対局日誌

ネット囲碁対局サイトでの、私の棋譜を記録していきます。
全くの初級者がどう成長していくか、見守ってください。

素人と玄人(書評)

2005-04-21 22:46:23 | 棋書
素人と玄人(日本棋院:影山利朗著)

予備校の名物講師の講座を聞いて、今まで全然面白くなかった授業が楽しくなった経験はないでしょうか?
今回紹介する「素人と玄人」(と書いて「アマとプロ」と読む)は正にそんな名講座と言えましょう。
今まで紹介してきた本の中でも桁違いに面白い。
オススメ中のオススメ。

アマに囲碁の基本を教えると言う、いたって平凡な内容ながら、文章が違う。語り口が違う。
まえがきにある
「『囲碁が強くなりたかったら、本書を読みなさい』
 下は囲碁を覚えて間もない人から、上は有段者にいたるまで、はばひろい層の読者によびかける。
 これは私が、素人時代七年、玄人時代の二十二年の経験と知能をすべて結集して世に問う一編である」
という惹句はダテじゃありません。
私の公式戦11連勝は本書の効果といっても良いかも。
一応、本書を熟読しているときと連勝の時期がかぶっています。

例えば第一章。

「入門して暫くの間は一応50局から100局打つことである。
 これはもう、相手の石をみたら取ることを考え、キルことを考えよ
 自分の石をみたら取られまいとせよ、ツグことを考えよ

一見投げやりなスタートにみえて、きちっと「キリとツギ」という一番大事なポイントを指導しているのがニクイ。
本当にこれを意識するだけで全然違うんですよね。

「『何しろ私はまだ碁が弱いし、とてもよむなんて大それたことはできないのです』
 (中略)そのようなあきらめている奴の首根っこをつかまえてでも教えたいんだ

一度教えるとなったら待ったなし。シビレます。

繰り返しますが書いてあることそのものは、本当に平凡、というか基本。
以下に、参考までに目次を。

第一章 シチョウとゲタ
第二章 キリとツギ
第三章 石の歩み
第四章 石の先行争い
第五章 勢力圏と地
第六章 石の死活
第七章 定石の勉強法
第八章 愚形、好形
第九章 本手とうそ手
第十章 手筋
第十一章 侵分の心得
付録 手割論、自戦解説

加えて幅広い読者を想定しているので問題がやや難しい、語っている時代が古いなどの欠点もないわけではないです。
しかしそれを踏まえた上でも、「そんな基本的なことはいいや」という人にもそれこそ「首根っこをつかんででも」ススメたい。
読んで損ないって。

難点は絶版なこと(をい)。
昭和45年初版だもんな…(紀伊国屋の目録もありませんでした)。
ただこの本は相当ヒットしたらしく、都内の古書店で良く見かけます。
私の知っている範囲だと中央線沿いに4ケ所ぐらいあります。
アカシヤ書店にもありました。
一度、探してみては?
図書館や古書店を探してでも読む価値はあると思いますよ。

ちなみに「続・素人と玄人」という続編もあるのですが、こちらは読んでません。
何でもコスミツケにこだわったというところに、あまり興味を引かなかったので見送ったのですが、本書を読み終えた後だと気になる一冊ではあります。
「素人と玄人」で「いくら早くても一日一章、全十一章半月は費やしてじっくり勉強していただきたい」とあるのに、すぐ読み終え続編を希望した人が後を断たなかったというエピソードも記されています。