コルシーニ美術館《洗礼者聖ヨハネ》とネルソン=アトキンズ美術館の《洗礼者聖ヨハネ》は、もしかしてモデルは同一人物なのではないか? と思ったのは2月の旅行時だった。
※ご参考拙ブログ:https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/1ad0b5c1da03156338a11194d82dfc69
今回の展示では、その2枚が並んでいた。
左)カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》(1604-06年頃)コルシーニ美術館
右)カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》(1602-04年頃)ネルソン=アトキンズ美術館
展覧会場は作品の明暗効果を引き出すために暗くし過ぎで、両者の目元の影部分を見比べながら観察するのはかなり難しかった。なので、両者は同一モデルなのか? 私的に確信が持てなかったのが残念である
。
で、解説にはミケランジェロ《システィーナ礼拝堂天井画》人体ポーズの影響が言及されていた。同じくポーズ引用が認められるカピトリーノ美術館《洗礼者聖ヨハネ》(1602年)や、ベルリンの《勝ち誇るアモル》(1602-1603年)もだが、制作年がほぼ同じ頃なので、当時のカラヴァッジョのミケランジェロへの関心と研究が偲ばれる。
※ご参考画像:(注)展覧会には展示されていません。
カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》(1602年)カピトリーノ美術館 (注:展示されていません)
さて、続いて、プラド美術館で観たばかりの《エッケ・ホモ》とカポディモンテ美術館《キリストの笞打ち》、ボルゲーゼ美術館《ゴリアテの首を持ツダヴィデ》が並んでいた。1606年、カラヴァッジョが殺人を犯し、ローマから逃亡後の作品が並ぶ。
カラヴァッジョ「?」《エッケ・ホモ》(1606-07年頃)寄託(写真撮影不可)
で、この《エッケ・ホモ》だが、プラドと同じで撮影禁止だったので、ネット上から写真画像を借りた(汗)。写真で見ると真作かも?とも見えるのだが、実際に実物を観ると画面からカラヴァッジョらしい生気が感じられず、私的には「?」作品だと思えるのだ。カラヴァッジョ作品特有の沈鬱な空気も漂わず、美術ド素人的には保留作品としておきたい。
その「?」感を助長するのが、隣に並んだ《キリストの笞打ち》なのだった。
カラヴァッジョ《キリストの笞打ち》(1607年)カポディモンテ美術館
文句無しにカラヴァッジョの傑作のひとつである。笞打つ男の憎々し気な顔が良い
。キリストの腕の縄目のズレ跡の痣描写がリアルに痛々しさを誘う。今回のカポディモンテ特別室からの出張は素直に嬉しかった。企画側としては類似テーマ作品として並べたのだろうが、作品の質の違いが一層際立つのだ。もしかして、それを狙っていたりして??
そして右隣りには《ゴリアテの首を持つダヴィデ》が並ぶ。
カラヴァッジョ《ゴリアテの首を持つダヴィデ》(1609年頃)ボルゲーゼ美術館
ゴリアテの顔は言わずと知れた画家自身の自画像だ。シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿に「後悔反省してますからパウルス5世にお執成しを」というエクスキューズ作品である。観る度に露悪的に描いた顔に悲壮な切実感を感じてしまう。まぁ、その後もあの瞬間沸かし器的性格は治らないのだけれど(溜息)。