ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

紅白料理、イッチョ作ってみっか

2011-08-07 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
着替えを彼女の畳まれた着物の隣に置こうとしたら、その上に、笹竜胆の、あの手拭いが置いてあった。歯痒い思いで…「ッ」ギュッと笹竜胆を握ったら、
志津「懐の物騒なもん、置いて行きなッ」と注意された。
池田「…はい」肝心なモノや感情は置いて行けって事か…。仕方なく、大切な形見の懐刀を自分の着替えの上に置き、部屋を出て…ハッとした。右手の笹竜胆は握れたままだった。
嫌なモノを一緒に持って来てしまったとそれを懐にサッと隠し、チッと廊下を照らす月を見た。そこには、彼女の通り名そのまま映す月の、淋しげな横顔が覗いていた。
いつから、あんなにも淋しい表情をするようになったのか…廊御方(ろうのおんかた)様。
誰が付けた通り名だろう?
“もう…御方様じゃない!もう、御方様って呼ばないでッ!”
「では、どうお呼びすればいいのですか?」と、淋しい横顔に訊ねてみた。
答えるわけもない…か。ふぅと溜息付いたら、
「池ちゃんッ」と呼ばれた。不愉快な呼び名だ…と振り返って「なんです?」と返事したら、
富樫「女将、知らねぇか?」
池田「女将さんなら、彼女、診ていますよ」
富樫「ふぅん」と、買出しの荷物を突き出し、
池田「…?」それを受け取って…、
富樫「腹減ったな」パサッとエプロンを外し、
池田「そう…ですね」それを、俺の肩に掛けて…、
富樫「いい湯だったか?」と、俺の濡れた頭をクシャと乱した。
池田「えぇ…」その大きな手を頭で払い除け「丁度いい、湯加減でした」と答えたら、
富樫「次、入ってくら♪」と、温泉に行った…。
池田「ふぅ…」富樫さんの背中に「どうなっても知りませんよ」釘差したら、
「ククッ」と笑って、継「薬でも仕込むのか?」と買出しの荷物の中から酒を取り出した。
池田「酒盛りですか?」
継「月見酒といっか?」と誘ったが、
池田「遠慮します」と断った。
継「とがっさんから逃れられると思うなよ」ニッと笑った。
池田「…では、手伝って下さい」
継「よし来た。紅白料理、イッチョ作ってみっか」