「大人の休日倶楽部」主催で「浮世絵で読み解く江戸時代の日本橋」講座があった。時代考証家から当時の浮世絵から当時の日本橋の様子や生活を知ることであった。
講師の山村竜也は、NHK大河ドラマ「新選組」・「龍馬伝」・「八重の桜」NHK・BS「伝七捕物帳」・「小吉の女房」などの時代考証をされている。
時代考証とは、映画、テレビ、時代小説などが史実に合っているか検証するが、生活風習、建築・美術様式、諸制度、言い回しなどを熟知しなければならない難しいと感じる。
日本橋は、多くの浮世絵師が描いているが、代表的なものは「東海道五拾参次之内 日本橋」であろう。この光景は、歌の「お江戸日本橋七ツ立ち」である。日本橋は、五拾三次の起点である、朝の「七ツ」は今の4時頃である、大名行列が橋を渡ってくるが、「木戸」が開くのは六ツで、閉じるのが「四ツ」(午後10時)であるため、特別に開けたのであろう。木戸の所には日本橋魚市場の威勢のよい振売(魚売)がおり、日本橋が活気のあることを示している。この浮世絵には別バージョンがあり木戸付近の人を多く描いている、日本橋の賑わいをさらに強調する狙いなのか意図は不明である。
同じ、広重の描いたものであるが、「名所江戸百景 日本橋江戸ばし」がある、斬新な構図の中から「江戸ばし」を描いているが、日本橋から描いた構図である、「振売り」の木桶の描かれており、何よりもはっきり分かるは橋の擬宝珠(ギボシ)である。江戸市中で擬宝珠のあるのは「日本橋」・「京橋」・「新橋」のみで「日本橋」からの構図であることが分かる、擬宝珠の役割は柱の腐食を防ぐ意味があり、江戸時代の橋が太鼓橋なのも耐久性からくるものである。
その他の日本橋を描いた浮世絵
越後屋(現在の三越)の位置は変わらない、富士山も見えているが、現在はビルで見えない。駿河通りと言ったのは富士山のある駿河から付けられた。
熈代勝覧(日本橋繁昌絵巻)ーベルリン東洋美術館蔵ー
平成11年(1999)にドイツで発見された「熈代勝覧(日本橋繁盛絵巻)」
早速、私も図書館から借りて読んだが研究者にとっては一級の資料でもある。
お江戸日本橋の賑わいぶりを描いた「熈代勝覧」。
タテ約45cm×ヨコ12m30cmの浮世絵で画家は不明で文化2年(1805)頃の日本橋通りを描いている。
地下鉄「三越前」駅のコンコースにCopyが掲示されている。また、小学館より「熈代勝覧の日本橋」の書名で刊行されいる。
北から今川橋ー本銀街ー本石町ー十軒店ー本町ー室町ー日本橋までおよそ七町の760mで描かれた人物は1700人、犬34匹、馬13頭、牛4頭、猿1匹、鷹2羽で、振売りの行商人、立売り、貸本屋、古着売り、回り髪結、金毘羅参り、勧進の一行、巡礼、虚無僧、辻駕籠、飛脚、花見の一行、登下城の武家の一行など、さまざまな人々や90余の商店とさまざまな商売、日本橋北橋詰めの魚河岸のにぎわいが細かく描かれている。
【絵巻で見えてくる生活】
①占い師 木戸のそばで、机を置いて筮竹(ぜいちく)と呼ばれる割箸のような形状の物が置か れて、その前には女性がいる。奥方と思われるが、女性はいつの世も悩みは変わらないのか
②寺子屋入門の親子 子どもは行くのを嫌がっているが父親は寺子屋用の机を担いでいる。江戸市中は就学率が高くほとんどの子供が6歳になると通う。学習机は家庭で用意する。
③玉鮓 江戸時代に大阪で出版された店舗案内「江戸買物独案内」にも掲載されている店舗で、日本橋通りで初めて屋台から店舗を構えた。(仕出しが中心)当時は「押し鮓」で「握りは」は、江戸時代の後期である文化年間から。
④二八蕎麦 蕎麦は米より歴史が古く相当数あったようです。二八蕎麦の名には、そば粉の割合、2×8で16文と諸説があるが金額を指したかと思われます。
江戸時代の貨幣の換算は、米や蕎麦から通貨換算されるがはっきりした換算は不可能で米での換算が多いが現代と違っており、蕎麦の価値があまり変わらない。16文は400円、1両は10万円か?。
⑤飛脚 街道が整備するとともに連絡手段がととのい。飛脚の需要も急速に高まってきた、二人一組で東京~大阪が700円(指定なし)、5日後の便だと3万円となっている。
⑥馬タクシー(荷物タクシー) 馬に乗った女性は、馬に荷物180kgまで乗せられ余力があれば人も乗せられる。
⑦瓦版売り 瓦版売りは、当時は顔を隠して売っていた。岡っ引きが来たら逃げ出す構えの深編笠の二人で一人は見張り、一人は話術巧みに宣伝する。お上への批判や失態のはなしなどもあったのでは。
⑧道場帰り 剣道の防具は江戸中期にはあったようです。防具の発達にともない竹刀が考案され、木刀による形式的な稽古にに変わり、実践的な打ち込み稽古が主流となった。
⑨居酒屋 当時は、地味であった、酒を飲むのが中心で、看板等はない。
⑩三井越後屋 格子、銅葺き雨樋、手桶を積み上げた天水桶はいかにも江戸随一の大店の店構えである。当時、掛け売りが中心のなか店先売りの現金決済で両替商、幕府御用まで広げた。
この絵巻、じっくり見ていくと、思わぬ発見が数々ある。鳥瞰図をズームアップし看板の一つ一つ判別できる、高札場のお触書がきちんと細字で書かれているとか、顔の表情など・・・目にうろこ、驚きの連続である。
このように、1枚の浮世絵から当時の風習、暮らしなどの様子が分かるのは面白い。浮世絵の見方が変わってきた。
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