熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

エコノミストの見る日本(その2)・・・小泉の政治革命

2005年10月17日 | 政治・経済・社会
   ビル・エモットは、「新しい政治、古い政治家」とタイトルを打って小泉首相の政治改革についてレポートしている。
   自民党を改革して日本を変えると言って、最初は、選挙の才は、写真写りの良いライオンヘアとe-mail magazineを含めた賢いマーケティング技術に限ると思われたが、今回の九月11日の大勝利は、それを遥かに凌駕したと言う。

   小泉首相の政治改革の特色は3つあるとして、派閥の解消、権力の幹事長と官邸への集中、そして、国民にアピールしリーダーシップのジェスチュアを示し変化を演出し権力を握ることだとしている。
   面白い指摘は、改革を、官僚や政党内部の人間の手を借りずに、全く政治には素人の猪瀬直樹氏を起用して道路公団改革を実施し、竹中平蔵氏を任用して郵政民営化を進めたことである。
   ここでも、ビル・エモットは、小泉政治によって更に小さな政府に対する改革が進むものと期待していて、民主党のお株を奪ったと考えている。
   

   小泉首相の後継については、安倍と福田の名前を挙げているが、新しく勝利した政党では、個人的なサポートは変わりやすいと、結論は避けている。

   国民の世論の力のアップについても触れており、ジェフ・キングストンの説を引き、口約束のあいまいな政治やビジネスが法律や契約で律せられる社会、即ち、法化社会への変質にも言及している。

   しかし、小泉首相が、国民投票の総数では過半数少しでありながら、今回の選挙で大勝利したのは、小選挙区制の所為のみならず、小泉首相の「郵政民営化に反対か賛成か。改革を止めるな」と言う極めて単純なポジショニングで機先を制して主導権を握った天才的な選挙上手にあったのではないであろうか。
   これは、セルジオ・ジーマンが、ブランド・ポジシャニングの章で、対話の主導権を取れと言う箇所で言っていることなのであるが、湾岸戦争の緒戦で勝利して人気の高かったブッシュを、クリントンが逆転したのは「いいかい、問題は経済なんだ」と言った言葉だと言う。
   クリントンは、有権者に、自分が雇用、失業、福祉、税金等、経済を気にかけている唯一の人間であるとしてポジシャニングして対話の主導権を握って選挙戦を自分の土俵で戦ったからだと言うのである。

   前々回の選挙で民主党が勝利したのも、これに良く似たマニフェスト選挙のポジショニングで機先を制したからではなかったのか。
   岡田民主党ももう少し賢ければ良かったのかも知れない、プロの選挙コンサルタントを使ったようだが、ジーマンのマーケティング論さえ知らない素人だったのであろうか。
   小泉の独壇場になった舞台で、2番煎じの「年金と子育て」と言っても誰も聞いていさえいなかった、勝てる訳がなく、ランドスライド的勝利を許してしまったのである。
   我々は、日本は民主主義の成熟した立派な先進国だと思っているが、そうとも言えない事は、ほんの少し前の「ノック・青島現象」を見れば分る。
   一番賢い筈の東京と大阪の有権者が、どうしょうもない素人の知事を選んで、失われた十年の過半を改革もせず無為に過ごして、あたら貴重な機会を棒に振ったのである。

   小泉首相の場合も、郵政民営化反対が(実際は小泉自民党案の民営化反対かと言うことであるが)、即ち、改革を止めること、改革に反対であるということに直結してしまって、それ以外は、総て保守反動と言った印象を与えてしまった、これが勝利の原点である。
   現実に、小泉自民党の方が、民主党より改革に意欲があると言う印象のほうが強くなっていて、完全に民主党のお株を奪ってしまったのである。
   ビル・エモットが指摘するように、日本も今や一党支配の国に成ってしまったのであろうか。
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