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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【振り飛車note】振り飛車のテーマ

2021-02-18 03:19:00 | 将棋の時間
 時間に追われ飛車を打つ。打ち下ろさなければ始まらない。しかし、即座に角を打たれて飛び上がる。よりによって打った場所が悪かった。「痛い!」叫んでも手遅れだ。飛車か玉を取られてしまう。
 角が怖い。少し気を抜いていると思わぬところから飛んでくる。飛車は当然のように強いが、本当に恐ろしいのは角の方だ。
 だから、居飛車党はやたらと角の頭を狙って攻めてくる。
 角をどのようにして守り、さばき、ぶった切るか。それが振り飛車の基本テーマとなるだろう。

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ハッピー・スタンバイ(最高の幸福)

2021-02-14 10:51:00 | 将棋の時間
「まずはメンバー紹介から。

 センター玉。いつもは囲いの中にいるけど、実は最強の守り駒。
 はい、その隣は金。いてくれるだけで心強いぜ!
 はい、叩かれると弱いけど、攻撃の主軸銀将よろしく。
 続いて曲者の桂ちゃん今日も速攻たのむよ。
 まっすぐ前しか見ていない、縦だけなら飛車と一緒隅には置けないぜ、香ちゃん!
 はい左サイド。いつも遠くを見据えてる角さん。今日も華麗なさばきよろしく。
 誰もが恐れる大駒だ。はいみんな大好き飛車! 龍になって大暴れしてくれ。
 前列一直線に並ぶのは、このゲームの主役。将棋は歩からだ!

 そして、俺は人間。奇跡を見届けるものだ」

「それでは準備が整いましたので対局を開始してください」
 記録係がゲームのはじまりを宣言する。
(準備が整った時ほど幸福な瞬間はない)

 俺はゆっくりとお茶に口をつける。
 まだ初手は指さない。無理に進める必要はないだろう。
「前進させぬ駒がある」
 そう。すべては俺の指次第だ。
 もう一度、俺は湯飲みに手を伸ばす。
 胸の中がじんわりと熱くなっていく。
(いつでもはじめることができる)

 俺は薄々気づいている。
 いま目前にある初形こそが一番美しい。
 俺たちはこれから長い時間をかけて崩れていくのだろう。
 それこそが人間にできるライブというものだ。

「さあ、みんな! ついてきてくれ!」

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恋する棋士

2021-02-12 16:06:00 | 将棋の時間
 君はよく考える人だ。若い頃の私は今と比べれば考えることができた。それにしても君にはとてもかなわない。暇さえあれば君は将棋のことばかり考えている。暇という概念はもはや存在しないのだろう。言われてやる努力なんて続かない。本当に強いのは自然と向かう者。つまりは恋する者だ。恋は誰にも止められない。強くなるかどうかは恋するかどうかによって決まるのだ。すぐに醒めてしまうような柔な恋じゃない。終わりのみえない探究の恋だ。恋する者は強い。そして恋することによってどんどん強くなって行くのだ。もはや手に負えないことは明らかではないか。
 銀を出る手、香を打つ手、馬を引く手、歩を叩く手……。次の一手は、君にいい手ばかりがある。つまりは君が必勝だ。私はもうとっくに倒れている。それでも君は先の先を考えているんだな。私に勝つくらいは簡単すぎる。すぐに終わらせることもできるのに、未来へ力を溜めている。
 若い頃に比べ私は物わかりがよくなりすぎたようだ。
 さあ、投了の準備はできたぞ。
 私は君の敵じゃない。

「失礼します」

 そして、君は席を立った。
 私はゆっくりと身支度を整えながら勝者の帰りを待っている。

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将棋ウォーズのテーマ

2021-02-05 02:56:00 | 将棋の時間
・序盤は難しい

 将棋の初手はだいたい何を指してもいいらしい。
 角道を開けるか飛車先を伸ばすかというのは、常識的な一手。定跡へとつながる道筋に過ぎないようだ。端歩を突いてもいい。真ん中の歩を突いてもいい。いきなり玉を動かしても、決定的に悪くはならないのかもしれない。0から自分で考えることは大変だ。だいたい上手い人の真似をする方が上手くいく。真似ているつもりでも、ちょっとしたところで差がついてしまう。時に、序盤の差は決定的だ。勝ち目のない終盤にいきなり突入することだってある。終盤は玉に向かっていけばいいが、序盤はいきなり寄せを描くというわけにはいかない。だから難しい。


・3分切れ負け

 時間がない時には、3分切れ負けルールが最適だ。接戦になったとしても必ず6分で終わるというスピード感は素晴らしい。その分、考えている時間はほぼないと言える。とにかく多少間違えたとしても、手を止めずにぽんぽんと指していくことが重要だ。考え込んでしまっては、すぐに時間がなくなって形勢がよくても時間切れになってしまう。そうは言っても大きく間違えすぎて形勢を決定的に損ねると、時間があっても勝てない。(だいたい指し手に困るほど悪くなると時間も減っていくものだ)だいたい時間で勝とうとして勝てるものでもないし、そもそも上達志向の人からすれば無意味でもある。直感的にどれほどの精度を保てるか。それが3分切れ負けのテーマだろう。(仮にぼろ負けになったとしても短い間に教えてもらったと思えれば意味のある敗北だ)


・中盤は難しい

 中盤の難所と言うほど将棋は中盤が難しい。よくなる順があるはずなのに、具体的にどう指していいかわからない。ここで上手い手を指せば勝てるはず。そういう局面では、じっくり腰を落として考えたいものだ。しかし、将棋というものは、たくさん考えたからといって必ずいい手が指せるというわけではない。むしろ考えた末に悪手を指すことも多いくらいである。どれだけ考えても自分の実力からは導き出せない。そういう手も存在する。短い持ち時間の将棋ウォーズでは、どんな難しい中盤でも悩んでいる時間はない。


・10分切れ負け

 じっくり指したい時には、10分切れ負けルールを選択する。決して長いとは言えないが、3つの設定の中では相対的には長いと感じることができる。難しい局面で何度か手を止めて1分ほどの長考!をすることができる。また、3分切れ負けではすべての手をほぼノータイムで指さなければならないが、10分切れ負けではそれに比べればまだ熟考!することができる。時間の使い方にメリハリをつけられることで、持ち時間が減っていく切迫感を体験することができる。多少は考えられる(考えなければならない)が十分ではない。このじりじりとした環境が、将棋脳を鍛えるのではないだろうか。


・終盤は難しい

 詰将棋に自信がある人は終盤に多少は自信があるのではないだろうか。しかし、実戦の終盤は詰む詰まないの単純な話ではないし、局面によっては複雑極まりない。30秒の秒読みでは、トッププロであっても間違えることがある。普通の人間であれば普通に間違いまくるのである。ちょっとした手順の差で寄っている玉が寄らなくなる。方針の迷いからミスを連発する。一度自陣に手を戻せば難しいが、下手に攻めて必敗になる。それが早指しの終盤の日常だ。終盤を甘くみてはならない。失敗を繰り返しながらも、直感力を鍛え感覚を明るくしていくことで、精度を高めていきたいものだ。


・10秒将棋

 ちゃんと将棋を指したいなら(最後まで指すなら)切れ負けでなく、10秒将棋を選ぶべきだろう。これには1局にかかる時間が可能性としては無制限でよいという条件がつく。早ければ5分で終わるかもしれないが、非常に競った場合、可能性としては30分を超えたり、持将棋模様となり1時間を超えるということも考えられる。純粋に直感を鍛えられ、必ず詰みまで指したいという時は、これがベストの選択だ。(切れ負けでは、完封を狙うよりは踏み込みがちだ。長期戦というスタイルに向かない。詰まされている方がルール上勝ってしまう。様々な特殊な事情が働く。将棋というルールの半分くらいが「時間」に持って行かれる。ウォーズにはまだフィッシャーという設定はないようだ)
 一番実力が出やすいのは、この10秒将棋かもしれない。よほど直感力が優れていないと、10秒で正着を指し続けることは不可能。どこで空中分解してもおかしくはないし、大逆転もあり得るだろう。


・将棋は難しい

 序盤、中盤、終盤。
 どこを取っても将棋は人間には難しすぎる。
 難しいから間違えてしまう。
 難しいから考えることができる。
 考えればよくなる道筋がありそうだ。
 そう思って考えることは楽しいことだ。




・あなたは本当に生きた人間か

 顔の見えないユーザーたち
 画面の先に見えるアバター
 noteの街の住民たち
 疑い出せばきりがない
 あなたが人間らしく思えるなら
 きっと人間だ


・わからないというサスペンス

 次はどんな相手がくるだろう
 どんな手が飛んでくるだろう
 好きな曲を自分で再生することもできるけど
 ラジオからそれが流れてきた瞬間の
 あのわくわくする感じ


・あなたは何のために指すのか

 チャンピオンになりたいのか
 それとも
 頭の体操、指の運動
 気晴らしのため?
 だったら勝ち負けなんて関係ない
 強くならなくたって構わない
 自分の好きなように指せばいいじゃないか

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時代対局 ~こんな対局あったらしいな

2021-02-03 01:52:00 | 将棋の時間
 屈んだ拍子にワイシャツのポケットから鉛筆が落ちた。おかしなことに畳の隙間に挟まって抜けなくなった。無理に引くと逆に引き込まれ深い穴の中に落ちてしまった。 
 気がついた時にはもう対局が始まっていた。
 タブレットがない!
 机の上には対局時計と記録用紙、それに鉛筆と消しゴムだ。
「指したよ」
「あっ、すみません!」
 僕は慌てて棋譜に4三銀と書き込んだ。
(先生?)
 棋士の先生は2人とも30年若返っているようにみえた。

「銀でっか、なるほどー。ふぁー」
「何やあくびか。眠いんかいな」
「そうや。最近寝不足やねん」
「ほー。そりゃまたなんでや」
「ゲームや」
 先生たちは手を動かさず口ばかり動かしている。
 のんびしとした朝だった。

「何のゲームや」
「穴に入ったり宝箱集めたりする奴や」
「何やそれ。面白いんかいな」
「これがなかなかおもろいんや」
「将棋のゲームはせーへんのか」
「コンピュータ弱すぎるからな」
「確かにな。ようわからん手指しよるやろ」
「そうや。誰か教えたらなあかん」
「まあ、人に追いつくには100年かかるわ」
「100年はないわ。あんた読みが甘いんちゃう」
「俺は一生負けへんで」

「わかったぞ!」
 これは過去の対局なのだ。
 まだソフトより人間の実力が上だった時代に、僕はタイムスリップした。そして、古きよき時代の対局室で記録を取っているのだ。
「君。私の手がわかるのかね」
「はっはっはっはっはっ!」
「失礼しました」
 お2人ともとても優しい。

「時に、メシとかどないしてますの?」
「外食やな。作るのもええけど片づけとか面倒やん」
「ああ、確かにな」
「器ごとレンジでチンして食べたら捨てられるみたいなのあったらええけどな」
「あほ言いなはれ。そんなもんあるわけないやん」
「へーくしょん!」
 マスクもつけずに先生は遠慮ないくしゃみをした。

「風邪でっか?」
「風邪や。熱もありまんねん」
「へー。大変でんな」
「まあ微熱ですわ。37.5度くらいやな」
「病人っぽくはないね」
「マスクでもしましょうか」
「マスクの棋士でっか」
「誰がやねん!」
「まあ指しとったら治るわ」
「そうや。将棋に勝つのが何よりの薬ですわ」
「ほんだらここは玉入っときましょ。勝たせませんでっとな」
 ようやく手が動いた。
 僕は9九玉と棋譜をつけた。
 今は穴熊黄金時代なのか……。

「あんた穴熊好きやな」
「みんな好きやねん」
「堅めりゃええ思うてませんか」
「思うてますよ」
「ほー、熊か」
「なんやあんたも入るつもりか」
「まあそれもあるわな」
「遠慮せんでもええよ」
 午前中は主に雑談と近況報告のような時間だった。
 本格的に駒がぶつかるのは午後からのようだ。
 一昔前は、こんなのんびりしていたのか……。

「ほな、もうメシやな」
「もうそんな時間か」
「休憩に入れてくれる?」
「はい」
「よし、昼メシ行くかー」
 対局時計を止めて、僕は鉛筆を置いた。

「昼メシ、君も行くか?」
「えっ?」
「近くにええラーメン屋ができてん」
「あっ、はい」
 いー時代やん!

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シャドー・ナイト(大逆転将棋)

2021-02-01 16:59:00 | 将棋の時間
 取りたいところをがまんしてじっと金を引く。辛抱の一手が続いていた。さて、次は取るのかというとなかなかそうもいかない。相手は更に厳しい指し手を突きつけてくる。手に入れたいところをがまんして、じっと歩を謝らなければならないのだ。辛抱の時間が続く。
 取りたい駒(取れそうで取れない)があふれている。前に出たい駒がつかえている。自分の手番は一手置きにくるはずなのに、私は自分の本当に指したい手をしばらくがまんしている。耐えているのに笑っていられるのは、楽しみを多く残しているからだ。今だけ厳しい手なんて、その内に燃え尽きてしまうだろう。
 相手の攻めは一手も緩むことなく、辛抱の末に自玉は詰んだ。

「負けました」
 その瞬間、相手の頭も垂れた。
 私は待望の手番を生かして、反撃の一手を繰り出した。

「投了したのでは?」
 投げたのは影武者だ。
 詰んだのは影武者の玉だった。

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考える人(人間鑑賞)

2021-01-31 10:41:00 | 将棋の時間
 香り高き木目を挟んで男が二人、視線を落として静止している。背筋が傘のように伸びて運命を占うかのようだ。最善を追いながら互いに一手を損して、繊細な詩を結び合わせる内に朝にみた局面に後退していた。午後を大きく回ったというのに、ぶつかり合うものは何一つなかった。

「なるほどこれが人間の見本か」
(だいたいわかった)

 短い鑑賞を終えてカブトムシは窓辺を離れた。もう夏が待ち切れないということらしい。
 一定のリズムを刻むセンスの音に溺れて、猫は記録的な昼寝に入った。臨時の記録係が、補足情報として猫の寝息を棋譜に加えた。一手も進まない。やがて、日は落ちた。封じ手のため名人が立ち上がると猫は寝返りを打った。まだ夢の途中だ。

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ウォーズのリズム~お前が先手だ

2021-01-27 21:24:00 | 将棋の時間
 始まる感じがわくわくする。始まったらものすごいスピードで終わりに向かって行く。相手が20秒かたまっている。何かとてつもないことを企んでいるのだ。「叩きの歩!」ウォーズが手筋を叫んでいる。盤面が光る。もう時間がない。終わりに向かって行く感じがドキドキする。「くやしいじゃろう」負けても戦いを続けることができる。「お前が先手だ!」始まる感じがわくわくする。始まったらものすごいスピードで終わりに向かって行く。始まりと終わりの予感に挟まれて、気がつくと何時間も抜け出せなくなっている。「桂頭の銀!」どんどんどんどん♪
 私たちはウォーズのリズムに乗せられているのか!

「叩きの歩!」
 痛い! 腰が痛い!

 もうすぐ仕事がなくなってしまうかもしれない。
(いつかはそうなると決まっているのだ)
 なくなったらなくなったで覚悟を決めるしかない。気持ちを切り替えるしかない。なくなってしまいそうだから、もやもやとしてしまう。

 なくならない仕事なんて、この世にあるのだろうか。
 世の中は変わって行く。働き方だって変わって行く。
 そして、すべては終わりへと向かって行くのだ。

「お前が先手だ!」

 終わりへと向かう、終わりなき戦い。
 これは夢なのだろうか……。
 振り飛車は迎え撃たれる。
 だけど、今度はごきげん中飛車で行ってみるか。

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ウォーズの共演者

2021-01-26 10:23:00 | 将棋の時間
「真夜中の対戦者たち」

将棋ウォーズにログインすると
驚くほどのスピードで手合いがつく
相手が人間だと感じれば
どうしてこんなに楽しいのだろう


「倒してみせる/いい将棋をつくる」

3分切れ負けルールで、将棋になるためには
互いの協力が必要だ
戦う意思、つくる意識がなければ
まともな将棋にならないだろう
詰み/終盤までたどり着けることが
まずは大事じゃないだろうか


「6分で終わるドラマ」

寄せ切れるかどうか
ギリギリの勝負
時には作ったような結末になったり
最後の1秒にドラマがある


「攻撃の孤独」

仕掛けなければ仕掛けられる
仕掛けなければ備えられる
仕掛けたところで二の矢がない
孤独と隣り合わせの攻撃


「逞しくなりたい」

よく逆転負けをする
寄るはずのない玉を寄せられたりする
穴熊もいいけれど
受けも強くなりたいなら
色々試してみるのも手


「困ると時間も使うもの」

寄せ切ることは大変だから
時間でも競っていることは大事
時間で勝とうとするのではなく
上達を目指すなら指し手を追究すること


「ミスはつきもの」

ミスをした時に
リカバリーする力をつけたい
出だしを間違えているのに
ちゃんと正しい文字にしてしまう
そんな人がいた
辻褄を合わせられる人になりたい


「AIが解放した序盤」

色々やってくる人
無茶苦茶にやってくる人
ああ 好きにやっていていいな
(自分もそうありたいと思う)
探究している感じがする

考えずに生きることもできる
勝つことだけを考えると
あまり「冒険」はできなくなる
一局の中で指せる手は決まっている
(本当に自分の選べるのは何手だろう)
なぞるのと自分で考えるのとでは
「充実感」が違うのだ
それは疲労の度合いでもわかる

自分が何をテーマにしているか
それによって選ぶ手は決まってくる


「未知の局面で悩みたい」

本気で考えたい時には
少し長い10分切れ負けルールを選びたい
切迫していく時間の中で
どう指していいかわからない
局面を乗り越えようともがくことは
将棋の面白さの1つではないだろうか


「ファッション」

(やたらと右四間飛車ばかりとか)
流行り廃りだけではなく
自分のスタイルを持っている
人は「ハート」が強い
好きなことは繰り返せる
(だから強いのだ)
食べること、眠ること、生きること
好きでないとやってられない


「序盤が実は難しい」

終盤は難解だが
上手い人のをみたり、実戦を積んだり
詰将棋を解いたりすることで上達する
序盤はあまりにも手が広すぎる
定跡は参考になるが
うろ覚えで指して失敗することも多い
(失敗を恐れずいこう)


「なるほどは上達の秘密」

現代では難しい定跡書に頼らずとも
YouTubeで学ぶこともできる
四間飛車で棒銀を迎えるとしたら
山口さんの講座などは
とても参考になるはずだ
隅々まで理解することは難しくても
部分部分で
「なるほど」と思える瞬間があれば
それは定跡の急所を理解した証だ
無理に覚え込もうとするよりも
「なるほど」を獲得していく方が
よほど応用が利くのではないか

AIソフトを活用する
という手もあるだろうし
いずれにせよ
教わったことをただ「受け取る」のではなく
自分なりに吸収していく姿勢が大事だ



※『将棋ウォーズ』……ネット対戦アプリ

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偽の封じ手

2020-11-27 07:12:00 | 将棋の時間
「封じ手は……」

 えっ?
 読み上げられた一手を聞いて名人の表情が変わった。手元に引き寄せた図面を見て、表情は一層険しくなった。
「局面が……」
 どうも局面が間違っているようだ。
「あなたは……」
 挑戦者も事の異変に気づいた。
「別人だ!」
 局面も封じ手も夕べから引き継がれたものとは違い、勝手に創作されたものだった。男は少し肩を落として自分の非を認めた。
「私の作った定跡を名人戦の大舞台で指させてみたかった……」

「待った!」
 その時、襖を開けて正立会人が入ってきた。
「前説はそこまで」
「負けました」
 偽立会人が頭を下げて退席した。

 正立会人が封筒に鋏を入れ、角まできたところで止めた。切り落としてしまうとその部分が下に落ちてしまう。それを拾うのは一手無駄である。細かいところまで配慮を行き届かせることも、正立会人の務めであった。2枚目の封筒も同じよう開封して、中身を取り出した。いよいよ名人戦最終決戦、2日目の対局が始まろうとしていた。名人は息を止めてその瞬間を待っていた。挑戦者は眠るように目を閉じている。

「封じ手は……」
 

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セミファイナル(棋は対話なり)

2020-11-20 00:44:00 | 将棋の時間
「昼飯何食ったんだ?」
 そう言いながら銀をぶつけてくる。
「何でもいいだろう」
「カツ丼か? お前、俺に勝つ気か?」
「当たり前だ」
 少し気分を害しながら私は同銀と応じた。
「俺に勝たせろ。それが正しい結果だ!」
 と桂を跳ね出してきた。
「何を言うか」
 私は桂先に銀をかわした。

「お前じゃキングは倒せない。だから俺が勝つべきなんだ。俺はお前よりも先を見据えてるんだ」
「うっさいな。決勝なんか関係あるか」
 目の前の対局に集中すること。それもできない奴に負けるわけにはいかない。
「読みの深さが違うんだよ」
 失礼極まりないことを言いながら、自陣角を放った。
 うん? 何か意味わかんない。
 私は端歩を突いて様子をみることにした。

「はあ? お前の手、何か眠たくなるな」
「ああ、何か合わないな」
 もういい加減黙ってくれないかな。
「催眠術か?」
「催眠術じゃねえよ」
 駄目だ。反論するほど自分のペースが乱れてしまう。

「将棋を指してくれよ!」
 敵は反対側の桂も跳ね出してきた。
 第一感それは悪手だ。
 正しく指せば必ず私が勝つだろう。
 そうとも。彼の助言に従おうじゃないか……。
 私は雑音を封じて(将棋を指す)ことにのみ集中するのだ。
(舌戦の中で幸いにも棋士の本文に目覚めることができた)

「ドブネズミかよ」
「蠅が止まるぜ」
 読みの対岸でぼやく声が時々聞こえてくる。
 今の私にはもう関係のない話だ。
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leave me alone(駒犬の間)

2020-11-11 11:27:00 | 将棋の時間
 少し困った顔をしていると優しい人が寄ってくる。
「どうしたの?」
「……」答えがあるなら苦労しないだろう。
 頭を抱え込んでいると親切な人が近づいてくる。
「いい薬があるよ」
「大丈夫?」
「いい本があるよ」
 ああ。どうしてみんな優しいの!
(僕はもう少し独りでいたいのさ)

「駒犬の間へ、どうぞ」
「えっ?」
「思う存分考えて。誰も責めないから」
 立会人に導かれるままに僕は襖を開けた。
 向こうの座布団にも人がいる。
「あれは?」
「四枚堂八段だよ」

「僕独りじゃないの?」
「大丈夫。盤の向こうの人は何も干渉しないから」


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西日の千日手

2020-10-26 16:58:00 | 将棋の時間
おじいちゃんの部屋は
特別離れた場所にあり
いつでも西日の中にあった

僕が右に銀を繰り出すと
おじいちゃんは金を寄せた
ならばと左に銀を繰り出すと
おじいちゃんは金を寄せた
同じ手順が十回以上続いた

おじいちゃんは
僕に似て意地っ張りだ

攻略を図れば防御を固め
どこにも隙を作らず
突破口を与えてくれない

銀を繰り出せば金を寄せ
目先を変えてもついてくる
譲れない中盤に
僕は数え切れない銀を繰り出した

苦い顔をしたおじいちゃん

「まいった」

突然
小さな声で
負けを認めた
(まだ駒もぶつかっていないのに)
だから局面はずっと止まったままだ

おじいちゃん
お腹空いたんか

あれは千日手だったのに
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あー、なんだ、そんな手か

2020-10-22 02:21:00 | 将棋の時間
「……すぎてみえない手」

 例えばそれは素朴すぎてみえない。当たり前すぎてみえない。間近にあるけれど、みることができない。みえない手を読むことはできない。
 そういう時には一定期間、目を離してみることだ。
 穴があくほどに睨みつけたからといって詰み筋は湧いてこない。時には振り出しに戻る勇気を持ちたい。
(問題が間違っているのでは?)
 一見単純な図形で行き詰まったら、問題を疑う場面も出てくるだろう。そんなケースがないとは言えない。しかし、確率的には低い。
 調子の悪い時には、単純な一手がみえないのだ。


「詰将棋慣れした人の死角」

・取る、取り返す、俗手

 詰将棋が上達するにつれて捨て駒の手筋をたくさん吸収する。鮮やかな捨て駒の醍醐味! それにばかり慣れすぎると、逆に普通の手がみえなくなってしまうことがある。
(詰将棋は捨て駒ばかりではない)
 それを理解しておかないと読者の心理を逆手に取った問題に苦しんだり、実戦でも無駄に捨て駒をしすぎて寄せを誤ることがある。
~正確な寄せとは、捨て駒(軽手)と取る手(俗手)との正しい組み合わせである。~

・合駒請求(合駒を打たせて取る手)

 実戦では当たり前に現れる合駒請求。大駒や香で王手をかけて「さあ、合駒はどうしますか」という手だが、詰将棋となると妙に泥臭く感じられる。(あるいは面倒くさい)特に実戦型の場合、意外にみえにくくなるのではないだろうか。しかし、これも詰将棋を攻略していく上で、決して避けて通れない筋である。

~合駒請求の効果…持ち駒を変える、増やす、玉位置を変える~
 合駒請求ができるのは大駒と香のみ。それが持ち駒にある場合は、視野に置こう。「もしももう1枚何かがあったら、持ち駒がある駒に変わったら……」そうしたIFを描くことも大切な姿勢となる。

~狙え! 伸びた歩の背後~
 これは実戦での応用範囲も広いが、一番安い歩の合駒が使えないということは、守備側にとって致命的弱点になる場合も多い。
 守備の歩の後ろのスペース、または底歩が打ってある筋などは特に狙い目なので常に意識しておきたい。


「手順の死角」 人間的思考の癖・弱点

 人間の思考(感覚)には癖がある。(これは個人差も大きい)
 感覚を磨くことによって、あらゆる手の中から考えなくていい手を最初から除外することができる。その働きのおかげで時間や体力を節約できるし、上級者ならばその感覚は80%以上正しい。
 しかし問題は残りの20%だ。
 基本を超えたところに正解がある場合、普段の効率的な思考にストップをかけなければならない。一連の流れの中に疑問を挟まなければならない。(優れた感覚は、厄介な先入観になり得る)

~実は一手前に好手があった~
 1つのブロックを必然の手順として、その局面が不詰めだったとする。通常はそれで読みを打ち切ってしまう。しかし、その一手前に好手があって詰むとしたら……。必然を壊す発想がないと、その一手にたどり着くことは難しい。それには「ひょっとしたら……」というIFの閃きも必要かもしれない。

~捨てた次は取り返したい、捨てた次は押さえたい~

 捨て駒は寄せを絞る手段/手筋である。しかし、駒を捨てるというのは、拠点を失うという側面がある。有効だと知っているからできるものの、捨てることに不安はつきまとう。捨てることは、どこかで取り返すこととセットになっている。拠点を手放した次には押さえたくなるのが自然な感覚(心の働き)ではないだろうか。
 捨てて、捨てて、(ここも捨てるのか!)
 捨てて、捨てて、取り返さず、(逆サイドから王手か!)
 常識的なリズム、(自分の中の)スタンダードなリズムからちょっとずれたところにある好手/妙手順というのは、なかなか発見しにくい。
 そうした意外性のある筋にも対応できるようになってくると、詰将棋のレベルは数段アップする。変化のなさそうなところにIFの目を光らせることも大事である。


「親しい仲にも礼儀あり」

 上達することは慣れることだ。
 慣れることは色々なことを飛ばすこと。一つ一つ考えていたこと、まっさらな気持ちで当たっていたことを、無意識の内にやってのけることだ。しかし、自然にできることと疎かにすることを混同してはならない。
 初めて駒に触れた時はどんなだった?
(はじめの道はどんな風に歩いた)
 どんな時も初心者の心を忘れたくないものだ。
 そして、謙虚な姿勢で盤面をみつめてはみませんか。

「お願いします」
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詰将棋イマジン(邪魔駒消去)

2020-10-18 10:49:00 | 将棋の時間
「IFを大切に」

 第一感の手がどうも上手く行かない。
 一通り考えてみても詰む形がみえてこない。
 困ったものだと局面を眺めているとふと、
「もしもこの香がなかったら……」
 何かが変わりそうなのだけどな……。
 問題に行き詰まった時には、そのような発想がとても重要になる。現局面から少しだけ何かを変えた局面。IF的発想を働かせて、今はない形を想像することによって、道が開ける。
「もしも……だったら、……なのにな」
 それがすぐに解答につながらなくても構わない。
 このような形になれば詰むかもしれないと閃くということは、1つのストーリーをみつけたということである。(詰将棋を解くことは物語をみつけること)


「攻め駒は多いほどよいとは限らない」

 これはサッカーなどにも言えることだが、戦力というのは数の他に効率を重視しなければならない。味方同士が重なってシュートが打てない、ドリブルのスペースを潰してしまったということはよくある。他のどんな競技、仕事においても同様だ。人数をかけたから上手く行くということはない。意思の疎通に手間取ったり、ポジションが重なって渋滞してしまっては、かえって効率が悪くなる。指し将棋で言えば相談将棋などがいい例だ。チームを組んだから強くなるか、100人が相談したから強くなるかと言えば、そうはならない。長所だけを融合できれば上手く行くかもしれないが、実際には方針が分裂し、ちぐはぐになってむしろ弱くなる可能性さえある。
 詰将棋の中で効率の重要性を理解する機会になるのが「邪魔駒」の存在である。

「邪魔駒消去の手筋」~攻め駒がスペースを潰している
 ここに攻め駒の香がなければ、桂を打てるのにな……。
 発見したIF/ストーリーを実現させる道を探る。
 (なかったら)と言っても、実際にはあるのだから、それはどうしようもないようにみえる。しかし、詰将棋には捨て駒の手筋がある。

「捨てる捨て駒/取らせる捨て駒」
 盤上の駒を捨てる(消す)には2種類の方法がある。
 1つは捨てたい駒を動かして捨てる方法。(基本の方法)
 配置上自らは王手として動けない駒にはもう1つの方法を使う。他の攻め駒と相手の玉の力を借りて、流れの中で玉に取ってもらうのだ。
(邪魔駒が消えたらもう一度玉を呼び戻す)
 捨てる捨て駒と取らせる捨て駒の手順を組み合わせることによって、IF発想の形(邪魔駒を消去した局面)を作り出すことができる。
「もしもこの香がなかったら……」
 という局面を実現させて、香がいた場所に桂を打つスペースを生み出す。
 これが詰将棋の邪魔駒消去の物語である。


「IFの発見(狙い)が先に必要」

 1つの香を消し去るためだけに、多くの犠牲が払われた。
 それはおよそ合理的ではない。
 無意味にさえ思える手順にたどり着けるには、先に狙いをみつけていなければならない。IFの閃きがあってこそ、複雑な手順を発見することができるようになるのだ。
 詰将棋は捨て駒が活躍するパズルである。
 しかし、ただ捨てるのではなく、捨てる先にビジョンが描けていなければならない。


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