野口町をゆく(79) 大庫源次郎物語(6) 手製の教科書
源次郎は、百姓仕事に追われ、出席も危なくなりました。
それに、予習復習の時間も充分できません。ですが、通知簿には甲がずらりと並びました。
高砂の町から通学する子たちは、親から教科書はもちろん、参考書も買ってもらい、風呂敷に包んで登校するのが普通でしたが、源次郎は、教科書も買えません。
父と約束して進学した以上、40銭の月謝も肥え汲みや近所の子守り、野良仕事などのアルバイトで稼ぎました。
そして、教科書は、全部写すことにしました。
友達に頼んで新しい教科書が出ると借り、暗いランプの下で、毎夜遅くまで、毛筆で半紙に写し取りました。
写す間に教科書の内容もわかりました。手製の教科書が一冊でき上がると、級友より完全に一歩先にマスターすることができていました。
「源やんの教科書」は、もう学校で誰も知らぬ者がいないほど有名になっていました。
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