最近、興味深い本を読んだ。浅野和生・著『図説 中世ヨーロッパの美術』(2018年)河出書房新社(ふくろうの本)である。
「…ビザンティンの壁画では、キリストの埋葬の際に後ろで両手を上げて泣くマグダラのマリアの姿がときどき描かれている(図:スヴェーティ・ニキタ修道院の壁画)。この姿はルネサンス絵画にも受け継がれたし、もっと後の、カラヴァッジョの「キリストの埋葬」の中にまで、その反映を見ることができるだろう。」(浅野和生『中世ヨーロッパの美術』, pp077-078)
もちろん、記述では「反映」なので、両手を上げているのがマグダラのマリアとは言っていない。
※参考:スヴェーティ・ニキタ修道院の壁画のYoutube動画 ↓ 。《キリストの埋葬》は(2:30頃に登場)
https://www.youtube.com/watch?v=8DuEaVrQWd4
さて、カラヴァッジョの《キリストの埋葬》 ↓である。(昔撮ったボケ写真の使い回しですみません)
カラヴァッジョ《キリストの埋葬》(1602年)ヴァチカン絵画館
今まで、私的には両手を上げているのはクレオパのマリアだとばかり思っていたので、思いがけず、えっ?マグダラのマリアなの??確認しなくては!と一瞬焦ってしまったが、昔読んだ「西洋美術史研究(2001/No.5)」及び『カラヴァッジョ-聖性とヴィジョン』における宮下先生の「オランスの身振り」を再確認することにより、改めて、なるほど!と了解できた。
「ピエタや哀悼の場面に、両手を上げるマグダラのマリアやクレオパのマリアが登場することはビザンチンからイタリアに受け継がれた伝統であり、ここにそれが見られることは不自然ではない。」(宮下規久朗・著『カラヴァッジョ-聖性とヴィジョン』(2004年)名古屋大学出版会, p164)
ということは、マケドニアの片田舎にあるスヴェーティ・ニキタ修道院壁画《キリストの埋葬》は、カラヴァッジョ《キリストの埋葬》の時代を遡る原型のひとつなのだ!!と思うと実に感慨深いものがある。