このコーナーは、来年出版される予定の資格本の原稿の一部ををアップしていきます。出版予定の資格本は、年代別(ex20歳代・・)に有用な資格とその活用方法を解説していくものです。第4回は20歳代の簿記です。
(1)簿記検定とは
簿記、この資格、経理部門以外の方には、縁遠いと感じるかもしれません。しかし日本では毎年50万人以上が受験するメジャーな資格で、商工会議所が実施する公的資格です。財務の専門家を目指すのではなく、ビジネスパーソンの基礎知識として必要なレベルに達してほしいという意味で20代には3級を、30代には2級の取得をしたらいかが、というものです。
商工会議所の実施する日商簿記は、3級が商業簿記、2級が商業簿記と工業簿記、そして1級が2級に加えて、会計学と原価計算となります。私も1級まで学習しましたが、1級は財務の専門家や税理士を目指す方はともかく、一般のビジネスパーソンにとっては、取得にかかる労力と資格の使い道を比較すると疑問です。
(2)簿記検定取得のメリット
企業の取引は、取引の仕訳からその累積である残高試算表、そして、貸借対照表、損益計算書へと決算が移ります。この資格は、仕訳や帳簿の作り方を学習しますが、経理部門以外の方にも2つほどメリットがあります。
一つは財務諸表が読めるようになり、さらに自分の仕事の結果がどの勘定科目に反映されるかが、わかるようになります。そして自社や取引先の財務諸表が読めることにより、取引先の財務状況や与信管理(信用度合を管理すること)ができるようになります。
もう一つは、勘定科目の中で、減価償却費や前払金、前受金などのややこしい内容が理解できるようになります。
私が以前勤めていた会社では、年度末に経理からこれは前払い費用ですよ、と言われて何だかわからず、処理していましたが、最後までその意味の説明はありませんでした。どうせわからないだろうからと、説明もしてくれなかったようです。もちろん後に簿記を学習して理解できた時は、目的を理解してやる仕事と言われたとおりにする仕事のモチベーションの違いを感じました。
また簿記が役に立った例をお話ししましょう。簿記の仕訳は、借方と貸方の必ずペアになります。例えば、100円を借金した時は、借方に現金100円、貸方に借入金100円、と仕訳します。
仕訳の合表である貸借対照表には、貸方に資産、借方に負債として加算されます。貸借対照表は、資産が負債より多く、純資産が残っていれば、債務超過とはなりません。健全です。負債が資産より多いと、資産を全部売っても負債は返済できず、危険です。
さて、ニュースなどでこんな話を聞いたことがあると思います。「日本の借金は国民一人当たり8百万円、大変だ、このままだと日本は破たんする!」もう一つ「日本は世界一の金持ち国!」 何だか矛盾しているこの話、私は初めから、胡散臭いと思いました。当時簿記の学習中でしたから、はて、貸方の負債が8百万円、じゃ、その反対の借方の資産はいくらあるんだろうか、破たんするほどの借金と、世界一の金持ちとはどういう関係なんだ、と疑問を持ちました。
そしてネットで調べると、ありました、ありました、「日本国の貸借対照表」。それによると、確かに政府の負債は1千兆円あり、日本の人口で割り算すると、国民一人当たりでは8百万円です。しかし、一方、借方の資産には、政府の資産でだけでも5百兆円近くあります。差し引き政府の負債は1千兆円の半分です。これは世界の先進国と比較しても特段多い訳ではありません。普通の国です。また貸方の合計(負債+純資産)は、借方の合計より3百兆円近くも多く、この金額は世界一です。これが世界一の金持ち国と言われるゆえんです。
ということで、なんだ、別に問題ないんじゃないか、と理解できた次第です。もう少し突っ込むと、政府の負債のうち1/3は日本銀行が持っていて、これは返す必要のない負債で、実質の債務超過は、わずかです。簿記のお陰で学習できましたが、この先は難しくなりますのでこの辺で止めておきます。
日本の借金のニュースを流す新聞記者の方たちは、たぶん簿記を知らないのでしょう。反対側の資産などが気にならないんですからね。テレビに出る有名な評論家でも知らない人はいるようです。困ったものですね。
(3)簿記検定の学習
簿記は、語学、パソコンと並んで、ビジネスパーソンの新三種の神器の一つと言われています。それだけ簿記は、受験者が多く、その学習方法も、独学、通信、通学と沢山のコースがあります。通信・通学は相場が2・3級通算で数万円といったところでしょうか。簿記講座一覧のサイトも登場しています、下記を参考にしてください。
日商簿記通信講座ランキング http://www.boki6.3zoku.com/boki-rank.html