眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

途中下車~前途有望

2012-11-14 19:01:43 | ショートピース
制服のままかけつけた人もいた。「今、何しているの?」真新しいスーツを着ている人も見えた。一人が質問に答え、続いて二人目が答えたので一つの流れができてしまう。途中駅で降りると人のいない遠方を見た。青いクレヨンで変わらない空を描いた。描かなかったところだけが雲になる。#twnovel

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パン職人

2012-11-14 06:27:47 | 短歌/折句/あいうえお作文
反響を
四方に求め
夜明けから
口先だけが
人間になる
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泥棒猫

2012-11-14 00:52:09 | 夢追い
 窓を閉めていても、猫の争うような声が車内まで聞こえてくる。ひと時も休まる時はなくそれは続き、ようやく終わったかと思うと今度は前よりもより激しさを増して始まるのだ。鋭い爪は夜一面を引っ掻き回し、やがて粉々に砕いてしまうだろう。逃げ場はない。ただじっと待ち続ける以外に最良の選択はなかった。
「猫は恐ろしい」
 恐怖をほぐすために、言葉にしてみる。

 受付の席は不在になっていて誰に言えばいいのかわからなかった。曖昧に列を作りつつある踊り手のおばあさんに、座布団が欲しいと言うと、おばあさんは少し困ったような顔をしながらも個人的に小さな花柄の座布団を持ってきてくれたので、それを使うことにした。幾つもの部屋があったし、どこを使ってもいいのだったが、女が1人気ままに寝そべって本を広げている様子を見ると、そこに入って邪魔をすることは何か気が引けてしまう。複数の人によって使われている部屋に入ろうとするが、どうも彼らはみな知り合いのように見え、その密集は家族的なまとまりのようであって、その中に1人入っていくこともまた気が引けてしまう。居場所はない。
「サフランはないの?」
 ちょうど僕の近くに野菜が置いてあって、おばあさんと女の子はそれを見つけて部屋の奥へと入ってきた。
「あるじゃないの」
 大きく育ちのいい野菜もたくさんあったのに、女の子は小さくまとまった野菜を手にし、これがいいと言う。
「大きい葉は怖がってね」
 おばあさんは女の子にではなく、誰かに向けそう言ったけれど、僕は何のことかわからず声を出さずに笑った。大きな一歩を交互に踏み出しながら、女の子はおばあさんの背中にくっついて行った。

 枝が深い谷から絡みついてくる女の息の向こうから、足音は近づいてきて、ちょっと待てと言う。孔雀を身につけたような男はマジシャンのように現れて、双子の兄の方だと言うが、僕は弟のことを何も知らずどうしていいかわからなかった。
「女を渡せ」
 階段レースで勝負することになった。普通に下りるのかと訊くと男はそうだと答えたのでそれなら勝てると思った。レースが始まると男は2段飛ばし3段飛ばしを当たり前のように駆使し時を稼いだ。やはりそうか。男は踊り場に留まることもなく、手すりを乗り越えると階から階へと段そのものを飛ばして時を稼いだ。やはりそうだった。その時、僕は男の下り方に昔の自分を重ね見ていた。それ故に負けることなど少しも考えられないのだった。男は調子のいいうそつきに過ぎない。噴水広場に到着した時、勢いよく打ち上げられる幾筋もの水の頂点で、猫はサーカスのように踊っていた。
「猫は恐ろしくないのだろうか」
 男は言った。同時にレースを終えた2人は、互いを認め合った。

 ブラック団が部屋に入ってくると手荒い真似をすることもなく、ひと時停留した。静かに時を置いて出て行ったが、何かを盗まれたことは胸の真ん中がすーすーすることでわかった。
「ワゴンだ!」
 自分たちの一部であるかのようにワゴンを一緒に持ち入って、その上に色々と載せておいた。猫のまどろみのように時を振りかけるとそれはワゴンの一部のようになった。そうしておいて一緒に持ち帰ったのだ。
「物静かにだまされてしまったというわけだ」 
 ドアを開けるとすっかり暗黒で、町が盗まれた後だった。硯の中に、浅く水が溜まっているのが見えた。

 朝8時と同時に猫は僕の頭に乗り移ってそこに居住する計画を立てていたが、10分前から僕はもう身構えていた。
「とても無理」
 突然面白いことを言って油断させておいて、その隙に人の頭に乗り移るなんてとても自分にはできないと猫は打ち明けた。猫があきらめた瞬間、僕の頭に起きたざわめきの中から黒猫が飛び出してきた。恋猫ではなく、恋敵の猫だった。2匹は雲の行方を占いながら、朝の中に飛び立ってゆく。

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