梅雨入り前の6月2、3日に開催された「BRM602 西東京600km諏訪湖」に参加した。町田をスタートし、伊豆・修繕時を経由し、沼津、富士を走った後に北上。諏訪湖で折り返し、芝川まで戻って朝霧高原を上って道志みちを町田まで帰るコース。町田から稲子までの200キロは10時間7分とまずまずのペースで、終盤の上りに備えて着々と貯金ができた。次の200キロは諏訪湖を目指し富士見峠を往復する、山岳の夜間区間だ。
山梨県身延町
約200キロ地点となる稲子駅前には午後3時7分に到着。左折して国道469号へ入り、急坂を上り切る手前から山梨県となる。
芝川から県道10号〜国道469号〜県道10号〜県道9号とつないで波高島へ至る道は、アップダウンはあるが車の通行量は少なく信号もなく、逆に風景はたっぷり楽しめる、まさに「これぞブルベ」の幸せ区間。好きな道のひとつだ。おまけに晴れで追い風とあって、気分よくサイクリングできた。
午後3時18分、稲子駅前から左折し急坂を上ると山梨県内船町
午後3時36分、富士川沿いを走る
午後3時50分、内船の先付近
波高島までの区間で一番きついのが身延手前の急坂。何度か走っているが「峠あり」(確か)という看板に初めて気がついた。やっぱり「峠」なんだ。
午後4時17分、身延手前の「峠」のピークから身延の町を臨む
午後4時18分、身延駅前
午後4時22分、身延で小休止。富士山かな?
身延駅前で写真を撮っていたら、和菓子店へ吸収されていくブルベライダー発見。この時はなんとも思わなかったが、あとで調べて見ると栄昇堂 (えいしょうどう) の身延まんじゅうがお目当てだったようだ。口コミでは評判も良く「絶品」と言う人も。次回、昼間に通る機会があったら食べてみよう。
身延から8キロほど走ると波高島。本栖みちにぶつかり、突き当たりを左折して冨山橋で富士川を渡り、今度は右岸の国道52号を北上する。
午後4時41分、波高島付近。この先を左折する
午後4時43分、冨山橋から見た富士川
午後5時6分、国道52号。この時はたまたま車がいなかったが、交通量は多い
上沢交差点から次の左折ポイントの野牛島(やごしま)西交差点までは30・2キロ。最初は追い風だったが、途中から向かい風になったりと風向きがなぜか定まらない。単調な直線が続くので、15キロほど走ったところにあった「富士川ドライブイン」でひと休み。立派な名前のわりには、駐車場と自販機とトイレしかなかったが、これで十分。缶コーヒーを飲み、やや寒くなってきたのでアームウォーマーも着けてリスタートした。
休憩してから5キロほど走ると、中部横断自動車道の高架下を走ることになる。ここも何となく向かい風で、信号にはことごとく引っかかり、ストレスのたまる区間だった。
待望の左折ポイント野牛島西交差点が見えたときは嬉しかったなぁ。次の右折ポイント源交差点までは2・9キロで、距離的にはいいがずっと上りだったのには参った。
午後6時26分、源交差点手前。暗くなってきた
源交差点を右折すると、ブルベではお馴染みの県道12号。国道20号の円野郵便局前へ出る道だ。ここも好きな道。国道20号へ向かっては上り基調となるが、この道へ出た途端にほっとした。
【PC3 262・6キロ セブンイレブン韮崎旭町店】午後6時38分(貯金4時間10分)
午後6時33分、PC3到着(撮影 AJ西東京・田中(敦)さん)
PC3には午後6時38分に到着。貯金は1時間ほど増え4時間台になっていたが、ここで休憩すると3時間台になってしまい、富士見峠、朝霧高原を考えるとしっかり寝るには微妙な時間となってきた。
このPCもブルベライダーで大盛況。これだけ差が付かないブルベも珍しい。店の外のガラス窓に沿ってテーブルとイスが用意されており、ここでもうまい具合に席が空いたので、夕食に冷やし中華を食べた。これまでの長距離ブルベではこのあたりから固形物が食べられなくなり、腹が減っているのにものがノドを通らず流動食で我慢することが多かったのだが、この日は普通に食べることができている。たぶん、どのPCでも座ってゆっくり食べることができたからだろう。いつも突っ立ったまま、慌ただしく口に入れているからね。コロンビアを破って金星を挙げた西野ジャパンではないが、ブルベ中でも「ゆとり」は必要だ。
このPCからナイトランとなった。ニーウォーマーを着け、リスタート。11・6キロ先の国道20号を目指す。
午後7時25分、田んぼの中にある武田信玄像
国道20号に出る直前に武田信玄がいるはずだが…。いたいた(^o^) 今年も会えた。
富士見峠までは25キロの登坂。暗闇の中を上っていく。前方にブルベライダーの尾灯が見えるが、追いつけそうで追いつけない。
上りなので体が暖まり、少し眠くなってきた。走行距離も300キロ近くなり、いよいよブルベ本番だ。
この先に道の駅が「はくしゅう」「蔦木宿」と2つある。過去のブルベで寝ようとしたが、夜は明るすぎ、また人の出入りも多くて眠ることはできなかった。なんとか我慢して諏訪湖の「青空ホテル」まで頑張ろう。
信号ストップ以外は休むことなく走り続けた。峠のピークまでの3キロほどがきつくなる。富士見峠をこちらから上るのは久しぶり。たしか左急カーブでぐいっと上った後、すぐにピークだと思っていたのだが、上れども上れども歩道橋が見えてこない。「こんなに長かったっけ?」と思いながらよろよろ上ると、待望の歩道橋が見えた。やっと着いたかと喜んだが、交差点名は「富士見」。キューシートを見ると、ピークは「富士見峠」だ。しまった、歩道橋は2つあったか。残念。お目当ての歩道橋はあと400メートル先だった。
午後9時25分、富士見峠
武田信玄像からちょうど2時間。午後9時25分に富士見峠に到着した。1度目の通過だ。走行距離は約300キロでようやく半分。走行タイムは16時間25分。
ここで下りに備え、長袖インナー、超軽量ウインドブレーカーを着込む。何人か通過したが、ここで着替えていたのは自分のほかには1人だけだった。みんな寒さに強いんだね。
富士見峠からは茅野付近まで12キロほどのダウンヒル。中河原交差点を左折して諏訪湖へ向かうのだが、気がつくと中河原北交差点。そのまま直進すると次の交差点は中河原ではなかったのでUターン。さらに中河原北交差点を右折してみたが、信号は当分なさそう。ここでスマホで現在位置の確認をすると、通り過ぎていた。戻って交差点名を確認すると、茅野から来る方向から見ると表示はアルファベット。反対側には日本語表示もあったが、暗くてよく見えない。アナログなキューシートと、サイコンの区間距離だけで走っている自分としては、赤信号で止まらない限り分からないなぁ。老眼もあるしね。
コースに復帰し、諏訪湖の釜口水門には午後10時半ごろ到着した。
午後10時35分、諏訪湖の釜口水門。ここから天竜川が流れ出る
午後10時36分、諏訪湖湖畔の公園
ここが今夜の「青空ホテル」だ。
実は初めて600キロを走ったブルベ、07年9月の神奈川の「長野600」で偶然見つけた寝心地のいいベッドがここにあるのだ。ちなみに長野600は「座間〜麦草峠〜三才山トンネル〜塩尻峠〜富士見峠〜沼津〜御殿場〜座間」という、雨でもないのに完走率50%の超変態コースで、これを39時間ちょうどで完走した。2度と走りたくないコースだが、思い出深いブルベのひとつだ。
その超変態ブルベの時、寝床を探して明け方にふらふら走っていたら、素晴らしいベッドが目に飛び込んできた。ここでほんの15分程度だったが、眠れたことが完走につながった。今回もコースをたどっていると、ちょうどここを通ることになっており、300キロ過ぎと距離的にもいいので迷わずここで眠る予定にしていた。
07年9月のブルベで見つけたベッド。当時はキャラダイスのサドルバッグだった。自転車は変わっていない
確か水門の近くのはずだったと探していると、あったあった。多少、形状は違うが寝心地はよさそうだ。貯金はたぶん3時間台のはずだから、30分後に目覚ましをかけ、眠れなくても横になることにした。
午後11時12分、青空ホテルのベッド
前回より幅が狭かったが寝心地はまずまず。30分間で2度ほど意識を失った気がするが、眠れたかどうかはよく分からなかった。眠気も完全には取れなかったが、これ以上休むわけにはいかないので走り始める。
釜口橋が2つある橋のどちらか分からず迷ったが、橋の名前を確認して無事に天竜川を渡りPCへ向かう。
【PC4 328・5キロ セブンイレブン下諏訪湖岸通り店】午後11時41分(貯金2時間45分)
午後11時33分、PC4到着(撮影 AJ西東京・埴谷さん)
PC4には午後11時41分に到着。貯金は4時間台から2時間台まで減っていた。巡回にきていたスタッフが「貯金は2時間ないと朝霧高原が苦しい」と話している声が聞こえてきた。スタッフが用意してくれていたイスに座ってシーフードヌードルをすすっていたが、思わず「えっ!」と心の中で叫んだ。ぎりぎりじゃん。もしかしてやばい? 道志みちで貯金が1時間増えることは分かっているので安心していたのだが、その前にタイムアウトになるのか。急いでシーフードヌードルを流し込んでリスタートした。
しばらく諏訪湖湖畔を走るが暗くて湖は見えない。やがて先ほど迷った中河原交差点。ここから富士見峠へ約12キロの上り返しが始まる。距離は短いが、終盤はやはりきつい。
一度は覚めた眠気だったが、登坂で体が暖まったせいで再び眠気が襲ってきた。しかし、時間的に休んでいる場合ではない。途中でストップし、前回のブルベで買っていた眠気覚ましのメガシャキガムを口に入れ、何とかしのいだ。
日付が変わった午前1時20分過ぎに標高956メートルの富士見峠に到着。気温は13度で、今回のブルベで最低気温だった。
午前1時26分、2度目の富士見峠
走行距離は350キロ。眠いし寒いが、残りは250キロ。ようやく先が見えてきた。それにあと3時間もすると夜が明ける。希望の朝、元気の出る朝がやってくるのだ。
ここでニーウォーマーをレッグウォーマーに着替え、ウインドブレーカーを厚手のものに、グローブも指ありのウインドブレークタイプに替えた。ほぼ冬装備だ。その目の前を何人かが、レーパンのまま峠でストップもせずに下って行く。自分は寒さに弱すぎるのだろうか。あるいは彼らが強すぎるのか。
完全防寒でダウンヒルを開始したが、それでも多少の寒さは感じる。その寒さのおかげで眠気はいったんは引っ込んでくれた。
ダウンヒルの途中でブルベライダー2人とすれ違った。お互いに手を振ったが、間に合うのだろうかと心配になった。諏訪湖のPCのクローズは午前2時56分。あと1時間ほどしかないが、距離は30キロ近くある。頑張ってくれとしか言いようがない。
さらに下っていると、歩道で寝込んでいるブルベライダーを発見。街灯の下に人が倒れているのが見え、「まさか…」と思ったが、反射ベストを着て、そばに自転車が転がっていたので「大丈夫。生きてる」と安心した。よほど眠かったのだろうが、寒いし、明るいし、車の音でうるさいしで、自分は絶対眠れない。でもその気持ちはよく分かる。ずっと前からバス停のベンチがあったら転がり込みたい気分になっていた。眠気との戦いがなければブルベはもっと楽しいのだが…。
9キロ下り、下蔦木を左折して八ケ岳高原ラインに入った途端、急坂が始まった。ひっくり返りそうな坂。それも真っ暗。まさに「これぞブルベ」の坂。パンクしないでくれ〜と心の中で叫びながら暗闇の中を上って行く。
この時はすっかり忘れていたのだが、後になってこの八ケ岳高原ラインは09年9月に走った神奈川ブルベの座間600で走っていたことを思い出した。座間600は午後3時にスタートし、伊豆半島を1周した後に八ケ岳高原ラインを走り、清里から十国峠を越えて帰るという、これも超変態コースで、この時はこのまま真っ直ぐ進み、標高1437メートルの美ケ森まで上り続けた。
この日は2・3キロ先の松本坂交差点を右折して七里岩ラインに入る。曲がった後もしばらく上りは続いたが、やがて下り基調となっていった。七里岩ラインも17年4月の青葉ブルベ長坂300で走ったが、この時は長坂駅近くのローソンが折り返し地点で、折り返した後はすぐ右折して国道20号に出たので下るのは初めてだ。
深夜とあって車のほとんど来ない道をアップダウンを繰り返しながら気持ち良く下る。眠気は相変わらずだが、下りで気が張っているせいか何とか持ちこたえてPC5へたどり着いた。
【PC5 390・7キロ ファミリーマート甲斐双葉塩崎店】午前3時29分(貯金4時間25分)
390・7キロ地点のPC5へは午前3時29分に到着。貯金は4時間25分に増えていた。これなら朝霧高原で時間を食っても大丈夫だろうと少し安心。朝バナナとトマトジュースを補給してリスタートした。
400キロ近くになってきてケツの痛みが増してきた。特に左が痛い。ボルダースポーツをPCごとに塗っているので擦りむけてはいないのだが、筋肉痛のような痛みだ。サドルに座る位置によって痛みが違うので、ベストポジションにしていても、信号待ちで足を着くたびに微調整が必要だった。
PC5からは70キロ先の芝川を目指し南下。眠気が消えなかったのでセブンイレブンでメガシャキガムを買おうとストップしたが、見当たらない。聞いてみると仕入れていないそうで、ドリンクならあるという。眠気ざましのガムももっと種類があったと思うのだが、この店ではブラックアンドブラックしか置いていないらしい。メガシャキガムは噛んだ途端に眠気が収まるので気に入っているのだが、ないなら仕方ない。次のセブンイレブンまでドリンクでしのぐとするか。
午前4時27分、釜無川にかかる三郡橋で夜明け
午前4時27分、404キロ地点の三郡橋で夜明けを迎えた。200〜400キロの間の200キロは約12時間で走行したことになる。富士見峠往復があったし、諏訪湖で小1時間休憩したのでまずまずのタイムだろう。残りは200キロ。ラスボスの朝霧高原まであと60キロだ。(「その3」へ続きます)
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