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華星(Capital)と新秀歌唱比賽

2005年05月12日 03時44分29秒 | 香港
 解説コメントに書こうと思ってちょっと調べたら、量が多かったので新しい記事として書くことにした。
 華星は香港のレコード会社。香港のTV局TVBの子会社としてスタート。TVBの新人歌手発掘番組「新秀歌唱比賽」を主催、入賞者を続々とデビューさせる一方、スター歌手を多く抱えて、80~90年代に勢力を誇った。所属した羅文、張國榮、梅艶芳、林憶蓮、郭富城、許志安、鄭秀文、、、まだまだ数え切れない。96年に「サウスチャイナ・モーニングポスト」社に買収されてTVBとの資本関係が切れた後は、TVBの後ろ盾を失って、若干勢いが弱ってきた。外資系大手レーベルが続々と中国現地法人を立ち上げて勢力を拡大する中、台湾や大陸に拠点を持たない華星は国語アルバムで市場を広げたい歌手の要望に応えられず、大物歌手が次第に移籍していく。海賊版が横行し、香港の広東語市場自体が縮小してCDが売れなくなり、古い楽曲のベストアルバムを安価で出しても利益が上がらず、経営が苦しくなっていった。
 売却を模索したこともあったようだがうまくいかず、とうとう2001年10月に従業員を解雇、営業を休止。所属歌手はそれぞれ新しい契約先を探さざるを得なくなった。
 「どうも危なそう」という噂はあったらしく、先を見越して早めに移籍した歌手はよかったが、会社を信じて残っていた歌手は大変だったようだ。実力派はどこかがすぐ手を挙げてくれるが、それほど売れてない人、俳優業中心の人、新人は次の契約が決まるまで随分かかっていた。蘇永康の仲良しの一人、梁漢文も、一度決まりかかった会社と結局契約できず、次のアルバムを出すまで手間取ってしまった。中でも大きな影響をこうむったのは、デビュー準備中だった劉浩龍。正東(Go East)に拾われ、なんとかデビューを果たしたが、華星から「CDを出せない」と告げられた時は「泣きながら歩いた」そうだ。上述の「新秀歌唱比賽」で、95年優勝の陳奕迅は翌年デビューできたのに、97年の劉浩龍は04年というのは、運悪すぎ・・・。
 華星の最大の功績は、「新秀歌唱比賽」で数多くの歌手を生み出したことといわれる。現在、この番組の主催は新興勢力ともいえるEEG英皇が行っている。歌唱力とタレント性を備えた“スター”を育ててきた華星に対し、EEGはTWINSなど“アイドル”で急成長。今後、かつてのスターたちのような大歌手を輩出することができるのだろうか? 「新秀歌唱比賽」自体、香港だけのものではなくなった。「全球華人新秀歌唱比賽・香港区選抜賽」として香港代表を選び、“世界大会”に送り込む。というと、スケールが大きくなって価値が上がったような気がするが、実際には番組の放送時間も短くなり、時間帯もいい枠からはずれ、すっかりさびれてしまった。“世界大会”は北米やオーストラリア、東南アジアなどからも参加するが、なんといっても大勢力は中国大陸各地の代表で、衣装だの振り付けだのを見ても限りなくプロに近い人が出てくるので、もうちょっとやそっとで香港代表は入賞できないのは明らか。当然、国語曲が中心になるし、視聴率も上がらないのだろう。一応、“世界大会”は上海・広州・香港の回り持ちで開催。司会者は各地から一人ずつ出て、香港の司会者は広東語で、上海の司会者は北京語で、広州の司会者は両方で(これがまた完璧なバイリンガル)進行していく。
 どういうわけか、「新秀」で優勝した人が一番売れるとは限らず、なかにはCDデビューしないままタレント活動をしばらく続けた後、家業を継ぐため引退した優勝者もいる。日本人男性にいまだに根強い人気を誇る周慧敏(ビビアン・チョウ)も入賞してない。アジアから世界に羽ばたいたCoCo Leeが、実は新秀で優勝を逃している(彼女のためにはそのほうがよかったかも・・・)。蘇永康と同期の李克勤がどうして入賞もできなかったのか謎だが、「セミプロみたいな人が落ちていった」(蘇永康談)ということはその年の方針が新人らしさにあったのかもしれない。案の定、歌手としては李克勤が先にデビューしてすぐ売れた。
 「新秀」の出身者同士は、レコード会社が違ってもどこか連帯感があるようだ。蘇永康の仲良し五兄弟(張衛健、許志安、梁漢文、呉國敬)も全員が「新秀」出身。梅艶芳は「新秀」出身者を集めてコンサートをやりたいと生前希望していたという。実現したら、何よりの供養になるだろう。私もそんなコンサートだったら絶対見たい。
 どうでもいいことだが、「新秀」の本選に残ってテレビに出られたけれど、結局歌手デビューもせず、芸能人にもならなかった人たちはどうしているだろう。リアルタイムで見た人については、ふと気になる・・・。
 ちなみに、審査員は音楽業界の人たちがつとめるが、日本からサンプラザ中野が審査員として参加したことがある。
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