昨日の臼井懇話会公開講演会では、映画「鐘の鳴る丘」の鑑賞と隆太役の野坂頼明氏のお話しを伺いました。
この映画は、昭和22年から昭和25年までNHKラジオで放送された菊田一夫作のラジオドラマを原作としたものです。
ラジオドラマの放送回数は790回に及び、昭和23年に松竹で映画化されました。
空襲で家も親も失った戦災孤児(映画中は浮浪児と表現)たちや傷痍軍人がまちにあふれていた時代、復員してきた主人公の佐田啓二が
孤児たちと知り合い、やがて信州の山里で共同生活を始めて生きていくさまを描き大ヒット。
主題歌の『とんがり帽子』は、私でも懐メロ番組で聞いたことがあります。
ピーカンと呼ばれる晴天の日しか撮影が出来なかったので、夜明けからトラックに乗り込み撮影現場に向かったそうです。
ロケ地の信濃四谷(栂池高原 白馬大池)にあるスキー場には、「鐘の鳴る丘ゲレンデ」という「とんがり帽子の塔」モニュメントが
建っているそうですが、この歴史を知らなかった20代の私は、全く気が付かず、今更ながらに恥ずかしい思いをしています。
声を後からアフレコ録音や、川に落ちるシーンのご苦労や山の男達が鉄鍋でしゃけ缶詰を入れた味噌汁を作ってくれた事など
食べる事が楽しみだったことが、当時の野坂さんの絵日記に書いてあるそうです。
大船撮影所の月ヶ瀬食堂での小津安二郎や佐田啓二と結婚する食堂の娘さんのエピソードも紹介されました。
作者の菊田一夫は、幼少時に肉親に捨てられた過去を持つからこそ、戦争孤児の気持ちを表現出来たのではないでしょうか。
また、さらにはこのラジオドラマも映画も主題歌も大ヒットしたというのは、この子どもたちの苦しみに共感できたから
だと思いますが、戦後まもなくで共感はできるけれどもそれぞれが食べるのがやっと、生きていくのがやっとで、手を差し伸べる余裕など
なかったのでしょう。親も家もない子ども達が、誰からも受け入れられないで死んでいく悲惨さに涙が止まりませんでした。
このような映画を通じて、本当の平和を次世代に伝えていかなければと思います。
最後の吉田とく会長のご挨拶と主題歌『とんがり帽子』の全員合唱(全員歌える!)で、素晴らしい公開講演会の幕を閉じました。
お誘いくださった、ライオンズのお仲間に感謝です。