大きな本箱を処分した時、古い本が何冊かあった。
1.織田信長(山岡荘八著全2巻)
2.宮本武蔵(吉川英治著全4巻)
3.名言名訓集(武者小路実篤著)
4.三太郎の日記(阿部次郎著)
今でも、もう一つの本箱の中に入っている。
織田信長と宮本武蔵は二度目を読破したが、
後の二冊はまだ目を通していない。
「名言名訓集」は
昭和11年1月1日発行のキング新年号別冊付録。
昭和11年=1936年の発行、
つまり86年も前に発行されたものである。
雑誌「キング」は定価70銭。
その付録を編集したのが武者小路実篤で、
発行元は大日本雄辨會講談社 野間清治とある。
現在の講談社です。
(雑誌「キング」新年号付録「名言名訓集」)
子供の頃の記憶では、
「キング」と言う雑誌が有ったのは覚えている。
付録の「名言名訓集」を手に取ると、
紙は黄色に変色して居り、
印刷された文字を読むのも大変だ。
なぜかと言うと、
すべての漢字にひらがなでルビがついている。
(すべての漢字にフリガナがあるキング)
この当時、キングなる雑誌を沢山売るには、
平仮名しか読めない読者層にも購入してもらう必要があったに違いない。
武者小路実篤の序文を紹介したい。
(旧かな使いのまま)
「人間は、何かの時に、相談相手の欲しいものである。
自分の考へだけでは不安で、他人から教へられたリ、
鼓舞されたりしたいものである。
その時、自分のわきによき友人がゐてくれればいいわけだが、
中々さう云うことは望めないものだし、友人にも限りがある。
さう云う時、一番、いい友達は本である、殊に優れた人々の名言、
名句である。それ等は、優れた人の血のにじむやうな體驗から生まれた言葉で、
我等の心に強くひびき、我等を正しく導き、又鼓舞してくれる。
――後略」
なぜかと言うと、
日本で小学校が義務教育になったのが、
明治40年である。
すでに亡くなったボクの母が生まれた年に、小学校が義務教育になった。
この年以降に生まれた日本人で、
文字が書けない、読めない人は一部を除き、
いなくなった筈である。
つまり、誰もが平仮名は読めるようになった。
ちなみに、時代は違うが、1970年に米軍横田基地近くに勤務していたころ、
米軍兵士の識字率は66%と聞いた。
アメリカは土地が広く、
学校に通いきれない人が多いことが
影響しているということだった。
その時、日本の高校進学率は98%であった。