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お父さんのマリポタ日記。
マリノスのこと、ポタリングのこと。最近忘れっぽくなってきたので、書いておかないと・・・
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※佐々涼子(1968年神奈川県生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業。日本語教師を経てフリーライターに。2012年「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」で第10回開高健ノンフィクション賞受賞。14年に上梓した「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場」は紀伊國屋書店キノベス!第1位、ダ・ヴィンチ ブック・オブ・ザ・イヤー第1位、新風賞特別賞などに、20年「エンド・オブ・ライフ」はYahoo!ニュース 本屋大賞フィクション本大賞に輝く。他に「ボーダー 移民と難民」など)



●まさに「事実は小説よりも奇なり」

 家族、病、看取り、移民、宗教。読む者の心を揺さぶる数々のノンフィクションの原点は、作家の人生そのものにあった…。生と死を見つめ続けてきた作家のエッセイ&ルポルタージュ作品集。

 第1章のエッセイ33本はひとつひとつの完成度が高く、テーマがテーマだけにずしりと心に響くものばかり。

 心に残った言葉をいくつか。

 「人は死に方を知らないが、体はきっと知っている」
 「我々はみなどこからか来て、そしてどこかへ行く途中なのだ」
 「どんなに大切な人を失っても一緒に死んだりしないように作られているのだ。だから人類は滅亡せずに生き延びた」
 「誰も死んだことがないから、この世に生きている人はみな死について分からないのだ」

 佐々さんと同様、自分も生きるのが楽になった気がする。

 「早稲田大学法学部卒業。日本語教師を経てフリーライターに」という、たった27文字の間にはいくつものドラマがあった。

 ルポルタージュの「ダブルリミテッド」。初めて聞く言葉だったが、バイリンガルの裏にはこういう事も起こるのかと、驚きを覚えた。

 そして「あとがき」にさらに衝撃を受ける。

 希少がんの「グリオーマ」が22年11月に発病したことを自ら明かした。あろうことか自分自身が終末期の当事者となったのだ。「あと数ヶ月で認知機能がおとろえ、意識が喪失し、あの世へ行くらしいのだ」。それなのに冷静に「誰もが通る道」と受け止める姿には心が震えた。そして10ヶ月後の翌年9月、結果的に遺作となる本書を出版する。

 まさに「事実は小説よりも奇なり」。

 佐々さんは発病から21ヶ月後の24年9月1日に56歳で旅立たれた。このあとがきを読んだ誰もが感じるであろう、「ああ、楽しかった」で終われた人生に違いない。

 佐々涼子さんという名前を本書で初めて知り、題名だけ知ってた「エンジェルフライト」を書いたのはこの人だったんだと繋がった時、佐々さんはこの世にいなかった。残念でならないが、佐々さんがこの世に残したものを読んでいきたい。まずは「エンジェルフライト」から。

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