Thank you for the music

好きな音楽のこと、あれこれ。その他諸々もあり。

林志「熟情歌」(台湾)

2005年06月16日 06時05分49秒 | CD紹介

 「じいふぇんしょう?」
 十数年前、単身赴任中の連れ合いを台北に訪ねた時のこと。レストランでステーキを注文したらウェイトレスにきかれた。状況からいってレアかミディアムかウェルダンを答えるところだが、初めて聞く表現だったので詳しく知りたかった連れ合いは「何て言ったの?どういう意味?」ときき返した。彼女は困って偉い人を呼びに行き、その人が丁寧に説明してくれた。やはりステーキの焼き具合を尋ねる表現で、漢字では「幾分熟?」ではなかったかと思う(間違ってたらごめんなさい^^;)。「熟情歌」のタイトルを見て、そんなことを思い出した。
 林志は90年代前半に活躍した男性デュオ、優客李林(Ukulele)のリードボーカル。よく伸びる透明感のある声、広い音域、特に迫力のあるファルセットで、デビュー曲「認錯」が大ヒット。相棒の李驥が書く美しいメロディで次々ヒットを出したが、97年に解散。その理由が「家業の印刷所を継ぐから」(?!)。翌年ソロで復活したが、以来家業とかけもちらしい(担当は営業)。
 ソロでは初めSonyから出していたが、今は自分のレーベル音でこつこつ作っている(ディストリビューションは全員集合という会社)。2002年の前作からはプロデュースも自分でやっている。
 今回は選曲のバリエーションが広がったようだ。イタリアンポップスや韓国ポップスは前からよくカバーしていたのだが、今回はスウェーデンポップスらしき曲もある。アレンジもかなり工夫されていて、どの曲も飽きない。
 すでにチャートインしている「説不出的告別」は呉慶隆のピアノとストリングスが美しい。ハープとチェロだけで切なく聴かせる「鱷魚的眼涙」(ワニの涙、悪人の偽の情けという意味がある)。彼としてはぎりぎりの低音から彼でなくては出せない高音まで駆使する、渋いジャズはBlissのGucciこと古皓の作曲だ。優客李林時代から得意とするフォークロックの「一念之間」あり、エフェクトを使ってドラマチックに歌う「眼晴不聽話」あり、、、最後は自宅のピアノで一発生録の「鳳凰花開的路口」、森山直太朗の「さくら」を彷彿とさせる友情の歌で終わる。
 とにかく“いい声”の人なので、以前はその声を聴かせるための曲が多かった(地声とファルセットの境目をこの人ほど滑らかに気持ちよく歌える人はいないだろう)。しかしこの歳になって、いい意味で芝居がかった表現や、ちょっとつぶしたような歌い方もできるようになって、面白くなってきたと思う。
 「葡萄は熟してはじめて酒になる/心は成熟してはじめて愛がわかる」というキャッチコピーがふさわしいアルバムだ。
熟情歌 @YesAsia.com

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする