“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

しろねこ流『漢字の使い分けときあかし辞典』の読み方…?

2016-08-02 01:59:03 | 日記
梅雨も明け、8月になりました。
職場ではまだ授業が続いています。

7月6日の記事でご紹介したイベント「記者報告会『漢字の使い分けを考える』」に行ってきました!
午後から仕事を抜けて、蜻蛉返りでした。
当日の内容や様子については、毎日メディアカフェ > イベントアーカイブの7月20日付のページに詳しいので、ここでは書きませんが、お話はたいへん楽しかったです。
個人的には『漢字の使い分けときあかし辞典』をどう読み進めていけばよいか、ツボを押さえて帰ってこれたという感じでした。
毎日新聞校閲グループの岩佐記者の挙げた数々の用例に、『漢字の使い分けときあかし辞典』を書いた立場から円満字さんが解説を加えていくのですが、新聞のためのオフィシャルな表記の考え方とは一線を画して、基本的にプライベートな書き手の意図し得る表記のバリエーションを様々に想定した漢字の使い分けを、その漢字が当てられた日本語の意味をも考え合わせながら場合分けしていくのです。
本書を連続したページで読み始めたのは28-1を終えてからだったので、仕事もあって殆ど読み進めていなかったのですが、実際、イベントから帰ってきてからは理解度が上がって、本書を読み進めるスピードが、少し上がりました。

ところで、研究社の円満字さんの辞典三部作で、最初に読み終えたのが『部首ときあかし辞典』でしたが、『漢字ときあかし辞典』より先に、気がつくと新刊の『漢字の使い分けときあかし辞典』を継続して読むほうに取りかかってしまいました。部首の理解がある程度自分のなかでこなれた矢先だったので、『漢字の使い分けときあかし辞典』の部首から入る説明も、早く理解できているように思います。

そしてここからはちょっとマニアック(?)な読み方なのですが、円満字さんの御本(及び「漢字Q&A」その他二つのブログ、数々の雑誌記事等)を一番最初のものから遡って拝読した私としては、あちこちの文章中に散らばっている円満字さんのエピソードと、かなりの確率で関連しているのではないかと思しき例文をついつい見つけてしまいます。子どもの頃よりは深読みしない性格になった私ですが、その例文の中に微かな確率を見出しては、次の例文へ移る、ということを繰り返しています。

具体的にはたとえば、「しのぶ(忍/偲)」の項目で、
「怪しい人影が忍び寄る」「人目を忍んで逢い引きする」「ドアの向こうから、忍び泣きの声がもれてきた」と例文が並ぶ後に、さりげなく(?)
「辞書編集をしているのは世を忍ぶ仮の姿で、実は……」
と入っているので、「実は、……実は、何者なんだろう」と思わず真面目に悩みそうになるのですが、
「いや、謎のままにしておこう」と次に移ります。

あるいは、「おそれる/おそろしい(恐/畏/怖/懼/虞)」の項目で、
「恐ろしい速さで牛乳を飲む」
という例文があるのですが、これは一般的な辞典の例文としては、かなり謎の設定ではないでしょうか。人間のことなのか、いやいやおそらく(円満字さんが飼っている)猫のことではなかろうか……? 猫だとして、この猫の置かれた状況は、余程空腹だったのだろうか?? と悩むと、きりがありません。
因みに、「さく/さける(裂/割)」の項目にある「鶏のささみを手で(裂/割)く」は、明らかにご本人のブログにある記事と関連しています。

それから、パラパラ無作為に読んでいた時だったのか、どの項目で見かけたか記憶が辿れなくて再び見つけられないため、表現が正確でないのですが、
”お城を模した家を建てる”
のような例文を目にした記憶があります。円満字さんといえば、根っからのお城好き(正確には城跡好き)。そういう方ならではの発想なのかな……と、思わずお城に似た家を想像しようとするわけです。

円満字さんの『太宰治の四字熟語辞典』のまえがきだったか、ご本人が大学時代に太宰ゆかりの地を先輩と旅したが、その先輩とも今は行き来がなくて、自分がこの本を出したことを知ったらなんと思うだろう、というようなことが書いてあったような気がします。そう考えると、この『漢字の使い分けときあかし辞典』には、円満字さんと親しい(親しかった)方々が手に取れば、何らかのメッセージになっている例文が数々織り込まれているのでは……!? と、ついつい自分の癖で深読みしそうになってしまうのでした。その、本当なのかつくり話なのかの例文の境目がなんとも絶妙で、ファンとしてはかなりおもしろいのです。

さて、タイトルにある「しろねこ流」というのは、本書を拝読するときに貼ってゆく付箋の使い分けにあって、だいたい以下のように分かれています。
・漢字の使い分けと和語に関する、目から鱗の内容・説明【これが大部分】
・上でご紹介したような、円満字さんらしい(?)例文
・猫に関する(または、関すると思しき)例文
・疑問点が残る箇所【稀】
・誤植【極稀】

ここで、猫に関する例文には、猫の付箋を貼っています。その他の場合は Post-it を使用していますが、猫の付箋は100均に手頃なのがあり、それを使っています。ところが、数時間前に気づいたのですが、なんとこの付箋、貼るほう(シールになっている面)に、しっぽが描いてあるではありませんか!!



(裏面を参考までに横に並べてあります)
なんてかわいい、直接見えないところも手を抜かない、健気なデザイン!!
と思わず感動してしまったしろねこ。この辞典を拝読していなかったら、この付箋を買うこともなく、その魅力にも気が付かなかったかもしれません!

そういうわけで、あと何十日このような想像の漂流が続くか分かりませんが、仕事とほかの勉強の合間に、漢字学習を本筋として地道に読み進めていきたいと思います。

今年の4月から、本当に思いがけず中学校1年生の学年主任、兼担任(兼総務主任)を任され、細かくはいろいろあったものの、どうにかこうにか無事に4か月が過ぎました。なんとか担当スタッフや生徒たちとのコミュニケーションのバランスもとれてきたので、常用漢字も非常用漢字も関心をもって聞いてくる彼らに、しっかり分かりやすく説明できるように、円満字さんの御本もそうでない御本も、引き続き頑張って勉強していきます。
では、明日も授業なので寝ます。