高校生の頃、担任の先生に「短絡的な物の見方をするな」と言われたことをよく覚えています。
先生が私の何を見てそう仰ったのかは今となってはわかりませんが、可能な限り短絡的な物の見方をしないように努めてきたつもりです。先生には今でも感謝しかありません。
LibreOfficeのメーリングリストにこんな投稿がありました。
[ja-users] WriterのWordに対してすぐれている点を教えてください
どこに出しても恥ずかしい短絡的な物の見方ですが、ちょっと解説が必要かなと思いました。
> 勉強不足ですが、現段階で気づいているWriterのWordに勝る利点は次の項目です。
> (1)USBに入れておけば、どのパソコンでも使用できる。
(後略)
ふむふむ。
> なお、LibreOfficeの一般的に言われる利点である次の項目は、すでに、WindowsXpや,VISTA、7
> を使っている受講者にはあまり魅力はないと思われます。
> (1)フリーソフトであること。
> (2)マルチプラットフォーム対応であること。
> (3)多言語対応であること。
(後略)
おや?
フリーソフトという曖昧な言葉はあまり使うべきではありませんが、それはそれとして無料で使え、ライセンスで許諾している(禁止していないのほうが正確か)からこそUSB(メモリー)にインストールすることができるわけであり、どうみてもこれは魅力のうちの一つです。
確かにWindowsしか使っていないユーザーにとっては、マルチプラットフォームであることはメリットではないかも知れません。
ただ、ユーザーが1000万人いようが10億人いようが、LibreOfficeは良くなりません。LibreOfficeを良くするのは開発者です。まぁ翻訳者とかも入れてもいいかも知れませんが、入れるべきかどうかは読者に委ねます。
開発者はWindowsを使っているのでしょうか。Linuxでしょうか。Macでしょうか。Linuxが多い気はしますがよくわかりません。問題はそこではなく、どのようなプラットフォームでも開発できることです。
もちろん各プラットフォーム固有のコードはあります。が、プラットフォームの違いはある程度吸収した上でほぼ同じような機能が使えるのがLibreOfficeのメリットです。
開発者にとって開発しやすいということは、それだけ新機能が多く追加されることであり、またバグフィックスされることでもあります。これがユーザーのメリットでなくて何なのでしょうか。
多言語対応であることはもっと端的に明らかです。LibreOfficeに何人の日本人開発者がいるのかを考えてみましょう。
多言語対応であるからこそ、日本人以外でも日本語に関するバグが修正できますし、その逆もまた真です。
開発者を含め、たくさんの手を動かす人がいるからこそFLOSSは成り立っているのです。
やや話は脱線しますが、FLOSSは使うことも貢献だという興味深い意見も耳にします。
FLOSSは共有地の悲劇の典型的なモデルだと私は思っています。これが真だと仮定すると、なかなか興味深い事実に気づきます。
Wikipediaの解説によると、地球環境も共有地の悲劇モデルだそうです。
「ただ地球で生きていればそれが地球にとって良いことなんだ!」と発言すると、お前は一体何を言っているんだというツッコミが返ってくると思うのですが、それと同じ意味である「FLOSSは使うことも貢献だ」という言説はまかり通るというのは実におかしなことです。
もちろん、この解説をよく読めばただ使うのが短期的には一番得である、ということもわかりますし、そこから踏み出さなくてもまぁ何とかなってるじゃんというのも現状としてあるかも知れません。
が、それはいつまで続くのか、持続可能なのかという話です。そういうことはちょっとぐらい考えてもいいんじゃないかと思いますがね。