ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~出世欲~

2013-02-06 | 散華の如く~天下出世の蝶~
敵国に嫁いだ母が、敵国に嫁ぐ娘を躾ける。
その時は口うるさい母としか思えなかった。
だが今、敵国に嫁ぐと分かって、市を躾け、
あの頃の母の気持ちが分かるようになった。
娘を持つ母親は、心中穏やかでは無かろう。
帰蝶「分かった…殿に申し伝えておこう」
私の一存では返答しかねる案件で、ここは一つ、
殿の御意向を仰がねばなるまいと、そう答えた。
こい「いえ、利…」ハッとして、口を噤む。
帰蝶「御寧々…」向こうから、
ててて…と速足でやって来た。
寧々「御方様、お母様。伯父様がお待ちにございます」
この伯父というのは、私の心を救った医師で、
私の死産から度々、足を運んで下さっていた。
今は奇妙丸と茶筅丸の往診に来て頂いている。
私が立ち直れたのもこの医師のお蔭。それに、
私に感染症も無く、ややもすくすく成長して、
有り難いことである。
この頃の衛生状態は悪く、無事出産を終えても、
母が、その命を落とす事も、また、やや三つ前、
疫病に掛かって、その幼き命を落とす事も多い。
もちろん、母子だけでなく、殿方にしてもそうである。
戦の傷痕、そこから感染症に掛かり、病…命を落とす。
そういう時代だからこそ、薬師堂が要る、と殿に嘆願。
この医師に、そこ薬師堂(医務室)で働いて頂いている。
帰蝶「分かった、すぐに参ろう」
こい「…はい」
あの時の、私の指示、
名医をここへ
それで呼ばれた名医は、こいの長女の嫁ぎ先であった。