「室津のあなた」・小五月祭り

引き続き、竹川美子『室津のあなた』について。

『江釣子のおんな』では、チャグチャグ馬コという盛岡のお祭りがモチーフになっていたが、『室津のあなた』の歌詞の中にも「小五月（こさつき）祭り」というのが２番に歌われている。
この「小五月祭り」のことを調べてみると、室津港にある賀茂神社の春の例祭で、４月９日、１０日に行われている。地元では女の祭りと呼ばれていて、平安の昔を優美に再現する祭りとのことだ。

『室津のあなた』は、伴奏に雅楽調の幽玄な音色が響くが、この「小五月祭り」のことを知れば、なるほどという感じがした。室津は神話時代にまでさかのぼる歴史のある土地であり、また平安時代から連綿と地元の女の子によって、古式ゆかしいお祭りが継承されているわけだ。

やはり竹川美子の演歌は、同じ演歌と言っても一味も二味も違う。『江釣子のおんな』にしても、『室津のあなた』にしても、その中心にあるものは忘れられかけている日本の原風景、伝統文化なのだ。
「日本人の心を歌う歌手になりたい」という竹川美子にとって、今度の新曲『室津のあなた』もまさに意を得たりといった素晴らしい作品だと思う。