るべき精神分析のプログラム』を読んでいます。読んでいる途中ですが、Iのことを考えるのに役に立ちそうなところを抜粋します。

「さて、ここで自己システムと社会システムとの関係を考える上で参考となる一つの情景を想定してみることにする。それは、乳児が両親のコミュニケーションを傍らで聞いているといった、どこの家庭でも見られるごくありふれた光景である。そこでは両親は会話をする一方でときどき乳児にも話しかける。しかし乳児にとって両親の言葉はコミュニケーションとして機能しているのではなく、単に音を聞いているに過ぎない。つまりこの場面において、コミュニケーションは乳児の外部で作動していて、乳児はここで形成されているコミュニケーション・システム、言い換えれば社会システムの外に位置している。このような状況から、自らがコミュニケーションを生みだし、コミュニケーションの連鎖を形成する状況へと移行することが、乳児の自己システムが社会システムと交差するということである。それがどのようになされるかということがここでの問いになる。」(十川幸司『来るべき精神分析のプログラム』p. 74)

「このようなシステム論的な観点から、フロイトのエディプス・コンプレクスの構想を改めて捉え直すならば、エディプスとは自己システムと社会システムがカップリングを形成(および調整)していく過程で生じる自己システム内の作動上の変化だと再定義することができる。」(p. 76)

「フロイトのエディプス・コンプレクスは、両親に対する欲動水準の葛藤が、三歳から五歳までの性器的段階にある子供に起こることだが、クラインはその同じ葛藤が生後六ヶ月の乳児の心的世界においてすでに起きていることを見出した。これが彼女が早期エディプスと名づけた状況である。」(p. 77)

「早期エディプスは、クラインが児童のプレイ・セラピーから得た着想であり、彼女は零歳児が抱く空想を視覚的な形で鮮やかに示している。生後三、四ヶ月の乳児は、母親の身体の中に(赤ん坊やミルクなどの)宝物が満ちていることを妬み、母親に攻撃性を向ける。この攻撃性は生後六ヶ月からの離乳期にピークに達するが、この時期のフラストレーションを、乳児は母親の内部にあるペニスに口唇的欲求を向けることによって解消しようとする。これがクラインが描くエディプス状況である。」(p. 78)

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