土曜日、五島美術館「茶の湯 名碗」展を観てきた。最初から迫力の志野茶碗「鬼瓦」や黒織部を並べたのは、さすが名碗展と銘打つだけの自信だからこそと思う。
先週の出光美術館「茶陶の源流展」で茶碗の歴史の面白さに目覚め、今回の五島の展覧会では桃山から江戸初期の名碗ひとつひとつの個性を楽しむことができた。茶道知らずの私にとって実にタイムリーな好企画が続く。今回もド素人の感想文なので、茶道をたしなむ方は大目にに見ていただきたい。
今回の展覧会は茶の湯世界が侘び茶に移った桃山から江戸前期の名碗の数々を展示したものだが、第一章は輸入された茶碗の系譜ということで、唐物・安南・高麗の茶碗が並ぶ。
まず面白かったのは唐物(明時代)の香炉や火入れを茶碗に見立てるという自由な発想により、「侘び」という美意識の柔軟性がわかったこと。要するにセンス勝負だったのね(笑)。それに、今のバリ・エスニックブームのように、当時は安南(ベトナム)茶碗のエスニック調も持て囃されたようだし、案外現代と通じるのではないか…などと思ってしまった(^^;
現代に通じると言えば、高麗茶碗が海外生産方式を取っていたこと!日本からデザイン指定をして朝鮮半島で製作されたという、まさに生産工場を中国やアジア諸国に求めている現代と重なってしまう(笑)。この輸入もの名碗の中で特に気に入ったのは、染みが面白い景色になっている雨漏茶碗「蓑虫」、フォルムも引掻き模様も可愛い金海茶碗「猫掻き」、それに呼継の技法が斬新な意匠に見えた刷毛目茶碗「白波」等々。もちろん展示作品は皆名碗揃いである。
さて、第二章が「光悦と楽家」。さすがと言うか…茶碗の持つ藝術性の醸し出す凄みにたじろいでしまった!「侘び」という美意識の研ぎ澄まされた形と色がそこにあった。利休と長次郎が創り出した楽茶碗の系譜には美意識と精神性が込められている。その後を襲う楽家代々と本阿弥家、そして雁金屋の尾形兄弟…京藝術家集団の家系は華やかで奥が深い。微妙な歪みさえ用の美として計算し尽くされたデザイン性を感じる。光悦の面白さはサントリー美術館の赤楽「朱柿」で私的に完全ブレイクしてしまい、今回、お気に入りの茶碗を選ぶことさえできないほどだ(笑)。
第三章は「京焼と国焼」。江戸時代17世紀中ごろ…京焼に野々村仁清登場!華麗な陶胎色色絵茶碗の作者として高名を得ている…との図録説明あり。今回の白眉は「色絵鱗波文茶碗」ではないだろうか?金と青緑の△鱗波模様の上に白濁釉が掛け流され、更にその上に銅緑釉が掛けられ、偶然の美の妙を楽しむ風情がある。特に碗内に流れ込んだ白濁釉が淡桜色となり、重なる緑釉の滲む様はうっとりとする美しさがある。仁清の茶碗には京の雅さが宿っているように思われる。仁清色絵茶碗は他に「鉄線花文茶碗」「七宝繋文茶碗」が展示されていたが、金と銀の線描が華麗な色絵を盛りたてている。出光の茶壷もだが、仁清はこの金銀の使い方が素晴らしい。ちなみに、この茶碗は飾り用の茶碗かもしれないということだ。ところで、今回、仁清は絢爛たる色絵だけが優れているのではないことを知った。「銹絵水仙文茶碗」の淡い墨絵的な水仙もしみじみとした味わいがあるし、「五角高台茶碗」のミニマムな呉器映しも面白かった。もしかして、これは仁清びいき?
う~ん、なんだか長文になってしまったので、仁清の後になる乾山から後はさくっと飛ばすのでお許しあれ(^^;;;。今回の乾山はあまり好きなものは無かった(恐れ多い?)。唐津が結構良く、特に斑唐津茶碗「山雀」はシンプルな釉薬色と曲線が素敵だと思った。薩摩焼や萩焼の茶碗もあったが、どうやら、五島美術館次回の展覧会はこの地方の国焼を中心とした展覧会になるらしい。これもまた楽しみである。
先週の出光美術館「茶陶の源流展」で茶碗の歴史の面白さに目覚め、今回の五島の展覧会では桃山から江戸初期の名碗ひとつひとつの個性を楽しむことができた。茶道知らずの私にとって実にタイムリーな好企画が続く。今回もド素人の感想文なので、茶道をたしなむ方は大目にに見ていただきたい。
今回の展覧会は茶の湯世界が侘び茶に移った桃山から江戸前期の名碗の数々を展示したものだが、第一章は輸入された茶碗の系譜ということで、唐物・安南・高麗の茶碗が並ぶ。
まず面白かったのは唐物(明時代)の香炉や火入れを茶碗に見立てるという自由な発想により、「侘び」という美意識の柔軟性がわかったこと。要するにセンス勝負だったのね(笑)。それに、今のバリ・エスニックブームのように、当時は安南(ベトナム)茶碗のエスニック調も持て囃されたようだし、案外現代と通じるのではないか…などと思ってしまった(^^;
現代に通じると言えば、高麗茶碗が海外生産方式を取っていたこと!日本からデザイン指定をして朝鮮半島で製作されたという、まさに生産工場を中国やアジア諸国に求めている現代と重なってしまう(笑)。この輸入もの名碗の中で特に気に入ったのは、染みが面白い景色になっている雨漏茶碗「蓑虫」、フォルムも引掻き模様も可愛い金海茶碗「猫掻き」、それに呼継の技法が斬新な意匠に見えた刷毛目茶碗「白波」等々。もちろん展示作品は皆名碗揃いである。
さて、第二章が「光悦と楽家」。さすがと言うか…茶碗の持つ藝術性の醸し出す凄みにたじろいでしまった!「侘び」という美意識の研ぎ澄まされた形と色がそこにあった。利休と長次郎が創り出した楽茶碗の系譜には美意識と精神性が込められている。その後を襲う楽家代々と本阿弥家、そして雁金屋の尾形兄弟…京藝術家集団の家系は華やかで奥が深い。微妙な歪みさえ用の美として計算し尽くされたデザイン性を感じる。光悦の面白さはサントリー美術館の赤楽「朱柿」で私的に完全ブレイクしてしまい、今回、お気に入りの茶碗を選ぶことさえできないほどだ(笑)。
第三章は「京焼と国焼」。江戸時代17世紀中ごろ…京焼に野々村仁清登場!華麗な陶胎色色絵茶碗の作者として高名を得ている…との図録説明あり。今回の白眉は「色絵鱗波文茶碗」ではないだろうか?金と青緑の△鱗波模様の上に白濁釉が掛け流され、更にその上に銅緑釉が掛けられ、偶然の美の妙を楽しむ風情がある。特に碗内に流れ込んだ白濁釉が淡桜色となり、重なる緑釉の滲む様はうっとりとする美しさがある。仁清の茶碗には京の雅さが宿っているように思われる。仁清色絵茶碗は他に「鉄線花文茶碗」「七宝繋文茶碗」が展示されていたが、金と銀の線描が華麗な色絵を盛りたてている。出光の茶壷もだが、仁清はこの金銀の使い方が素晴らしい。ちなみに、この茶碗は飾り用の茶碗かもしれないということだ。ところで、今回、仁清は絢爛たる色絵だけが優れているのではないことを知った。「銹絵水仙文茶碗」の淡い墨絵的な水仙もしみじみとした味わいがあるし、「五角高台茶碗」のミニマムな呉器映しも面白かった。もしかして、これは仁清びいき?
う~ん、なんだか長文になってしまったので、仁清の後になる乾山から後はさくっと飛ばすのでお許しあれ(^^;;;。今回の乾山はあまり好きなものは無かった(恐れ多い?)。唐津が結構良く、特に斑唐津茶碗「山雀」はシンプルな釉薬色と曲線が素敵だと思った。薩摩焼や萩焼の茶碗もあったが、どうやら、五島美術館次回の展覧会はこの地方の国焼を中心とした展覧会になるらしい。これもまた楽しみである。