楽しんでこそ人生!ー「たった一度の人生 ほんとうに生かさなかったら人間生まれてきた甲斐がないじゃないか」山本有三

     ・日ごろ考えること
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     ・おくのほそ道を歩く

⑱看護婦さんの仕事6(檻の中 13)

2003年10月02日 14時25分00秒 | つれづれなるままに考えること
(食事)
糖尿病のMさん 

中華のコックさんだったそうだが、
何を勘違いしているのか、
キャバクラのホステスとかん違いしたのか、
始終看護婦さんを呼ぶ。ナース・コールを押しては、
看護婦が来ると、

「違う お前じゃない」という。

看護婦が帰ると、またナース・コールを押して看護婦を呼ぶ。
散々呼んだ挙句に、お気に入りの看護婦が来ると、

「今日のお昼の食事メニューは何だ?」という。

看護婦もあきれて、
次からは相手にしてくれない。

狼少年になって本当に苦しい時に困っていたそうである。
隣人が、見かねて代わりに看護婦さんを呼んであげたとのこと。
患者うちで評判の人物となったが、
これでは大した中華料理もできなかったに違いない。

こんな患者の面倒をみる看護婦さんも楽ではない。

本題は、これから...

食事のメニューは、談話室の入り口ドアーに、
10日分が掲示してある。
入院した最初の頃は、気にも留めなかった。
治療が進むにしたがい、薬が重なっていくのであろう、
副作用は日に日につらくなり、
食事もままならなくなる。
抗がん剤投与の第二クールがはじまると、
吐き気、血糖値の上がり具合、
便秘の期間の長さ、
白血球の減少、
口内炎のでき方、

すべて第一クールより倍増する。
第一クールでは、吐き気は、
ちょっとした二日酔い程度で、
これなら食事も大丈夫と、
吐き気を我慢しながら食べることができた。

しかし第二クールでは、
ちょっとした匂い、
口の中に入れた食べ物の味にも敏感になり、
我慢なら無い吐き気に変わった。
加えて、血糖値が上昇したことで、
食事制限が加わり、塩分控えめ、
カロリー控えめで、味がついていない。

口の中が荒れているのも手伝って、
食べ物が口に入ったとたん、ゲッとなる。

でも体力を維持するために、
少しでもお腹に入れておかなければならない。

そんな時、食事のメニューがあるのに気がついた。
明日のお昼は、「マグロの照り焼き」。
ただ、それだけのために退院の時間を延長する人がいるくらい。

ところが、食事制限のある私には、マグロの照り焼きどころか、
なんか脂肪分の少ない塩焼きの魚。

塩焼きとメニューにはあるけれど、
ボクは一日何グラムと塩分が決められているから、
塩抜きの塩焼き魚。
口に入れても喉を通らない。

落語にある。
(けちな家主さんが昼食に梅干を眺めて、
酸っぱいと思うとそれだけで、ご飯が食べられる。)と。

同じように魚を見るだけで、ご飯を食べた。
翌日は、「トンカツ」期待に胸膨らませていると、
トンカツはおあずけで、
昨日と同じ焼き魚。
ここでボクの堪忍袋の緒がきれるところだが、
じっと我慢した。

しばらく経って、メニューでは、
翌日「牡蠣フライ」とあった。
フライはカロリーが高く、
カロリー制限のあるボクの食膳に上るわけが無い。
しかし替わりに塩抜きの焼き魚では、
とても食べられそうにない。
食べ物のことでは、散々苦労しているので、
朝食後、食べ終わった食器をのせたお盆に、

手紙を置いた。
調理室に届くかどうか分からないのだが。
「明日の献立(牡蠣フライ)を私にも食べさせてください」と。

置いた手紙のことは、どうせ調理室には届かないだろうと、忘れていた。

午後15:00頃、婦長さんとやや緊張の面持ちの見かけない看護婦さんが訪ねてきた。
婦長さんが病室に来る時は、
週一回教授回診がある時だけだ。
「お盆にありました手紙の事で、調理室の栄養士さんです」と婦長さん。

「実は、あなたはカロリー制限があって、御希望に添えないのです。」
と栄養士さんが言う。

「カロリー制限があることは、私も知って居ます。
例えば明日の献立にある牡蠣フライが、
普通の人は五個あるとして、カロリーが高いのなら、
ボクは一個でも良いのです。いいえその半分でも良いのですが」
とボクの主張。

栄養士さんは、脂肪、たんぱく質、炭水化物、
いろいろ組み合わせの中で必要栄養とカロリーの関係で、
食事のメニューが構成されていくので、
牡蠣フライは提供できないと言う。
こんな時ボクを納得させるのは、理屈では無理である。

「いろいろ御不満はあるでしょうが、申し訳ないのだけれど、
御期待に添えないので、謝りに来ました」と言えば、

無理難題を解っていて出したお願いである。ボクは恐縮して

「すみません、わがまま言いました。」

で終わってしまう。
しかし、理屈を並べられると、
もともと真っすぐでないボクのへそがさらに曲がってしまう。

「事情はあるでしょうが、無理を承知で書いた手紙だから、
何とかして欲しい」と主張。

さらに追い討ちをかけて言った。

「どうせ 長くても三年の命、
下手をすれば一年かもしれない人がお願いでも駄目ですか?」

これが 最後の切り札。これでは反論しようが無い。

先生と相談しますと、婦長さんも栄養士さんもすごすご帰っていった。
すこしやり過ぎたかと反省していたら、
やがて 主治医が来ていう
「HIDE-SAN!食事の件は、あれは駄目ですよ!」
「――」
ボクは黙ってうなずいた。

トラブル解決の鉄則は、

「人を変え、時を変え、場所を変える」を思い出した。


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昨日の一善 (一日一善)

2003年10月02日 14時19分00秒 | つれづれなるままに考えること
散歩途中、歩道に水が流れていた。

水源は水道栓の締め忘れ。
何処の会社か知らないが、
水道の蛇口を締めてあげた。

今、水飢饉で倒れている人が世界に何人いるだろうと、

思いを馳せながら。
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