中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

衛生委員会が活性化しない(後編)

2023年03月14日 | 情報

以下、少し長いレンジでの検討課題を提案します。

◎まず、衛生委員会の目的を再検討しましょう。安衛法第18条です。

安衛法第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、
衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

◎即ち、これまでの衛生委員会は、事業場における労働衛生問題および労働衛生対策について調査審議して、
事業者に対して意見を述べる機関でした。

働く人の安全と健康を確保することが主眼となっています。事業場における人事労務管理のレベルの課題に位置付けられていました。
ですから、経営的な観点からみると、衛生委員会は「コスト」なのです。

◎ところが、これでは時代の要請にそぐわない、時代遅れの会議体に落ちこぼれてしまっているのです。
この事実に気づかないから、衛生委員会に主体的に参加してもらえない、衛生委員会が活性化しない、のです。
参考までに、何を目的にして開催しているのか、御社における他の会議体と比較してください。
詳しく述べないまでも、衛生委員会が「なぜ、だめなのか」を御理解いただけるでしょう。

◎繰り返しますが、現在の安衛法は、50年前の法令(昭和47年法律第57号)なのです。
例えば、50年前は、鉄鋼、化学、自動車、造船等第二次産業全盛の時代でした。
現代は、第三次産業の割合がすでに70%を超えている現実があります。
産業構造が一変しているのに、労働安全衛生は、50年前のままなのです。
どうやら、「堂々巡り」の状態に入ってきました。

◎これからは、小職の提案です。
企業にとって従業員の健康は、その持てる能力を存分に発揮し、事業活動や、さらには社会活動に貢献する上で、
最も重要な「資源」なのです。

少子化・高齢化という問題点を受けて、経営の視点が「モノ、カネ」から「ヒト」に移ってきているのです。
その具体策として、時代が要請しているのは「健康経営」です。
「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法です。
「安全衛生」は、支出を「コスト」(cost)として捉えてきましたが、
「健康経営」は支出を「投資」(investment)として捉え直すことなのです。
言い換えれば、前段の法令遵守のレベルでは、マイナスをゼロにまで戻すだけなのです。
これからは、ゼロからプラスを積み重ねていく作業に転換していかなければなりません。

◎衛生委員会の位置づけを変更

50年前に制定された安衛法に規定された調査審議事項のみを、委員会の議題に取り上げてみても、
平成・令和の時代に入社してきた従業員には、響かないのです。
ここで提案です。衛生委員会の位置づけを、「健康経営の推進機関」にバージョンアップすることです。

◎健康経営には、まず、担当者、担当する組織を決めることから始まります。
小職は、「衛生管理者」を健康経営の推進担当、「衛生委員会」を健康経営の推進母体とすることを提案します。

◎このことを、トップに進言して理解を獲得しましょう。
そうなると、衛生委員会の委員長は、人事労務部門の部門長であったのが、
人事労務を担当する経営トップ、または最高責任者に格上げする必要が出てきますね。
ですから、結果的に、衛生委員会の委員長が健康経営認証のための責任者を兼ねることになります。

◎因みに、健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件をチェックしてみてください。
殆どが、衛生委員会の議題と同じです

1.経営トップが、健康宣言を発します。これには雛形がありますのでこれに経営トップの思いを上乗せし、社内に発信します。
2.以下、具体策です。できることから始めましょう。
・定期健康診断の受診率を100%にします。
・100%にするためには、未受診者に受診勧奨します。
・加えて、健診結果にもとづく、再検査や精密検査、治療の受診勧奨につなげます。
・法定ではありませんが、がん検査も受診を促進します、会社側の支援策も必要です。
・50人未満の企業であっても、ストレスチェックを実施します。受診者を100%にします。
・年間総労働時間については、まず実態の把握です。そして法令遵守です。
さらに、ワークライフバランスや勤務間インターバル制度の実施です。

◎詳しくは、健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件を参照してください。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/chusho2022_ninteiyoken.pdf

◎上述したことをまとめると、
1. 健康経営優良法人の認証取得に取り組むことにより、健康経営優良法人の認証が得られます。
2. 委員会の目的が明確になりますので、衛生委員会の長期的な観点からの活性化対策にもなります。

 

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