中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

何もしていません

2012年10月29日 | 情報
社業に忙しく、何も対策を打っていないが、「うつ病」で休職する社員が出てしまった。
何をしてよいのか、アドバイスがほしいとの、依頼がありました。
以下に回答の要約を公開します。

なによりも初めにしなければならないことがあります。
それは、り患者が安心して治療・療養に専念できる環境をつくることです。
治療・療養は、第一義的にり患者本人の責任です。会社が、初めから「手取り足取り」をする必要はありません。
しかし、り患者自身は、どうしたらよいのか迷ってしまうのが実情でしょう。
家族も、どうしたらよいの、と困ってしまうでしょう。そこで、り患者本人や家族から会社に相談があるでしょうから、
会社は、そこで初めて、手を差し伸べればよいのが基本です。
り患者本人や家族が困っている様子がわかったら、(ないしはわかったふりをして)手を差し伸べることをお勧めします。
そうしないと、いたずらに時間だけが経過してしまい、状況は悪化の一途をたどるからです。

まず、会社の諸規定を説明します。一般的な従業員は、会社の諸規定を知りません。
ですから、休んでしまったら給料がもらえない、会社を解雇される、といった不安にさいなまれます。
具体的には、最初に有給休暇の消化を説明します。それから、会社の休職制度です。調査データによると
中小企業の休職期間は、1年間から2年間くらいのようです。休職制度を利用すれば、会社を解雇されることはないと説明します。
次に、健康保険の傷病手当金です。原則として1年6か月間、給与の60%が支給される制度です。

ここまで説明すれば、り患者本人も家族も、まずは一安心でしょう。安心して治療・療養に専念できます。

次は、精神科医を選びます。
り患者が診察に訪れるのは、最初は、内科や心療内科、ひょっとして外科かもしれません。
しかし、最終的には、精神科専門医に受診することが必要です。しかも、り患者が信頼できる、精神科医を選ぶことが大切です。
アメリカの中上流層では、身近に牧師・弁護士、それに精神科医がいることが必須とされていますが、
日本では日常的に、精神科を受診することは、まずありません。ですから精神科医が町のどこにあるのかもわかりませんし、
優良な精神科医は誰かなどの知識もありません。
そこで、筆者は、内科のかかりつけ医に紹介してもらうことを推薦しています。
会社が、紹介することもあるでしょう。しかし、会社が「指定」した場合、その精神科医での治療が順調であれば問題は
ありませんし、感謝されるでしょうが、治療が不調に終始し、病状が悪化することもあります。
この場合、り患者本人や家族から会社に責任を追及されことも考えられます。
ですから、会社が精神科医を紹介する場合は、必ず複数の精神科医を紹介し、選定はり患者本人や家族の責任にすることも
考慮する必要があります。

次回に続きます。
コメント
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