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「マチネの終わりに」的結末のそのまたあとで

2019-11-12 | 随想

昨日の記事は下書きへ移動。自分で読んで心の整理ついたからもういいって、思い出すから心が乱れる。今さら何を思い出す?と自分に聞いておく。


私は他県の学校に進学して、それでも高校時代の女友達と二年間くらいは会っていた。彼女は御商売されているおうちの跡取り娘、親の意向で進学はせず、地元で就職していた。

帰省した時はよく会っていて、そのときの話で、今付き合っている人の話を彼女にしたのだった。その人も彼女も私も同じクラス、よく話をする間柄だった。

きっかけは高校三年生の秋の遠足。自由時間になって、1時間後の集合時間までの間、二人で歩きながらずっと話していた。1学年千人近い学年、集団の中から私を探し出してくれたのが嬉しかった。大きな池の堤防を片道30分歩いて、また引き返す。季節はちょうど今頃。

どこを受けるん?

私は**と東京の私大も。その人は今年は東京の大学を一校だけ受けると話していた。そのことを何よりも確認したかったのだと思う。

手紙出してもいい、いいよという運びになったんだった。

こんなんでわかるかしら、人に話の流れが。でも続けます。

卒業して二年目の年末に帰省した人と会ってみると、女友達が自分に会いたがっていると聞かされた。私が付き合っていると聞いて焦ったのかな。

会ってもいいけど、三人で会おう、で、その前に二人で一時間くらい話をして、それから待ち合わせの店へ二人で行こうと、その人の提案。ああ、私に気を遣ってくれているのだと嬉しかった。

ところがところが、前日になって彼女から風邪で行けないとの連絡。そうなの、じゃ私から連絡しておく。いい、私が連絡するから。

と、そこで私は分かってしまうのですね。彼女はその人とだけ会いたいのだと。会って…どうするつもりだったのかな。自分の方を振り向かせたかったのかな。

一時間前に約束の場所へ行ってみると、その人は電話を受けてなかった。やっぱり。だから、私は彼女から聞いたことだけを正確に、枝葉もつけずに伝えて、二人で年末の街をデイトした。

遠い遠い思い出です。瀬戸大橋もなく、JRはまだ国鉄で、家に一台固定電話のあるだけの時代。それでも人は連絡を取り合って出会っていた半世紀前。

次の春休み、やっぱり彼女は店で待っていたそうで、一度会うことにしたと事前に断ってくれた。私には、不思議とどんな感情も起きなかった。私たちは故郷の街を歩きながら、最近読んだ小説のことをよく話していた。とても濃密な時間を共有して来たので、流れが変わっていくことはないと思っていた。

彼女は美人で背が高くて、男の子にとても人気があった。だからことは簡単に運ぶと思っていたのかもしれない。でも、もう高校の教室で楽しく話していた時は過ぎ、それぞれの境遇が変わってきていた。彼女には家業を継ぐ役割があり、一緒にそれをしてくれる人でないと将来はない。ないからこそ、いっとき、そうでない人と付き合いたかったのかもしれない。

それからは彼女ともあまり会わなくなったかな。結婚式には呼ばれましたが、それからはほとんど会うこともなくなって今に至る。

何ごとも恐る恐るの始まりがあり、少しずつ盛り上がり、その時期がしばらく続き、それから些細な行き違いが積み重なり、やがて終わっていく。

思い出すのも辛いことの数々。新宿から高田の馬場まで、夜道を歩きながら、何を話していたのか、詳しいことはもう忘れたけど、私は何をいまさらと思っていた。あなたの言葉に私がどれだけ傷つき、何度涙を流したか、口に出して言ったかもしれない。若い時の心は移ろいやすいもの。一番のピークで一緒に人生を歩んでいく約束ができなかったのだから、仕方ない。

長い長い構文はもうどこへ収束するか、ピリオドをどう打つか、わからなくなっていた。

半世紀たった今なら言える。結局は縁がなかったのだと。

二番目でいいから付き合ってくれと言った人と今は暮らしている。時々、相手に猛烈に腹が立つのは私が年取ってこらえ性がなくなったから。自分の感情に忠実で、嫌なことを我慢したくなくなったから。

でも男女二人で暮らすこのスタンダードな制度が、何よりも自分を守ってくれていることも知っている。

健康で、働いていて、正直で、人の心の機微まではなかなか分からないけれど(これは男の特性かも)、制度の外へ出た方が幸せになるとまでは思えないので、しばらくはこのままでいましょう。

相手の顔は自分の鏡と言うらしい。少々のことは見逃して機嫌よく、機嫌のよいばあちゃんになりたいものです。


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