5月19日に出版されたばかりの立派な写真集をいただきました。
小平市の鈴木小児科内科医院院長の鈴木昌和先生が蒐集なさった哺乳瓶の写真とその歴史を記した本です。
鈴木先生は骨董市で横置きのガラスの哺乳瓶に出合って以来、20数年にわたりあらゆる哺乳瓶を探し求めました。
その数1000点余り。
医院の2階は瓶のコレクション専用ルームになっていて、昔の哺乳瓶だけでなく、膨大な量の瓶類に驚かされたものです。
2009年、取材に伺った折のことです。
初めて見る横置きの哺乳瓶には桃太郎や亀甲文様などあらゆる図柄があしらわれ、中でもこの表紙の青海波文様が美しかったこと!
芸術品のようでした。
「画一的な今の瓶に比べて、昔は吹いて作ったのでゆがみがあったり、気泡ができていたり、それが味わい深くて好きですね」
とおっしゃっていました。
当時からいずれ本にまとめたいと希望されていて、今年の年賀状には「ようやくできそうです」と書かれていました。
手元に届いた持重りがする、素晴らしい写真集に見入って「先生の念願が叶ったんだ!」と私は小躍りしました。
この本の最後に書かれていますが、瓶の撮影も先生ご自身の手で。
新しくカメラを購入し、透明ガラスの撮影方法を勉強し、照明器具まで買われたそうです。
苦労なさった写真は本当に美しく、戦禍や災害をくぐり抜け、子どもの命をつないできた哺乳瓶に対する先生の愛情を感じます。
(私の下手な写真では伝わりにくくて、ごめんなさい)
当時の世相を映すカラフルな哺乳器のパッケージ。
明治の頃は長いゴム管付きの哺乳瓶が使われていましたが、洗浄が難しく不衛生な面もあり改良が加えられていったとか。
そのような哺乳器の変遷を日本だけでなく、西洋の文献からも多く集められ、詳しく記されています。
母親が母乳を与えられなくなった時、乳母も得られない時、人々がいかに知恵と工夫を巡らせ赤子(人間)の命をつないできたかが、
写真とともに理解できます。
母乳だけで育ったという人も、白湯や果汁を飲む際、哺乳瓶に誰もがお世話になったことでしょう。
けれども赤ちゃんだったから記憶の範疇になく、私は母親になってからも当たり前のように便利な哺乳瓶を使っていました。
哺乳瓶に感謝もせずに・・・
もし哺乳瓶がない世界だったらどうしていたでしょう?
「縁あって私のもとにやってきた哺乳瓶たちをこのまま埋もれさせるのは忍びなく、何とか日のを日の目を見させてやりたいとの思い」
と先生は出版のきっかけを書いていらっしゃいます。
鈴木先生でなければ決して成しえない、限りない情熱とロマンを感じる究極の1冊だと思います。
◆『誰も知らない哺乳瓶の世界』
発行:幻冬舎メディアコンサルティング
定価:本体1500円(+税)
※アマゾンで購入できます
お嬢さんの哺乳瓶がまだとっておいてあるなんて、いいですね!