ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~まどろこい~

2013-01-29 | 散華の如く~天下出世の蝶~
罪人の目を追い、後ろ振り向く、と
帰蝶「と…殿…」
殿が腕組み、私の真後ろにおられた。
話に夢中になり、気が付かなかった。
信長「然様」
腕組みをゆっく…と外し、
除けた火縄銃を手に取り、
徐に構え、
ドンッ
帰蝶「きゃ」
あまりに大きな音に、瞬時耳と目を塞いだ。
破裂音の余韻が消え、恐る恐る罪人を見る。
「空砲…?」
何も起こっていない。海の男は笑っていた。
そして、傍に控える家臣に、
信長「火薬…」を申し付け、
火薬を砲筒に詰め、詰め棒を落とす。
今度は外の的に向かい、鉄砲を構え、
「火…」
火縄に点火させ、
数秒、バチバチ、
音を立て、縄が燃える。
燃え尽き、ドンッ
帰蝶「な…」何が起こったか分からず、殿を見て、扇の的を見た。
的はゆらゆら揺れるに留まり、落ちなかった。
罪人「アンタ、とこっろい戦しとうな」
信長「真まどろこしい(イライラする)」
帰蝶「鉄砲とは…斯様なモノにございますか?」
初めて鉄砲の威力を肌で感じた。しかし、なんと喧しきモノかと思った。
殿の弓矢は美しく静か。一直線で命中率も高い。殿に反し、鉄砲は醜い。