熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

朋有り遠方より、便り有り

2022年09月24日 | 生活随想・趣味
   懐かしい集いが実現しそうである。
   偶然にも、大学時代のゼミの同窓生から何十年ぶりかに電話が入って、コンタクトしている間に輪が広がって、コロナが終熄しそうな来春辺りに、合おうと言うことになったのである。

   ゼミは、京都大学経済学部の岸本誠二郎教授の最晩年のクラスであった。
   同期のゼミ生は、12人であったが、その半数が銀行、残りの半数が商社へ就職した。亡くなった友が4人、音信不通が1人で、7人には連絡可能であり、愛知と茨城に1人ずつだが、残りは東京近辺に住んでいるので、昼にでも東京で集まれそうだという。
   情報網の豊かな旧バンカーの友が同窓会の音頭を取ってくれる。

   因みに、ウィキペディアによると、我が恩師は、
   岸本 誠二郎(1902年7月5日 - 1983年4月5日)は、日本の経済学者。京都大学名誉教授。専門は理論経済学。「分配と価格」に関する基本原理を作り上げた。
   岡山県出身。1925年東京帝国大学経済学部卒。1940年「価格の理論」で経済学博士(東京商科大学 (旧制))。法政大学経済学部長、東京高等師範学校教授を経て、1946年京都帝国大学教授・経済学部長となる。京都大学経済研究所の創設に尽くし1962年初代所長となる。1966年定年退官、名誉教授、國學院大學教授。1972年勲二等旭日重光章受勲。1982年日本学士院会員。1983年、死去。
   経済研究所は、池田勇人総理、水田三喜男蔵相、荒木万寿夫文相と京大卒の先輩が3人揃ったのでお願いして設立出来たと語っておられ、初代の所長に就任されたのを覚えている。マル経が強すぎた京大経済には朗報であったと思う。

   東京の世田谷に住んでおられて、ずっと、京都へ通っておられたのだが、休講された記憶はない。
   経済原論の講座と我々のゼミを毎週開講されていた。
   経済原論は、自著の「経済学概論」だったと思うが、ゼミのテキストの記憶は失念してしまったが、講座の古色蒼然とした古典とは違って、最先端の経済学であったように覚えている。
   卒業後、アメリカの大学院への留学で、推薦状をお願いするなど、何度かお宅を訪問にており、先生の学究生活の佇まいを身近に感じている。
   先生が亡くなられたのは、米伯赴任とヨーロッパ赴任の合間で日本にいたので、お葬式に出てお見送りできたのは幸いであった。

   東京で開催された学生の経済学討論大会出場のために、先生に相談に行ったら、
   ジョーゼフ・シュタインドル の「アメリカ資本主義の成熟と停滞―寡占と成長の理論 」を推薦されて、一生懸命勉強した。
   この本は、スタグフレーションについての先駆的かつ革新的な著作で、邦訳では、1962年刊で、1988年に再発行されているようだが、インターネットで「スタグフレーション」と叩いても、シュタインドルの見解についての記述は全く出てこないので驚いている。
   今、アメリカを筆頭に、インフレと不況が同時に進行する「スタグフレーション」論が脚光を浴びているのだが、刊行後60年以上も経っているけれど、シュタインドルは、米英で活躍したオーストリアの著名な経済学者であり、タイトルから言っても、格好の好著ではないかと思っている。
   当時、私の関心事が、「経済成長と景気循環」であった所為もあってか、この本の記憶だけが残っている。

   一寸違った本の思い出は、フィラデルフィアのウォートン・スクールに留学していたときに、ジョン・ケネス・ガルブレイスが、「Economics and the Public Purpose」を出版したので、先生に送ったら、いたく喜ばれてガルブレイスを非常に高く評価されているのを知って嬉しくなった。
   私が尊敬して勉強し続けてきたのは、このガルブレイスとシュンペーターで、私の思考のバックボーンとなっている。
   ところで、余談だが、岸本教授には膨大な経済学書の著作も有り、途轍もない学識を持っておられたはずだったのに、レィジーが祟って、十分にその片鱗にさえ触れ得なかったことを後悔している。

   このゼミでは、夏休み休暇などには、一週間ほど合宿に出かけて勉強した。
   志賀高原の湯田中や京都嵐山の宝筐院での合宿などは、寝食を共にして青春を謳歌した。忘れ得ない素晴しい思い出である。
京都の社寺などで頻繁に楽しんだコンパも忘れがたい。
   その青春からはや60年、
   歩んできた人生の軌跡を語り合いながら、ゼミ時代の思い出を反芻する。
   「朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」の心境であろうか。
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