よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

国家統制に走らざるを得ないオバマ氏の絶対矛盾

2008年12月29日 | 恐慌実況中継


カール・ポランニーは今だからこそ、読み継がれるべきだろう。

ポランニーが没した1964年以降、石油ショックが起こり、ベルリンの壁が崩壊し、旧ソ連が瓦解し、社会主義制度は瓦解し、あるいは中国では社会主義市場主義というような修正的な変質をきたしてきた。

バブル経済は何度となく繰り返しているが、失われた20年と一般にいわれる停滞の時代を日本のバブル経済はもたらし、そして今日、米国ニューヨーク発の世界恐慌が着々と進行中である。

20世紀後半の資本主義は、ケインズ主義、高度経済成長、大衆社会化、ソ連崩壊という経過を経て、新しい進化を続けていている。市場経済は、新自由主義という追い風を受けて、インターネットによる情報・知識革命、全てのモノゴトを債権化するセキュリタイゼーションと連動してグローバライゼーションとさえ命名されるにいたっている。

ポランニーが、もし今の時代に生きていたら、現代の「悪魔の碾き臼」が金融工学の精華を凝らして労働、土地、貨幣、すべてにまたがる手の込んだ複合的擬制商品を作ったことを見て腰をぬかしただろう。

フォン・ノイマンが基礎を作ったゲーム理論の上に乗って「悪魔の碾き臼」によって細かに粉状にされたサブプライムローンのような虚構の金融派生商品が、世界中の投資家、金融機関にばら撒かれ、それら遍満した金融商品が一気に不良債権化してバランスシートを痛めつける。

そして悪性の信用収縮がまたたくまに連鎖する。こうして現下、金融機関のみならず、実物経済セクターにまで極悪性のインパクトを及ぼしつつある。したがって現下の不況、恐慌は1929年の世界大恐慌とはまったく異質である。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とは、企業への貸付金の返済リスクを補償する金融派生商品で、CDSを購入すれば、ある企業が破綻して蒙る損失を全額補償する金融派生商品。アメリカン・インシュランス・グループ(AIG)は、リーマン・ブラザースに巨額のCDSを発行していた。

リーマン・ブラザースが抱えていたCDSの残高は40兆円。そしてリーマンは破綻し、そのあおりをもろに受けたAIGの株価も暴落。AIGが破綻すれば、6000兆円ものCDSが消えてなくなる。そして金融機関は巨額な引当金を積まなければならなくなる。そして金融恐慌が一気に連鎖してしまう。パニック。だから米国政府は税金を使ってAIGを救済したのだ。

市場は自己調整能力を持っているなんて言えたものじゃない。今後、金融機関のみならず、製造業までもが恐慌に飲み込まれていくのは必至である。そして、救済のために政府が国民から徴収した税金=公的資金を大量に投入していく。

中央銀行が輪転機を回して大量の紙幣を刷りまくる。そして財政当局が国債を大量に発行して紙幣を買い取る。ドル紙幣が世界中にばら撒かれ、極度の過剰流動性を引き起こしている。だから現下、ドルの価値は暴落しているし、暴落は続いてゆく。

ますます国家統制が陰湿に厳しく行われることになる。オバマが個人的にはもっとも忌み嫌う国家権力による過剰統制を、ほかならぬオバマ自身がやらなければならないのだ。皮肉なことである。