中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

カスハラ原因と労災認定

2024年07月24日 | 情報
大きな労務課題になっているカスハラ問題は、対策を講じていないと
企業にとって致命的な責任を問われかねません。
「現場レベルで、何とか対応しろ」では、通用しません。

〇住宅メーカー社員の自殺、カスハラ原因と労災認定…「銭なんか払えねえ」と客から強い口調でクレーム
2024/07/23 読売

2020年に住宅メーカーの男性社員(当時24歳)が自殺したのは、
客から著しい迷惑行為を受けた「カスタマーハラスメント(カスハラ)」などで精神疾患を発症したことが原因だとして、
柏労働基準監督署(千葉県)が労災認定していたことがわかった。
自殺とカスハラの因果関係を認める労災認定が明らかになるのは異例
男性は、19年4月に埼玉県越谷市の「ポラス」に入社し、関連会社で注文住宅販売の営業を担当。
千葉県内の住宅展示場で働いていた20年8月末、社員寮の自室から飛び降りて亡くなり、
両親が22年2月に労災申請していた。
労災認定は昨年10月。
認定などによると、男性は20年2月、住宅を新築中の男性顧客に追加費用が必要になったと説明したことをきっかけに、
この顧客から 叱責しっせき を受けるようになった。
業者が汚した隣地の外壁を清掃させられたほか、休日に電話に出なかったことに怒りをぶつけられたこともあった。
こうしたクレームの詳細を上司らは把握していなかった。
20年8月上旬には、業者が現場近くの路上に駐車し、近隣住民に迷惑がかかっていると顧客から強い口調でクレームがあった。
男性の携帯電話には「そんなんじゃ銭なんか払えねえぞ」「すいませんで済むか、おめえ」などとまくし立てる音声が残されていた。
男性は、責任者だった現場監督とともに顧客宅を訪れて謝罪したが、
20分ほど一方的に話を聞かされ、「バカ」などと責められたという。
これらを踏まえ、同労基署は、精神障害の労災認定基準にある
「顧客らから対応が困難な注文や要求を受けた」「顧客らから著しい迷惑行為を受けた」にあたると指摘。
強い心理的負荷がかかり、精神疾患を発症したと判断した。
「著しい迷惑行為」については、厚生労働省が昨年9月、カスハラの類型に位置付け、労災の新たな認定基準に加えている。
両親側代理人の生越照幸弁護士は取材に対し、「利益をもたらす客に企業側が強く対応するのは難しく、
カスハラの問題は表面化しにくいが、今回は通話の記録があり、認定の決め手の一つになった」と述べた。
一方、今回の認定は、会社側の対応も問題視した。
クレームを受けた際の相談・報告体制のルールが会社側になかったためだ。
ポラスは「カスハラなどを理由とする労災認定を会社として 真摯しんし に受け止め、誠意を持って遺族に対応している。
再発防止に向けた取り組みを引き続き、行っていく」とし、
カスハラ相談窓口の拡充や、外部機関と連携したメンタルヘルスケアなどに取り組んでいるとした。

両親「客なら何をしてもいいわけではない」
男性の両親が今月取材に応じ、「客なら何をしてもいいわけではない。同じような被害が二度と起きてほしくない」と訴えた。
両親によると、男性は幼い頃から不器用だが、責任感が強い性格だった。入社1年目は販売成績が優秀で会社から表彰された。
ところが亡くなる2か月前、父親に「2年目の壁にぶつかっている」と伝えていた。
「みんな忙しそうで、助けてもらえる時間がない」とも漏らしていたという。
両親は、息子の悩みに気づけなかった自分たちを責め続けている。
その上で、父親は「客は怒りをぶつけられる側の気持ちをほんの少しでも想像してほしかった」とし、
母親は「助けを求められる職場環境を整えてほしい」と話した。


〇(既報)精神障害の労災認定、5年連続最多 「カスハラ」は52件―厚労省
時事通信 経済部 24.6.28

厚生労働省が28日発表した2023年度の労災補償状況によると、仕事での強いストレスを原因とする精神障害の労災認定は883件に上った。前年度から173件増え、5年連続で過去最多を更新。背景にはパワハラが労災の原因として認められるとの認識の広がりがあるとみられる。
過重労働が原因の脳・心臓疾患を合わせた全体の労災認定件数も、193件増加の1097件となり、過去最多となった。このうち死亡や自殺、自殺未遂につながった事案は14件増えて135件だった。
精神障害の原因で最も多かったのは「上司などからのパワハラ」(157件)で、「セクハラ」(103件)が続いた。23年度から「顧客からの著しい迷惑行為」を原因の類型に追加し、カスタマーハラスメント(カスハラ)が労災の原因となり得ることを明確化。52件が認定された。

〇(既報)心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました
令和5年9月01日(金) 照会先 労働基準局 補償課

【認定基準改正のポイント】
・業務による心理的負荷評価表※の見直し
具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加
具体的出来事「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加
心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等) 
※実際に発生した業務による出来事を、同表に示す「具体的出来事」に当てはめ負荷(ストレス)の強さを評価

・精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める

・医学意見の収集方法を効率化
専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更
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