ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~好きに使え~

2013-02-12 | 散華の如く~天下出世の蝶~
“着れぬ”
継ぎ当ては貧乏臭く、見っとも無い。
そう突っぱね、新調するように言う。
尾張方々と美濃田舎では育ちが違う。
モノの言い方、考え方、文化、習慣、
お金の使い方も、全て、違っていた。
父の考え、母の教えが覆され、私は、
ビ、ビリビリーッ
殿の御召し物を引き裂き、真っ二つ。
折角、繕ったのに。
まだ着られるのに。
悔しくて、腹が立って、泣きながら、
私の輿入れの時の、衣装を引き出し、
ビリビリーッ
美濃尾張の訣別とばかりに引き裂き、
ちくちく…、ちくちく…、
しくしく…、しくしく…、
徹夜して縫い上げたのが、
片身に輿入れの衣装、私の、紅の袿(うちき)と、
もう片身に殿のそれ、濃緑(こみどり)を合わせ、
左右異なる色の、両家の半々の片身御召し物を、
ふん、と突き出し、
帰蝶「まだまだ着られまするッ」
殿はそれを手に、ふわり、羽織った。
そして、何か閃いたか、
“濃、濃…ちょっと来い”
私を連れて、衣裳蔵に。
蔵の肥やし、昔の御召し物を一つ一つ取り出し、広げて語って見せた。
これは、お気に入り。しかし、アイツ信輝と相撲、破けてしまった。そいつは幅が狭い。
しかし、柄が良い。そうそう、これ初めての鷹狩。思い出深い。これら全て好きに使え。