中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

安全配慮義務(続編)

2017年08月10日 | 情報

ところで、安全配慮義務の範囲が、限りなく広がっていると、考えることができます。
企業は、この現状に如何にして対応すればよいのでしょうか?

まず原則を確認しましょう。
先人が残した格言に、「戦略の要諦は、最悪を想定して、最善を尽くす」とあります。
しかし、現状、メンタルの事案では、安全配慮義務の範囲が拡大しており、最悪の場合を想定できないのです。
即ち、最善を尽くせないどころか、対応が難しい状況にあるのです。

例を列記しましょう。
例1.安衛法66条の10 心理的な負担の程度を把握するための検査等。
すなわち、ストレスチェック制度の導入により、これまで知り得ない情報が、会社側に伝えられています。
企業は、この情報を取得した以上、例え受動的であっても、何らかの対応が求められます。

例2.東芝うつ病事件(最高裁第2小法廷平成26年3月24日判決)
判決では、「会社側は、労働者の申告がなくても、企業は労働者の心身の健康に注意を払う義務がある。」とされました。
今はやりの言葉を使えば、会社は「忖度」しなければならないのです。
ただし、メンタル情報は、極めて高度な個人情報なのです。

例3.厚労省は、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(平28.2)を発出しました。
その中では、ガイドラインの目的を記しています。
「治療が必要な疾病を抱える労働者が、業務によって疾病を憎悪させることがないよう
事業場において適切な就業上の措置を行いつつ、治療に対する配慮が行われるようにするため、
関係者の役割、事業場における環境整備、個別の労働者への支援の進め方を含めた、
事業場における取組をまとめたものである」と。

どうでしょう。危機感を覚えませんか?

具体的ではありませんが、考えられる対処方法です。
①安衛法関連法令のみならず、指針レベルまでを広く網羅する体制づくり
②裁判例が示す基準を生かし、体制づくりに反映させる
③関係者、関係組織間のコミュニケーション、連携
④知見・経験からは予測できない、具体的リスクの想定

現状、安全配慮義務に、「これでよい」という限度は、ないということです。

 

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