列王紀上 1:1-10
ダビデ王は年がすすんで老い、夜着を着せても暖まらなかったので、 その家来たちは彼に言った、「王わが主のために、ひとりの若いおとめを捜し求めて王にはべらせ、王の付添いとし、あなたのふところに寝て、王わが主を暖めさせましょう」。 そして彼らはあまねくイスラエルの領土に美しいおとめを捜し求めて、シュナミびとアビシャグを得、王のもとに連れてきた。 おとめは非常に美しく、王の付添いとなって王に仕えたが、王は彼女を知ることがなかった。 さてハギテの子アドニヤは高ぶって、「わたしは王となろう」と言い、自分のために戦車と騎兵および自分の前に駆ける者五十人を備えた。 彼の父は彼が生れてこのかた一度も「なぜ、そのような事をするのか」と言って彼をたしなめたことがなかった。アドニヤもまた非常に姿の良い人であって、アブサロムの次に生れた者である。 彼がゼルヤの子ヨアブと祭司アビヤタルとに相談したので、彼らはアドニヤに従って彼を助けた。 しかし祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、預言者ナタンおよびシメイとレイ、ならびにダビデの勇士たちはアドニヤに従わなかった。 アドニヤはエンロゲルのほとりにある「へびの石」のかたわらで、羊と牛と肥えた家畜をほふって、王の子である自分の兄弟たち、および王の家来であるユダの人々をことごとく招いた。 しかし預言者ナタンと、ベナヤと、勇士たちと、自分の兄弟ソロモンとは招かなかった。
イスラエルを統一し、神を中心とする王国を確立したダビデ王も、年老いて肉体の衰えも進み、夜の就寝時に体温を維持することさえままならなくなりました。すると王位継承の権力争いが始まりました。ダビデの4男にあたるアドニヤは、自ら王になると一方的に言い出して、戦車と騎兵、そして親衛隊50人を備えました。なぜこれが高ぶりなのか? それは神の国イスラエルの王は、立候補でも自己推薦でもなく、神によって選ばれた者が王となるべきだからです。にもかかわらずアドニヤは、彼の兄アブサロムと同じ過ちを犯したのです。その原因として、父ダビデはその子どもたちが間違ったことを行ってもその過ちを咎めたことがなく、甘やかして育てたからだと記されています。またアドニヤもまた兄アブサロムと同じく容姿端麗で、人の目には王の風格を備えた人物であったとあります。アドニヤの一方的な王位継承宣言に同調したのが、相談を受けたイスラエル軍の将ヨアブと祭司アビヤタルでした。アドニヤは自分の兄弟と王の家来たちを招いて宴会を開きましたが、ソロモンと祭司ザドク、エホヤダの子ベナヤ、預言者ナタン、ダビデの勇士たちは、宴席に招きませんでした。自分の意に添わない者を排斥し、仲良しグループだけで政治の中核を固めることは、国家衰退と腐敗の原因となりますから注意が必要です。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.1-10.ja1955
*****
列王紀上 1:11-27
時にナタンはソロモンの母バテシバに言った、「ハギテの子アドニヤが王となったのをお聞きになりませんでしたか。われわれの主ダビデはそれをごぞんじないのです。 それでいま、あなたに計りごとを授けて、あなたの命と、あなたの子ソロモンの命を救うようにいたしましょう。 あなたはすぐダビデ王のところへ行って、『王わが主よ、あなたは、はしために誓って、おまえの子ソロモンが、わたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろうと言われたではありませんか。そうであるのに、どうしてアドニヤが王となったのですか』と言いなさい。 あなたがなお王と話しておられる間に、わたしもまた、あなたのあとから、はいって行って、あなたの言葉を確認しましょう」。 そこでバテシバは寝室にはいって王の所へ行った。(王は非常に老いて、シュナミびとアビシャグが王に仕えていた)。 バテシバは身をかがめて王を拝した。王は言った、「何の用か」。 彼女は王に言った、「わが主よ、あなたは、あなたの神、主をさして、はしために誓い、『おまえの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と言われました。 そうであるのに、ごらんなさい、今アドニヤが王となりました。王わが主よ、あなたはそれをごぞんじないのです。 彼は牛と肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たち、および祭司アビヤタルと、軍の長ヨアブを招きましたが、あなたのしもべソロモンは招きませんでした。 王わが主よ、イスラエルのすべての目はあなたに注がれ、だれがあなたに次いで、王わが主の位に座すべきかを告げられるのを望んでいます。 王わが主が先祖と共に眠られるとき、わたしと、わたしの子ソロモンは謀叛人とみなされるでしょう」。 バテシバがなお王と話しているうちに、預言者ナタンがはいってきた。 人々は王に告げて、「預言者ナタンがここにおります」と言った。彼は王の前にはいり、地に伏して王を拝した。 そしてナタンは言った、「王わが主よ、あなたは、『アドニヤがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と仰せられましたか。 彼はきょう下っていって、牛と、肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たちと、軍の長ヨアブと、祭司アビヤタルを招きました。彼らはアドニヤの前で食い飲みして、『アドニヤ万歳』と言いました。 しかし、あなたのしもべであるわたしと、祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、あなたのしもべソロモンを招きませんでした。 この事は王わが主がさせられた事ですか。あなたはしもべたちに、だれがあなたに次いで王わが主の位に座すべきかを告げられませんでした」。
父ダビデの意向を無視して、アドニヤが一方的に王位継承を宣言する動向を察した預言者ナタンは、ソロモンの母バテシバに面会し、後に彼女とソロモンがアドニヤに刃向かう謀反人として処刑されることのないよう、一計を講じました。それは直接ダビデに王位継承の意志を問い質すことでした。そこでバテシバと預言者ナタンはそれぞれ別にダビデ王の元に出向き、アドニヤを次のイスラエルの王とする決断をされたのかと問いました。これはある意味、禁じ手といいますか、ダビデに生前退位を促すことでもあり、現職の王に対して失礼に値しないか躊躇するほどの勇気を要する行為でしたが、今すぐに行動を起こさないと自分たちが抹殺されかねない、緊張関係の中にありました。私たちの人生の中でも、今直ちに行動しないと自分の身に危険が及ぶ、絶体絶命の危機に晒されることがあります。そのとき信仰をもって勇敢に立ち上がる者だけが、いのちを救うことができます。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.11-27.ja1955
*****
列王紀上 1:28-40
ダビデ王は答えて言った、「バテシバをわたしのところに呼びなさい」。彼女は王の前にはいってきて、王の前に立った。 すると王は誓って言った、「わたしの命をすべての苦難から救われた主は生きておられる。 わたしがイスラエルの神、主をさしてあなたに誓い、『あなたの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしに代って、わたしの位に座するであろう』と言ったように、わたしはきょう、そのようにしよう」。 そこでバテシバは身をかがめ、地に伏して王を拝し、「わが主ダビデ王が、とこしえに生きながらえられますように」と言った。 ダビデは言った、「祭司ザドクと、預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤをわたしの所に呼びなさい」。やがて彼らは王の前にきた。 王は彼らに言った、「あなたがたの主君の家来たちを連れ、わが子ソロモンをわたしの騾馬に乗せ、彼を導いてギホンに下り、 その所で祭司ザドクと預言者ナタンは彼に油を注いでイスラエルの王としなさい。そしてラッパを吹いて、『ソロモン王万歳』と言いなさい。 それから、あなたがたは彼に従って上ってきなさい。彼はきて、わたしの位に座し、わたしに代って王となるであろう。わたしは彼を立ててイスラエルとユダの上に主君とする」。 エホヤダの子ベナヤは王に答えて言った、「アァメン、願わくは、王わが主君の神、主もまたそう仰せられますように。 願わくは、主が王わが主君と共におられたように、ソロモンと共におられて、その位をわが主君ダビデ王の位よりも大きくせられますように」。 そこで祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとは下って行って、ソロモンをダビデ王の騾馬に乗せ、彼をギホンに導いて行った。 祭司ザドクは幕屋から油の角を取ってきて、ソロモンに油を注いだ。そしてラッパを吹き鳴らし、民は皆「ソロモン王万歳」と言った。 民はみな彼に従って上り、笛を吹いて大いに喜び祝った。地は彼らの声で裂けるばかりであった。
バテシバと預言者ナタンの言葉を聞いて緊急事態であると察したダビデは、王位を継承するのはアドニヤではなくソロモンであることを再確認しました。これは歴代志上22章に記されています。アドニヤ側につかなかった祭司ザドク、エホヤダの子ベナヤを召集して、ソロモンを王だけが乗ることのできる騾馬に乗せ、預言者ナタンと共にソロモンに聖なる油を注いでイスラエルの王として任命し、即位式を執り行うようにと命じました。彼らは直ちにソロモンをギホンの谷に連れて行き、エルサレムの民も同席する中で即位式を行い、喜びの声を挙げました。アドニヤが自分のお気に入りの人だけを召集して王位就任を宣言したのとは対照的に、ソロモンの王位継承は祭司によって神の御前に執り行われ、イスラエルの民衆の祝福を受ける中で行われました。これこそが神と人とに喜ばれる真のイスラエルの王の姿です。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.28-40.ja1955
*****
列王紀上 1:41-53
アドニヤおよび彼と共にいた客たちは皆食事を終ったとき、これを聞いた。ヨアブはラッパの音を聞いて言った、「町の中のあの騒ぎは何か」。 彼の言葉のなお終らないうちに、そこへ祭司アビヤタルの子ヨナタンがきたので、アドニヤは彼に言った、「はいりなさい。あなたは勇敢な人で、よい知らせを持ってきたのでしょう」。 ヨナタンは答えてアドニヤに言った、「いいえ、主君ダビデ王はソロモンを王とせられました。 王は祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとをソロモンと共につかわされたので、彼らはソロモンを王の騾馬に乗せて行き、 祭司ザドクと預言者ナタンはギホンで彼に油を注いで王としました。そして彼らがそこから喜んで上って来るので、町が騒がしいのです。あなたが聞いた声はそれなのです。 こうしてソロモンは王の位に座し、 かつ王の家来たちがきて、主君ダビデ王に祝いを述べて、『願わくは、あなたの神がソロモンの名をあなたの名よりも高くし、彼の位をあなたの位よりも大きくされますように』と言いました。そして王は床の上で拝されました。 王はまたこう言われました、『イスラエルの神、主はほむべきかな。主はきょう、わたしの位に座するひとりの子を与えて、これをわたしに見せてくださった』と」。 その時アドニヤと共にいた客はみな驚き、立っておのおの自分の道に去って行った。 そしてアドニヤはソロモンを恐れ、立って行って祭壇の角をつかんだ。 ある人がこれをソロモンに告げて言った、「アドニヤはソロモンを恐れ、今彼は祭壇の角をつかんで、『どうぞ、ソロモン王がきょう、つるぎをもってしもべを殺さないとわたしに誓ってくださるように』と言っています」。 ソロモンは言った、「もし彼がよい人となるならば、その髪の毛ひとすじも地に落ちることはなかろう。しかし彼のうちに悪のあることがわかるならば、彼は死ななければならない」。 ソロモンは人をつかわして彼を祭壇からつれて下らせた。彼がきてソロモンを拝したので、ソロモンは彼に「家に帰りなさい」と言った。
アドニヤ側についた人々は、ソロモンがダビデの跡を継ぐイスラエルの王に即位したことを知って驚き慌て、皆そそくさと自宅に帰りました。そしてアドニヤは正式にイスラエルの王となったソロモンを恐れ、主に犠牲を捧げるための青銅の祭壇の角を掴みました。これは当時、主の祭壇の角を掴む者は、逃れの町に逃げ延びた人のように、その罪を放免されると考えられていたからです。ソロモンはアドニヤの命乞いを寛大に受け入れ、自ら王になろうとした野心を撤回し、良い人となるならば、そのいのちを奪われることはないと約束しました。しかしもし再び悪しき野心を抱くならば死ななければならないとも忠告しました。このアドニヤとソロモンの行動から見ても、野心家でありながら小心者のアドニヤと、謝罪する者を寛大に受け入れ過ちを許すソロモンとでは、どちらが王の器に相応しいか、一目瞭然です。私たちもまた人の過ちをあげつらうばかりでなく、罪は罪として厳しく臨みながらも、許しを乞う者を寛容に受け入れる愛の人とならせていただきたいと願います。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.41-53.ja1955
ダビデ王は年がすすんで老い、夜着を着せても暖まらなかったので、 その家来たちは彼に言った、「王わが主のために、ひとりの若いおとめを捜し求めて王にはべらせ、王の付添いとし、あなたのふところに寝て、王わが主を暖めさせましょう」。 そして彼らはあまねくイスラエルの領土に美しいおとめを捜し求めて、シュナミびとアビシャグを得、王のもとに連れてきた。 おとめは非常に美しく、王の付添いとなって王に仕えたが、王は彼女を知ることがなかった。 さてハギテの子アドニヤは高ぶって、「わたしは王となろう」と言い、自分のために戦車と騎兵および自分の前に駆ける者五十人を備えた。 彼の父は彼が生れてこのかた一度も「なぜ、そのような事をするのか」と言って彼をたしなめたことがなかった。アドニヤもまた非常に姿の良い人であって、アブサロムの次に生れた者である。 彼がゼルヤの子ヨアブと祭司アビヤタルとに相談したので、彼らはアドニヤに従って彼を助けた。 しかし祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、預言者ナタンおよびシメイとレイ、ならびにダビデの勇士たちはアドニヤに従わなかった。 アドニヤはエンロゲルのほとりにある「へびの石」のかたわらで、羊と牛と肥えた家畜をほふって、王の子である自分の兄弟たち、および王の家来であるユダの人々をことごとく招いた。 しかし預言者ナタンと、ベナヤと、勇士たちと、自分の兄弟ソロモンとは招かなかった。
イスラエルを統一し、神を中心とする王国を確立したダビデ王も、年老いて肉体の衰えも進み、夜の就寝時に体温を維持することさえままならなくなりました。すると王位継承の権力争いが始まりました。ダビデの4男にあたるアドニヤは、自ら王になると一方的に言い出して、戦車と騎兵、そして親衛隊50人を備えました。なぜこれが高ぶりなのか? それは神の国イスラエルの王は、立候補でも自己推薦でもなく、神によって選ばれた者が王となるべきだからです。にもかかわらずアドニヤは、彼の兄アブサロムと同じ過ちを犯したのです。その原因として、父ダビデはその子どもたちが間違ったことを行ってもその過ちを咎めたことがなく、甘やかして育てたからだと記されています。またアドニヤもまた兄アブサロムと同じく容姿端麗で、人の目には王の風格を備えた人物であったとあります。アドニヤの一方的な王位継承宣言に同調したのが、相談を受けたイスラエル軍の将ヨアブと祭司アビヤタルでした。アドニヤは自分の兄弟と王の家来たちを招いて宴会を開きましたが、ソロモンと祭司ザドク、エホヤダの子ベナヤ、預言者ナタン、ダビデの勇士たちは、宴席に招きませんでした。自分の意に添わない者を排斥し、仲良しグループだけで政治の中核を固めることは、国家衰退と腐敗の原因となりますから注意が必要です。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.1-10.ja1955
*****
列王紀上 1:11-27
時にナタンはソロモンの母バテシバに言った、「ハギテの子アドニヤが王となったのをお聞きになりませんでしたか。われわれの主ダビデはそれをごぞんじないのです。 それでいま、あなたに計りごとを授けて、あなたの命と、あなたの子ソロモンの命を救うようにいたしましょう。 あなたはすぐダビデ王のところへ行って、『王わが主よ、あなたは、はしために誓って、おまえの子ソロモンが、わたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろうと言われたではありませんか。そうであるのに、どうしてアドニヤが王となったのですか』と言いなさい。 あなたがなお王と話しておられる間に、わたしもまた、あなたのあとから、はいって行って、あなたの言葉を確認しましょう」。 そこでバテシバは寝室にはいって王の所へ行った。(王は非常に老いて、シュナミびとアビシャグが王に仕えていた)。 バテシバは身をかがめて王を拝した。王は言った、「何の用か」。 彼女は王に言った、「わが主よ、あなたは、あなたの神、主をさして、はしために誓い、『おまえの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と言われました。 そうであるのに、ごらんなさい、今アドニヤが王となりました。王わが主よ、あなたはそれをごぞんじないのです。 彼は牛と肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たち、および祭司アビヤタルと、軍の長ヨアブを招きましたが、あなたのしもべソロモンは招きませんでした。 王わが主よ、イスラエルのすべての目はあなたに注がれ、だれがあなたに次いで、王わが主の位に座すべきかを告げられるのを望んでいます。 王わが主が先祖と共に眠られるとき、わたしと、わたしの子ソロモンは謀叛人とみなされるでしょう」。 バテシバがなお王と話しているうちに、預言者ナタンがはいってきた。 人々は王に告げて、「預言者ナタンがここにおります」と言った。彼は王の前にはいり、地に伏して王を拝した。 そしてナタンは言った、「王わが主よ、あなたは、『アドニヤがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と仰せられましたか。 彼はきょう下っていって、牛と、肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たちと、軍の長ヨアブと、祭司アビヤタルを招きました。彼らはアドニヤの前で食い飲みして、『アドニヤ万歳』と言いました。 しかし、あなたのしもべであるわたしと、祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、あなたのしもべソロモンを招きませんでした。 この事は王わが主がさせられた事ですか。あなたはしもべたちに、だれがあなたに次いで王わが主の位に座すべきかを告げられませんでした」。
父ダビデの意向を無視して、アドニヤが一方的に王位継承を宣言する動向を察した預言者ナタンは、ソロモンの母バテシバに面会し、後に彼女とソロモンがアドニヤに刃向かう謀反人として処刑されることのないよう、一計を講じました。それは直接ダビデに王位継承の意志を問い質すことでした。そこでバテシバと預言者ナタンはそれぞれ別にダビデ王の元に出向き、アドニヤを次のイスラエルの王とする決断をされたのかと問いました。これはある意味、禁じ手といいますか、ダビデに生前退位を促すことでもあり、現職の王に対して失礼に値しないか躊躇するほどの勇気を要する行為でしたが、今すぐに行動を起こさないと自分たちが抹殺されかねない、緊張関係の中にありました。私たちの人生の中でも、今直ちに行動しないと自分の身に危険が及ぶ、絶体絶命の危機に晒されることがあります。そのとき信仰をもって勇敢に立ち上がる者だけが、いのちを救うことができます。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.11-27.ja1955
*****
列王紀上 1:28-40
ダビデ王は答えて言った、「バテシバをわたしのところに呼びなさい」。彼女は王の前にはいってきて、王の前に立った。 すると王は誓って言った、「わたしの命をすべての苦難から救われた主は生きておられる。 わたしがイスラエルの神、主をさしてあなたに誓い、『あなたの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしに代って、わたしの位に座するであろう』と言ったように、わたしはきょう、そのようにしよう」。 そこでバテシバは身をかがめ、地に伏して王を拝し、「わが主ダビデ王が、とこしえに生きながらえられますように」と言った。 ダビデは言った、「祭司ザドクと、預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤをわたしの所に呼びなさい」。やがて彼らは王の前にきた。 王は彼らに言った、「あなたがたの主君の家来たちを連れ、わが子ソロモンをわたしの騾馬に乗せ、彼を導いてギホンに下り、 その所で祭司ザドクと預言者ナタンは彼に油を注いでイスラエルの王としなさい。そしてラッパを吹いて、『ソロモン王万歳』と言いなさい。 それから、あなたがたは彼に従って上ってきなさい。彼はきて、わたしの位に座し、わたしに代って王となるであろう。わたしは彼を立ててイスラエルとユダの上に主君とする」。 エホヤダの子ベナヤは王に答えて言った、「アァメン、願わくは、王わが主君の神、主もまたそう仰せられますように。 願わくは、主が王わが主君と共におられたように、ソロモンと共におられて、その位をわが主君ダビデ王の位よりも大きくせられますように」。 そこで祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとは下って行って、ソロモンをダビデ王の騾馬に乗せ、彼をギホンに導いて行った。 祭司ザドクは幕屋から油の角を取ってきて、ソロモンに油を注いだ。そしてラッパを吹き鳴らし、民は皆「ソロモン王万歳」と言った。 民はみな彼に従って上り、笛を吹いて大いに喜び祝った。地は彼らの声で裂けるばかりであった。
バテシバと預言者ナタンの言葉を聞いて緊急事態であると察したダビデは、王位を継承するのはアドニヤではなくソロモンであることを再確認しました。これは歴代志上22章に記されています。アドニヤ側につかなかった祭司ザドク、エホヤダの子ベナヤを召集して、ソロモンを王だけが乗ることのできる騾馬に乗せ、預言者ナタンと共にソロモンに聖なる油を注いでイスラエルの王として任命し、即位式を執り行うようにと命じました。彼らは直ちにソロモンをギホンの谷に連れて行き、エルサレムの民も同席する中で即位式を行い、喜びの声を挙げました。アドニヤが自分のお気に入りの人だけを召集して王位就任を宣言したのとは対照的に、ソロモンの王位継承は祭司によって神の御前に執り行われ、イスラエルの民衆の祝福を受ける中で行われました。これこそが神と人とに喜ばれる真のイスラエルの王の姿です。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.28-40.ja1955
*****
列王紀上 1:41-53
アドニヤおよび彼と共にいた客たちは皆食事を終ったとき、これを聞いた。ヨアブはラッパの音を聞いて言った、「町の中のあの騒ぎは何か」。 彼の言葉のなお終らないうちに、そこへ祭司アビヤタルの子ヨナタンがきたので、アドニヤは彼に言った、「はいりなさい。あなたは勇敢な人で、よい知らせを持ってきたのでしょう」。 ヨナタンは答えてアドニヤに言った、「いいえ、主君ダビデ王はソロモンを王とせられました。 王は祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとをソロモンと共につかわされたので、彼らはソロモンを王の騾馬に乗せて行き、 祭司ザドクと預言者ナタンはギホンで彼に油を注いで王としました。そして彼らがそこから喜んで上って来るので、町が騒がしいのです。あなたが聞いた声はそれなのです。 こうしてソロモンは王の位に座し、 かつ王の家来たちがきて、主君ダビデ王に祝いを述べて、『願わくは、あなたの神がソロモンの名をあなたの名よりも高くし、彼の位をあなたの位よりも大きくされますように』と言いました。そして王は床の上で拝されました。 王はまたこう言われました、『イスラエルの神、主はほむべきかな。主はきょう、わたしの位に座するひとりの子を与えて、これをわたしに見せてくださった』と」。 その時アドニヤと共にいた客はみな驚き、立っておのおの自分の道に去って行った。 そしてアドニヤはソロモンを恐れ、立って行って祭壇の角をつかんだ。 ある人がこれをソロモンに告げて言った、「アドニヤはソロモンを恐れ、今彼は祭壇の角をつかんで、『どうぞ、ソロモン王がきょう、つるぎをもってしもべを殺さないとわたしに誓ってくださるように』と言っています」。 ソロモンは言った、「もし彼がよい人となるならば、その髪の毛ひとすじも地に落ちることはなかろう。しかし彼のうちに悪のあることがわかるならば、彼は死ななければならない」。 ソロモンは人をつかわして彼を祭壇からつれて下らせた。彼がきてソロモンを拝したので、ソロモンは彼に「家に帰りなさい」と言った。
アドニヤ側についた人々は、ソロモンがダビデの跡を継ぐイスラエルの王に即位したことを知って驚き慌て、皆そそくさと自宅に帰りました。そしてアドニヤは正式にイスラエルの王となったソロモンを恐れ、主に犠牲を捧げるための青銅の祭壇の角を掴みました。これは当時、主の祭壇の角を掴む者は、逃れの町に逃げ延びた人のように、その罪を放免されると考えられていたからです。ソロモンはアドニヤの命乞いを寛大に受け入れ、自ら王になろうとした野心を撤回し、良い人となるならば、そのいのちを奪われることはないと約束しました。しかしもし再び悪しき野心を抱くならば死ななければならないとも忠告しました。このアドニヤとソロモンの行動から見ても、野心家でありながら小心者のアドニヤと、謝罪する者を寛大に受け入れ過ちを許すソロモンとでは、どちらが王の器に相応しいか、一目瞭然です。私たちもまた人の過ちをあげつらうばかりでなく、罪は罪として厳しく臨みながらも、許しを乞う者を寛容に受け入れる愛の人とならせていただきたいと願います。
https://www.bible.com/bible/81/1ki.1.41-53.ja1955