長尾たかしの・・・未来へのメッセージ

自民党衆議院議員長尾たかしのブログ。平成11年からネット上で情報発信を継続。サラリーマン生活を経て政界へ。

議員定数削減、実は「国民への一番お気楽なご機嫌伺い」です。

2013-05-07 08:36:17 | 国会
いきなり挑戦的なタイトルですが、定数削減をすべきではないと申し上げるつもりはありません。ただ、定数削減のを唱える背景について考えてみたいと思いました。それは、「国会議員の数を減らすと、政治は良くなりますか?」という読売新聞(ヨミウリオンライン) 5月2日(木)19時0分配信記事が目に止まったからです。

私も民主党時代、比例定数80削減を訴え、今もその方針は正しかったと思っています。ただ、以前ブログに記したように、
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(略)私も最大4つの委員会を掛け持ちした事がありますが、掛け持ちをしますと審議日程により全ての委員会に関われません。差し替えと言って代理を頼むのですが、この間は自分としては一旦空間となり、後でフォローを受けなければなりません。議員の少ない政党の場合、全ての委員会を網羅出来るような国対運営が叶いません。何処かが歯抜けになります。議員ひとりでの掛け持ち委員会所属には限界があります。

そんな状況下で議員定数が減れば国民によって選ばれた議員の委員会審議時間が減り、「議員減って審議減る」という側面も考えていかなければならないと思います。

私も現職時代議員定数削減には賛成してきましたし、今でも定数は減らすべきだと思っています。しかし、その議論は「国民受けするだけ」ではいけません。議員の数が減る事は民主主義における国民の代弁者の数が減るという側面もあるのだという事を忘れてはなりません。「議論して尚、やはり議員定数は減らすべきだ」という正しい道筋を立てて結果を導かなければなりません。(略)
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定数削減は本当に必要かどうかの国民的議論が不足しているような気がしているのです。

「議員自ら身を切る」といえば誰もが黙る風潮に疑問を持っています。実は政治家が有権者に訴える一番楽なご機嫌伺いなのです。

これは経営者自らが「経営手腕」を捨て、リストラによって利益を生み出し難関を乗り切る構図に似ています。私はリストラを否定しません。リストラも断腸の思いで行うか、当たり前の事のように行うかで、結果導き出される答えは違うと信じています。

紹介した記事では、一票格差との矛盾についても言及されています。
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議員定数を掲げる各党に共通する主張は、2014年度から消費税率が引き上げられることに伴い、国会自らが「身を切る」姿勢を国民に示さなければならないというものです。

もっともらしく聞こえますが、多くの疑問点が浮かびます。

 例えば、今の選挙制度改革の焦点は、司法から「違憲」と判断された1票の格差の是正に移っています。1票の価値が等しくなければならないという考え方の是非を別にすれば、定数削減は、格差是正とは逆方向に進みます。都道府県に人口比例で選挙区を割り振るやり方だと、母数が小さくなるほど1票の格差が拡大する傾向があるからです。実際、中選挙区制当時は、「1票の格差」が問題になると、定数を増やして是正を図っていたものです。

 現在、自民党と公明党が成立を急いでいる「0増5減」(5県で一つずつ小選挙区数を減らす)は、2010年の国勢調査時点の人口で格差が2倍未満に収まっています。しかし、5県以外の選挙区も含め、市区町村の境界を基本とする区割りに相当な変則を適用する操作によって、かろうじて2倍未満に収まっているだけで、2013年1月時点での人口でみれば、新たな区割りでも、既に格差は2倍を超えています。

 民主党は小選挙区の定数を30減らして270にする案を唱えています。日本維新の会はさらに削減幅を大きくし、小選挙区定数を60減らして240にするよう主張しています。維新の会の案に、2010年国勢調査の結果をあてはめると、1票の格差は1.95倍になります(1人別枠方式=各都道府県に1議席ずつ割り振った後、残り議席を人口比例で配分する=をとらず、都道府県内の各選挙区の人口を均等とした試算)。小選挙区定数が300のままなら、1.64倍(同)で、定数削減による格差拡大の傾向が見て取れます。
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定数削減は、一票格差に矛盾するのです。

そして、私が触れたように、
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それ以上に重大な問題は、議員を減らすことで、国会が機能不全に陥る可能性があるということです。日本の国会は、法案の細かな審議は委員会に任せています。衆院には常任委員会、特別委員会合わせて27の委員会があり、それぞれ、定数を決めています。現在の衆院議員数480人でも、議員一人一人が複数の委員会をかけもちしなければ回りません。そのほかにも、議員定数を減らすことで、国会の運営上、様々な弊害が出てきます。

議員数を減らしたところで、国の財政規模からすれば、歳出削減の効果は限定的です。むしろ、議員一人一人の歳費を削るべきだとか、政党交付金を減らすべきだという意見も、根強くあります。いずれにしても、「姿勢」ばかり強調して、肝心な仕事の「中身」を犠牲にするようでは、本末転倒でしょう。

日本は代議制です。国会議員は、国民の声に幅広く耳を傾け、多様な価値観を尊重し、問題の所在を知ったうえで、国政にそうした声を届ける役目があります。また、そうした役目を果たしているからこそ、「必要だが国民に不人気な政策」に理解を求める資格があるのです。いたずらに国会議員の数を減らすことは、そうした機能をも弱めていくことになりかねません。

議員の数を減らし、かつ、政治の質を向上させようとするなら、今の国会の仕組みを根底から変えなければならないでしょう。その際には、衆院だけではなく、参院の改革も併せて考えなければなりませんし、都道府県という行政単位を選挙単位とすることの是非も議論する必要があります。代議制そのものをどう考えるかということや、日本の統治形態のあり方も、議論の俎上にのぼってくるでしょう。

 定数削減が、そうした幅広い改革案とセットで論じられているならまだしも、とにかく国会議員の数が少ないことが正義だと言わんばかりの不毛な削減競争では、「有権者の理解を得るため」といいながら、有権者不在の議論になってしまいます。※読売新聞編集委員 兼 調査研究本部研究員  伊藤俊行
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姿勢を見せるだけで、実は中身は後退するという矛盾についても言及しています。定数削減は有権者に最も訴えやすい手法です。しかし、果たしてその結果国会運営が如何に交通渋滞に陥るのかについて指摘を避けているのです。

議員を選ぶのは有権者です。

選ばれた議員が「働く議員」ならばひとりでも数は多い方が国民の為になります。しかし、「何でこんな奴が議員なの?」という議員ばかりであれば定数は少ない方がよいでしょう。しかし、国会は間違いなく物理的に混乱するのです。

定数削減問題よりも、誰を選ぶか、誰が選ばれるか、選んで頂く為に何をしてきたのか、何をしようとしているのか、働いてくれるのか、そうではないのか。この選挙というもののあり方を当事者双方が、しっかりと議論し直す事が必要なのではないかと、生意気口を申し上げて、本日は以上とさせて頂きます。


※25.5.7 11:05 加筆しました。
選挙区議員定数は増加させ、比例区議員定数を全廃させるべきかと検討し、ならば中選挙区制度に戻した方が宜しいのではないかという議論も必要ではないかと思っています。
コメント (19)
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