中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「リモハラ」の危険

2020年06月08日 | 情報

テレワークの普及で、新たな問題点が浮上しているようです。

小職のブログを再掲します。考え方は間違っていないように思います。
「4月の自殺者 2割減」20200515
リモートワークの普及で、実務のやり取りのみに集中してしまい、
何とはない会話が減っているようです。
ヒトには、このさりげない、一見に無駄にも思える会話が重要なのでしょう。
オンライン会議だけではなく、定期・不定期な出社によるコミュニケーション等、
いろいろな試行錯誤が必要でしょう。
アナログの領域を増やすことが大切と考えます

テレワークに潜む「リモハラ」の危険
2020/5/31 日本経済新聞

新型コロナウイルスへの対応で在宅勤務が急速に広がるなか、テレワーク特有のハラスメントのリスクが浮上している。「リモートハラスメント(リモハラ)」「テレワークハラスメント(テレハラ)」などとも呼ばれ始めた。文字だけのやり取りの増加や、部下の働いている姿が見えない状況が引き起こすパワーハラスメント(パワハラ)や、在宅で私的な部分が垣間見えてしまうことが引き金になるセクハラが起こりうる。コロナ後もテレワークが定着するなかで働き手の不満が蓄積する可能性もあり、個人の意識付けや企業の対策が必要になりそうだ。

■パワハラ防止法も施行

「通勤の負担がなくなってありがたいのだが、上司とのやりとりでストレスも感じる」。あるメーカーに勤める都内の30代女性会社員は、テレワークで上司との主なやりとりが口頭からオンラインに代わり、メールやメッセージで憂鬱になることが増えたという。「資料提出は今日の17時までに。オンライン会議は14時から時間厳守で。在宅勤務では明確な成果が求められます」と、業務指示の要点のみを連ねたメールが毎朝送られてくる。指示は明確だが、自分から言わない限りこちらの状況は省みられず、ねぎらいもない。

業務の指示などを受ける際、普段なら顔を見て話しながら進められるが「メールだと、一方的に指示されている感覚に陥る。特に、言いにくいことを伝えるときに態度で示すなどの余地がなくなった」という。

在宅勤務は新型コロナウイルスの感染拡大防止策として一気に広がり、政府が提唱する「新しい生活様式」のなかでも引き続き活用が求められている。ただ、緊急対応として広がっただけに上司、部下双方で特有のストレスもたまりやすく、ハラスメントにつながりかねない。

ちょうど、6月にはいわゆる「パワハラ防止法」が施行され、まず大企業からパワハラの相談に応じたり被害を調査したりする義務を負うことになる。「テレワークを契機にしたトラブルが実際に紛争に至っているケースまでは出ていない段階」(企業からの相談を受ける真武慶彦弁護士)ではあるが、テレワークに伴う新しいハラスメントの芽を気にして、対応を検討する企業は確実に増えている。

■文字中心のやりとりにリスク

専門家の多くが指摘するのが、メールやチャットといった文字のやりとりが多くなることによるコミュニケーション不全が引き起こすパワハラだ。もともと、文字のみのやりとりは先鋭化しやすい傾向があると言われていたが、リモート環境では不可欠なツールだ。今津幸子弁護士は「LINEや友人同士のやりとりでよく使う顔文字やスタンプは行間を補う効果がとても大きい」と説明する。一方、仕事のメールでは顔文字やスタンプは一般的ではないため、言い切りや端的な表現になりやすく、よりいっそう冷たく聞こえたり、命令調が強く感じられたりする。

対面であれば相手がどう受け止めたか、表情や態度でも読み取れるのでその場でとりなしたりできるが、リモートだと修正しづらい」(今津氏)点は大きいという。安倍嘉一弁護士は対応策として「ビデオ通話などを活用して1対1で話す『ワンオンワン』などの機会を増やすのが有効ではないか」と助言する。

在宅の部下を過剰に監視する状況にならないかも気をつけたい。上司からすると平時なら近くにいた部下の姿が見えず、「サボっているのではないか」と疑いたくなる場合もある。ただ頻繁すぎる連絡や、常時のモニタリングなどを求めるのは行き過ぎになりかねない。技術的にはカメラやモニタリング機能などで常時監視することは不可能ではないが、「職場にいても、常時特定の部下を見ているわけではないはず。常に監視されているという風に思わせてしまうのは、健全な職場環境という観点からすれば心理的なマイナス面のほうが多いのではないか」(真武氏)という。

プライバシーへの配慮も必要だ。個々の従業員の家の環境は異なるため、適切な指示のためには個人の状況を把握する必要もある。その際は「個人や家庭の状況を必要以上に知ろうとするのではなく、仕事のうえで何ができて何が難しいのか観点で確認するといいだろう」(安倍氏)。

■「私的な部分」でうっかりも

セクハラはどうか。比較的線引きが難しいパワハラと異なり、セクハラやマタニティーハラスメントは判断がつきやすい類型とされているが、ここにも特有のリスクが潜む。近年は必要以上に他者のプライベートに深入りしないようにする意識も浸透してきているが、皆が自宅にいることで、プライベートと仕事の垣根が崩れやすい状況があるからだ。

オンライン会議で背景に自宅が映りこんだり、私服の部下を見たりして、つい自宅や家族について言及してしまう、といったケースもありそうだ。「せっかくだから家族を紹介して」などという要望は不快に感じる人も多い。プライベートにみだりに触れられたくないという人は増えているのだから、上司はもちろん、同僚同士でも注意したい。

また「重大なセクハラはお酒が引き金になることが非常に多い」(今津氏)というなかで、人気のオンライン飲み会も気をつけたい。通常の飲み会ができないからといって、部署の飲み会、取引先も含めた飲み会、などに発展してきたらどうか。オンライン飲み会では小グループに分かれた会話もできず、目上の人がいたら配慮せざるを得ない。近年は「飲みニケーション」が下火であったことを踏まえれば、むやみな誘いは避けたほうが賢明かもしれない。

実際にハラスメントのトラブルになった場合はどうか。特にパワハラは弁護士に持ち込まれる案件でも「『この程度でパワハラとなりますか』といった、事態を過小評価しがちな企業が依然として多い」(労務弁護士)。だが文字のやりとりは明確な証拠が残るほか、リモート環境であれば被害者側が録音などもしやすく、被害の立証がしやすい分野といえる。内部告発で社会から非難されるリスクも大きい。

ハラスメントは社員の士気や生産性にもかかわる。コロナ禍にかかわらず、根本的に「働きやすい職場をつくる」ためにハラスメントをなくすべきだという原則は変わらないはずだ。(児玉小百合)

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