大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

中山道木曽路「奈良井宿」

2013年07月19日 10時56分24秒 | 木曽路十五宿街道めぐり
妻籠宿の古い佇まいを堪能し、いよいよ木曽路の最大のハイライトと思われる「奈良井宿」へ向かうことにしました。

奈良井宿内の光景

JR南木曽駅に戻り、14時34分発の普通列車に乗り、所要1時間23分で奈良井駅に到着します。奈良井到着時間は15時57分ですが、夏の太陽はまだ高く、日暮れまでにはかなり時間があります。

奈良井駅ホーム
JR奈良井駅

奈良井で降りる乗客は私たちを含んでほんの数人しかいません。夏休み前の平日ということでそれほど多くの観光客がきていないようです。

昔ながらの小さな駅舎が私たちを迎えてくれます。ここも南木曽駅と同じように駅員がいません。

古い町並みが残る奈良井の宿は駅からほんのわずかな距離から始まります。ほとんど駅に直結していると言っていいほどの距離です。
古い宿の町並みが始まる入口に立つと、旧街道が一直線に宿内を貫通している様子を見ることができます。その宿内の様子を見ると午後4時という時間にもかかわらず、観光客どころか住民の姿も見えないほど閑散とし、まるでゴーストタウンに来てしまったような雰囲気を漂わせています。

木曽路の奥深くまでやってきたような思いが強く感じるのがここ奈良井宿です。緑濃い山並みが宿を貫く旧街道 の右手に迫っています。そして旧街道から見えませんが左手には奈良井川が清らかな流れをつくり、その川の背後には美しい木曽の山並みが屏風を立てたように連なっています。

人影のない宿内

狸しかいない宿内

宿内の様子

あまりの静けさに、本当に人が住んでいるのかとつい思いたくなるような佇まいです。

宿内の旧街道には電信柱がないのでスッキリしています。静かな宿内を歩いていくと、聞こえてくるのが水の流れる音です。耳を澄ますと街道の下から勢いのある水の流れる音が聞こえてきます。本来であれば街道の両端にあったと思われる水路が暗渠になってしまったようです。

宿内へと進んで行くと、処々に「水場」が置かれています。ストレートに飲むことはお勧めできません。煮沸すれば飲めるということのようです。この水場は宿内の住民の方々が水撒きや鉢植えなどに水をさすために使われているようです。

それにしても行きかう人の姿がまったくありません。ほんとうに不思議な光景です。それでも宿内の両側に並ぶ家々は人が住んでいると思われる気配は感じます。時折現れる土産物屋さんも扉を開き営業をしています。

宿内の様子

奈良井宿は江戸口から京口までおよそ1kmにわたって形成されている宿場町です。その区間に昔ながらの千本格子を構えた家々が肩を寄せ合うように並んでいます。

宿内はゴミ一つ落ちていないほど清潔感に溢れ、家々の前には可愛らしい花弁をつけた草花が置かれ、町全体が歴史の博物館といった雰囲気を漂わせています。

ふつうの街では道のあちらこちらに様々な自動販売機が置かれているのが普通なのですが、ほとんど見かけることがありません。そして都会では次から次へと現れるコンビニも奈良井の宿内にはありません。

ということは簡単に飲み物などを入手することができないということに気が付きました。飲料水の自動販売機はわずかながら置かれていますが、その販売機も街道側に正面に向けられていないものもあります。やはりこの奈良井の宿には自動販売機は無粋なのでしょう。

そんな町の雰囲気を楽しみながら、まずは今日のお宿である「伊勢屋さん」へと向かい、草鞋を脱ぐことにしました。
伊勢屋さんの様子は別ページでご紹介いたします。

旅籠「伊勢屋」

伊勢屋さんに宿入りした後、夕暮れまでさらに宿内の散策を楽しむことにしました。

伊勢屋さんは宿内のちょうど真ん中あたりに店を構えています。ということは江戸口から500mほどの距離です。残り500mを歩けば京口に至ることになります。

宿を出て京口へと向かうのですが、ほんとうに人の姿を見ることがありません。奈良井宿を独り占めしているような感じです。
これも時間が制約されるバスツアーではなく自由きままな個人旅行であるが故のご褒美のような気がします。

伊勢屋さんから京口へ向かうこと僅かな距離で右手に「手塚家」と呼ばれる立派な建物が現れます。ここ手塚家はなんと慶長7年(1602)から明治に至るまで奈良井宿で問屋をつとめた名家のようです。家の前には明治天皇が行在所として使われたことを記念した石碑が置かれています。

手塚家

そしてさらに進むこと100mほどで宿内に設けられた「鍵の手」にさしかかります。それまで一直線に宿内を貫いてきた街道はここで大きく折れ曲がり、京口へとさらに続いています。

鍵の手

「鍵の手」はいわゆる枡形の一種です。宿内を貫く街道を入口から出口まで一直線に造ってしまうと、有事の際簡単に攻め込まれてしまうことを防ぐため、道を大きく曲げ進入を妨げるためのものです。

鍵の手からほんの少し歩いた右側の奥まったところに山門を構えるのが、奈良井五ケ寺の一つである「淨龍寺」です。
門前の説明書きによると当寺は元禄2年の5月27日にあの将軍家に献上する「茶壺」が逗留したと記録され、その後も毎年当寺に茶壺が逗留したそうです。

淨龍寺ご本堂

淨龍寺を過ぎておよそ100mほどで奈良井宿の京口に至ります。そんな場所に置かれているのが「高札」です。もちろん復元されたものです。

高札

この高札を過ぎると右手に奈良井の鎮守である鎮神社の赤い鳥居が目に飛び込んできます。神社入口に置かれた常夜灯越しに奈良井宿の家並みと宿を貫く街道が一直線に延びる様子が窺えます。

そして京口から京都へと向かう道筋は急に勾配をあげて、中山道中の最大の難所である鳥居峠へと続いています。そんな勾配がきつくなる道筋の脇から旧街道の石畳道があるようですが、日暮れ間近のため石畳道の散策は断念しました。

わずか1km足らずの宿内はほとんど平坦な立地ですが、宿内を抜けるとあっという間に登り坂が始まる奈良井宿は木曽谷の僅かな平坦地に造られた箱庭のような宿場町なのです。

鎮神社の鳥居

京口の常夜灯

わずか1kmの長さの奈良井宿なのですが、江戸口から京口まで出会った人の数はほんの数人という極めて稀な経験をさせていただきました。

閉店間近の漆器屋さん

夏の陽もやや西に傾き、宿内のほとんどの店は戸を閉めてしまい、静寂の度合いが増してきます。都会住まいの我々にとってはめったに経験できない静けさです。おそらくこの体験は忘れそうにありません。

再び宿内を辿り江戸口方面へと戻ることにしました。というのも宿に沿って流れる奈良井川に見事な木橋が架けられているといいます。それではということで見に行くことにしました。

同じ道筋を辿ることになるのですが、何度通っても飽きることはありません。いったん宿の江戸口まで戻り、ここから街道をそれて奈良井川の畔へと降りていきます。およそ200mほど歩くと大きな広場が現れ、その向こうに見事な「太鼓橋」が姿を現します。
橋の名前は「木曽の大橋」と呼ばれ、総檜造りの贅沢なものです。

木曽の大橋

さあ!そろそろ夕食の時間が迫ってきました。夕闇迫る静かな宿内をそぞろ歩きしながら宿に向かうことにしました。



中山道木曽路・静かな妻籠宿の佇まい
木曽路・奈良井宿の老舗旅籠「伊勢屋」体験記





日本史 ブログランキングへ

神社・仏閣 ブログランキングへ

お城・史跡 ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿