ゲストのむろさんさん情報によると、ローマのパラッツォ・バルベリーニ(国立古典絵画館)「CARAVAGGIO 2025」展の詳細が決まったようだ。(情報に感謝です!!>むろさんさん)
★「CARAVAGGIO 2025」
・会期:2025年3月7日(金)~7月6日(日)
・会場:パラッツォ・バルベリーニ(国立古典絵画館)
・公式サイト:https://barberinicorsini.org/caravaggio-2025/
特筆すべきは、特別展示中の《マッフェオ・バルベリーニの肖像》と、プラド美術館で展示中の新発見(?)《エッケ・ホモ》が展示されることだろう。
展示作品は、上記の2作品、及び、バルベリーニとコルシーニの所蔵作品の他に...
・《聖カテリーナの殉教》ティッセン・ボルネミッサ美術館
・《回心のマグダラのマリア(とマルタ)》デトロイト美術館
・《洗礼者聖ヨハネ》ネルソン・アトキンズ美術館
・《恍惚の聖フランチェスコ》ワズワース・アシニウム美術館
・《いかさま師》キンベル美術館
・《聖ウルスラの殉教》インテーザ・サンパオロ
が決まっているようだ。欧州だけでなく米国の作品も並ぶ見応えある展覧会になると思う。
まぁ、私的には、思わず、噓でしょ~、と叫んでしまったのだが、更新される前のサイトには《マッフェオ・バルベリーニの肖像》は2月まで展示となっていたのだよ。ったく
。
さて、今回の展示作品は既に観ている作品ばかりだし、再度のローマ行き??どうしましょうかねぇ 。
まず、2010年ローマScuderie del Quirinaleでのカラヴァッジョ展(私は行っていません)。図録から出品数を数えると、真筆作品ばかり26点出品の空前のカラヴァッジョ展でした。次に2016年西美のカラヴァッジョ展ですが、少し甘く数えるとカラヴァッジョ作品は約10点(マッフェオ・バルベリーニの別バージョン、ムルトラ・メデューサ、ジェノヴァのエッケ・ホモを入れた数字。個人蔵の法悦のマグダラのマリアは除外)。そして、今回の3月からのカラヴァッジョ展ですが、現在判明している作品は13点です。上記本文に書かれた6点の他、ボルゲーゼの「病めるバッカス」も出品されます(公式サイトの作品写真の>をクリックしていくと出ています)。
現在判明しているものだけなら、真筆作品の数としては2010年ローマ展の半分、2016年西美展より少し多い、ということになります。上記本文の6点は全て見たことがない作品であり、特に見たい絵は聖カタリナといかさま師です。ティッセン・ボルネミッサはギルランダイオのトルナブオニの肖像を見たいので、将来行く可能性があります。ウルスラについてはカポディモンテでキリストの笞打ちを見損なっているので、将来行く可能性が高い。アメリカの4点ですが、今回のカラヴァッジョ展に行ったとしてもアメリカではクリーブランドの聖アンデレが残ってしまいます。
私としてはまだ海外旅行に行くという気分にはなっていなくて、2年後ぐらいを目途にイギリスから始め、次がイタリアと思っていました。今回のカラヴァッジョ展の出品作の質と数から、どうしようかと悩むところです。
ついでながら、カラヴァッジョ関係の話題も書いておきます。
一つ目は「冬のローマ&マドリード(4)」に2/21に投稿したウルバヌス8世のタペストリーの出ているイタリア語サイトの別項目記事。ここにはイタリア以外の美術館や史跡の紹介もありますが、カラヴァッジョ関係の記事も何点かあり、その中でキリストの捕縛の別バージョンとパレルモの礼拝堂の記事が目を引きました。下記URL:jpをitに置き換えてご覧ください。
ルッフォ・コレクションのカラヴァッジョの「キリストの捕縛」
パレルモの聖と俗の間に位置するセルポッタ礼拝堂
https://www.viaggiatricecuriosa.jp/2023/12/30/presa-di-cristo-caravaggio/
https://www.viaggiatricecuriosa.jp/2019/11/13/gli-oratori-del-serpotta-palermo/
カラヴァッジョ関係ではこの他に、ナポリのカラヴァッジョ:ナポリの作品巡り と ローマのカラヴァッジョ「美術館」:彼の作品を発見する旅 がありました。左上の蝶々の絵の所をクリックすると10回分のページが出てきて、全36ページ、約360テーマあります。日本語訳にしてご覧ください。ピントゥリッキオやペルジーノについては何回かの掲載があり、参考になります。パレルモの礼拝堂の回では、以前テレビ番組の「大人のヨーロッパ街歩き」で紹介された内容を詳しく書いたようなものでした。
サンニーニ家旧蔵、ルッフォ・コレクションのキリストの捕縛については、貴ブログ(2022.10/11)で石鍋氏の「カラヴァッジョ ほんとうはどんな画家だったのか」を引用し、また、2006年にデュッセルドルフでご覧になったと書かれていますが、このサイトではアイルランド国立美術館の絵とこのルッフォ・コレクションの絵の2点をカラヴァッジョの作としています。拡大できるカラー写真もあるので貴重な記事だと思います。また、貴ブログ2023.10/6でローマ郊外アリッチャのキジ宮での展示が紹介されていますが、見に行った方のブログに修復前の写真が出ていました。
https://www.tour.ne.jp/blog/romenavi/118311/
(続く)
で、カラヴァッジョ関連の記事URL等、色々ご紹介いただきありがとうございました!!興味深く拝見させてもらいました。
特にサンニーニ版の修復前の痛んだ様子から、修復はかなりの部分で加筆されたのだろうなぁと想像してしまいました。うーん、やはりサンニーニ版もカラヴァッジョ真作なのでしょうか?
吉住磨子「欺瞞のリアリズム―カラヴァッジョ作品のロマたち」
この論考では2点の女占い師とキンベルのいかさま師を取り上げ、ロマ(ジプシー)という観点に絞って考察しています。いかさま師の中央にいる男も肌の色、髭、帽子の羽飾りの形(後ろ向きの若者のフワフワした羽とは違う細長い羽)からジプシーと考えられるとのこと。結論として、これらの絵は現実のジプシー女・男というよりも演劇に出てくる人物の形を使って、新しいイメージを作り出したところにカラヴァッジョの斬新さがあるそうです(現実のジプシー女は例えばシモン・ヴーエが同一主題で描いたようなもっと野卑なイメージ)。この辺は上記石鍋氏の本のP103最後の部分からP105までを発展させて、そこに15~17世紀の絵画・タペストリー・素描・版画などからジプシーの図像を多数取り上げ、論考を展開しています。2点の女占い師では、ターバンを頭だけに巻いている女性は未婚、首にも巻いている女性は既婚者とのことで、ルーブル版のジプシー女は既婚者になります。当時のジプシー社会では結婚に関するモラルはかなり厳格だったそうですから、カピトリーノ版のジプシー女が未婚ならばジプシー社会のモラルを逸脱しているそうです。
この論考の冒頭と最後にガスパーレ・ムルトラのマドリガルが引用されています。このマドリガルは2019年に札幌・名古屋・大阪で開催されたカラヴァッジョ展図録のムルトラ・メデューサ解説に、女占い師、勝ち誇るアモル、メデューサと関連すると書かれていて、このマドリガルが書かれた1600年頃はカラヴァッジョもローマにいた時期です。カラヴァッジョに関連する同時代史料としては、伝記、契約文書、犯罪記録などが和訳も含め公刊されていますが、文学作品であっても同時代人のカラヴァッジョの絵に関する内容(賛美)であり、是非とも全体を読みたいと思います(できれば日本語訳で)。ネット情報等で何かご存じなら教えてください。(1604年刊行のMurtolaのマドリガル原文は1971年Cinottiと2003年Macioceの著書に収録されているようですが。)
この論考と似たような内容の日本語での別論文に、高橋健一「研究ノート 香水と『ジプシー女』の占い師―カラヴァッジョのいわゆる運勢(Buona ventura)についての覚え書き」神戸大学美術史研究会美術史論集11号2011年 があります。この中ではキンベルのいかさま師の真ん中の男をジプシーとする説(J.F.Moffitt,Caravaggio and the Gypsies,2002)やMurtolaのマドリガル(ジプシー女の占い師の部分)を引用するなど、吉住氏の論考と同様の材料を使って論述されています。この高橋論文は結論として何を言いたいのか少し分りにくいのですが、吉住論文を読む時の参考にはなります。なお、吉住論文には高橋論文は引用されていません。
この吉住論文の題名「欺瞞のリアリズム」は、宮下氏の「幻視のリアリズム」(聖性とヴィジョンに収録。ロレートの聖母のように幻想なのにリアル)へのオマージュだと思います。そして、論考の最後で女占い師について述べた一文が印象的です(本の題名も「迷宮の~」ですから)。
「ムルトラが賛美したように、二人の息遣いが聞こえてきそうなこの絵の前で私たちはその『真実らしさ』に息を飲む。そして、我に返って迷路に入り込むのである。『騙されているのは誰か』と呟きながら。」
アルストピアシリーズで次に読む本は、黎明のアルストピア(ヴィーナスの誕生、岩窟の聖母他収録)と天空のアルストピア(カラヴァッジョと二人の画商:木村太郎、ベルニーニ作聖テレサの法悦他)の2冊であり、現在取り寄せ中です。3月半ばくらいには借りられると思うので、読み終わったらカラヴァッジョ関係についてコメントします。
>ガスパーレ・ムルトラのマドリガル
多分、Maurizio Marini著「Michelangelo da Caravaggio. Gaspare Murtola e la chioma avvelenata di Medusa」が詳しいのではないかと思いますが、残念ながら私も読んだことはありません。
むろさんさんご紹介の本や論考、機会があったら私も読んでみたいと思います。ありがとうございました!!
動画も調べてみたら、予想以上で驚きました(;'∀')
https://www.youtube.com/watch?v=-QOWoo32gYQ
どうしましょう?💦
ナポリの《キリストの笞打ち》やオデスカルキ・バルビ・コレクション《サウロの回心》まで出展とは驚きです😂