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張信哲(ジェフ・チャン)「雪國八月」(出身:台湾 活動:台湾/香港 発行:香港)

2007年10月31日 23時36分59秒 | CD紹介

 香港人が台湾で北京語アルバムを出すのはよくあるが、これは台湾人が香港で出した広東語アルバム。シンガポールやマレーシア出身の歌手には元々広東語を話す人も多いが、生粋の台湾人がわざわざ広東語を学んで、しかも1曲だけでなくフルアルバムを出すのは珍しい。しかし、張信哲は98年にもちゃんとした広東語アルバムをリリースしていて、香港にもしっかりファンがいる。9年ぶりのアルバムは、その期待を裏切らない出来だ。
 いきなりジャジーなサウンドの「寧靜雪」で始まる。Sylvain Gagnonのアップライトベースが響き、Ted Loのピアノが彩る。香港らしいバラード「算」、軽やかなボサ「微風掠過」、馮翰銘(アレックス・フォン)作曲の「轉機」は力強いゴスペル。韓国ポップスのカバーらしい「雨霖鈴」は二胡を使ってしっとりと。かと思えばイントロを聴いた瞬間はSolerの声が聴こえそうな「亂世佳人」は恭碩良(ジュン・コン)のドラムでバリバリロック! 最後の2曲はフォーク系で優しく歌ってくれる。
 歌唱力は元々文句をつけるところがないジェフ、広東語の発音もとてもネイティブでないとは思えないくらい。一番難しい入声も、弦を爪弾くように丁寧に発音している。丁寧すぎて不自然だと香港のファンは思うのかもしれないが、香港人だって海外育ちで広東語が母語かどうか微妙だったり、香港育ちでも入声が流れやすい最近の若い人の発音より美しいくらいだ
 プロデュースは主に舒文。ミュージシャンは上記のほかにDanny Leung、賢仔(ギター)、傑仔、單立文(パル・シン)(ベース)、Anthony Fernandez(ドラム)など、今香港で第一線の人々。コーラスのPatrick Lui(雷有輝、太極のボーカル)、細May、Jackie Cho、May Chanの4人はいつもながら“いい仕事”してる。どんな曲調もばっちりこなすし、特にパトリックのメロディに影のように寄り添うバックボーカルは曲に深みを与えている。
 歌詞カードのほかに、楽器やマイクやアンプについて詳しく説明する冊子がついている。それによると、使用時間に制限がある一般のスタジオでなく、プライベートなスタジオでじっくり作ったとのこと。マスターはアメリカで、上質な紙の歌詞カードはオーストリアでプリント。パッケージにもお金かかってる~。
 Twinsなど、どちらかというとアイドル路線と思われがちなレーベルEEGから、大人の鑑賞に堪えるこのアルバム。実は香港ヒットチャート第3四半期集計作業をしながら聴いたら、聞き惚れてしまって捗らなかった こういうアルバムこそ売れるべきだ。これが売れるような香港マーケットになってほしいと、切に願う
 


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