アカデミア美術館はヴェネツィア派絵画の殿堂であるが、数々のヴェネツィア派絵画とともに、マンテーニャやピエロ・デッラ・フランチェスカやコスメ・トゥーラ作品なども展示されている。そんな画家たち作品に混じってイタリアに縁の深いメムリンク作品も展示されていたりする。
ハンス・メムリンク《若い男の肖像》(1480年頃)
https://www.gallerieaccademia.it/ritratto-di-giovane-uomo
で、今回一番驚いたのは、なんと!ボス部屋(展示室)があったのだ!!
ボス作品は、以前、ドゥカーレ宮殿で観ていたが(近年プラドの「ボス展」で再会もしたが)、まさかアカデミア美術館に移されていたなんて知らなかったのだ!!
でも、展示室は狭く、グループご一行様が入ると混みあってしまう。彼らが去るまで外に一時避難して、また鑑賞するという、他と較べてもちょっと不便なほどこじんまりした展示室だった。それに、作品ガラス面に照明が反射するし、人は映り込むしで、写真も撮り難くかったのだよ
。
ヒエロニムス・ボス《隠遁聖者の三連祭壇画》(1493年頃)
https://www.gallerieaccademia.it/trittico-degli-eremiti
祭壇画を構成する3点の板絵のうち、中央に聖ヒエロニムス、左側に聖アントニウス、右側に聖アエギディウスを描いている。やはり妖怪たちが面白くも可愛い。
ヒエロニムス・ボス《隠遁聖者の三連祭壇画》(左側パネル下部分)(1495-1505年頃)
さて、下↓は《聖ウィルゲフォルティスの三連祭壇画》である。
ヒエロニムス・ボス《聖ウィルゲフォルティスの三連祭壇画》(1497年頃)
https://www.gallerieaccademia.it/trittico-di-santa-liberata
処刑に立ち会う人物たち、特に中央右側のいかにも悪人そうな帽子にピンク・スカートのおじさんの衣装描写に、ボスらしい色調とデザインのお洒落感があって目が楽しんでしまう。初期ネーデルラント・フランドル絵画はデテールを愛でる楽しみに満ちているのだよね。
下↓のボケ写真は《来世の幻視の多翼祭壇画》である(汗)。ガラス反射もあるが、今回、デジカメの調子も悪くて、時々Iphoneカメラを使ったくらいだった。
ヒエロニムス・ボス《来世の幻視の多翼祭壇画》(1505-1515年頃)
https://www.gallerieaccademia.it/quattro-visioni-dellaldila
ヒエロニムス・ボス《祝福された者の天国への上昇》(最右翼)(1505-1515年頃)
これらのボス作品は枢機卿を務めたドメニコ・グリマーニ(Domenico Grimani, 1461-1523年)のコレクションによるもので、グリマーニは当時最も有名なコレクターの一人だった。ジョルジョーネ、ティツィアーノ作品の他にも、メムリンク4作品、パティニール3作品、ボス3作品、ラファエッロ《サウロの回心》カルトーネ、デューラ版画、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエッロ素描も含まれていたようで、なんだかグリマーニ枢機卿の趣味の良さが伺える。
でもね、このボス部屋に何故かジョルジョーネ《老女》も展示されていたのだ!!元々ヴェンドラミン・コレクションだったし、どうしてボスと一緒なのかがよくわからない
(謎)。昔は《テンペスタ(嵐)》と並んで暗~いジョルジョーネ部屋(展示室)に展示されていたんだけどね。ちなみに、今回《テンペスタ(嵐)》は下階(1階)の「Tiziano 1508.」展の会場に展示されていた
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ジョルジョーネ《老女》(1506-1508年頃)
https://www.gallerieaccademia.it/la-vecchia
哀しいことに、もうすっかり年寄の私には《老女》がなんだか他人ごとではなく、しみじみと見入ってしまったのだった。